カハタレ日誌

カハタレの稽古の様子

20210919能「松風」現代版、喜劇講義、シェイクスピア「お気に召すまま」

20210919、参加者、稲垣、丹澤、南出、@南出家

☆前回までのあらすじ
前回南出による能の講義の一部として、岡田利規訳「松風」(池澤夏樹個人編集『日本文学全集』より)を読んだ3人。翌週には能楽堂で能・狂言を鑑賞、狂言名取川」に爆笑し、松風より名取川やりたい気持ちにも流されかけるが、そもそもの名目を取り戻し(名取川だけに)松風現代版に取り組むことにするのであった…

 

南出の部屋、3人話している。

 

稲垣
プラトンの『饗宴」なんて、生きてる限り読まんやん。でもこの前「お気に召すまま」買うために蔦屋書店行ってたら土砂降りになって、時間潰しがてら店内うろうろしてたらプラトンの饗宴見つけてよんでたら、これがめっちゃ面白くて、なんかみんなで「エロス」について喋って、一人一人自分が考えるところのエロスについて発表していくんやけど、それもおもしろいんやけど、なんか一人(後にアリストパネスだとわかる)がしゃっくりとまらんくなるねん。(丹澤、南出笑う)そんでなんか医術に長けたやつが、次俺の発表の番やからその間に、しゃっくり止めるとっておきの秘術があるからやっとけと言って、「息を止めろ」とか「うがいをしろ」とかいうのよ。

 

丹澤
全部知ってるやつじゃん

 

稲垣
そもそもなんでしゃっくり止まらんやつの話も残ってんねんというのもあるんやけど、、(稲垣のマスクの片側の紐切れる、が、話し続ける)これがプラトンの伝え聞きの伝え聞き(ここ違ったらごめん)を書いてるっていう構造にもなっていて、まあそこが後藤明生が面白がってた部分でもあるわけだけども、あの、これ南出くん、ホッチキスある?

 

二人、稲垣のマスクの紐が切れて垂れ下がっていることに気づき、笑う

 

南出
いつからそうなったん

 

稲垣
いや、いま。いま。

 

丹澤
しゃっくり止まらん話ししてる人が、マスクの紐切れてるのウケる。


稲垣
いや、そんなことよりですよ!。(「ドサッ」と印刷してきたシェイクスピアのお気に召すままの戯曲を置く)これ、思ったよりめっちゃ長くて、早く読み始めちゃった方が、よいかも

 

丹澤
あれこんなに長かったんだ

 

南出
あ、でもあれも考えてきたよ、「松風」の現代版

 

稲垣
あ、じゃあそれからやりますか。僕も考えたよ

 

丹澤
わたしも考えてきましたよ

 

稲垣
じゃあ、僕はさっき電車で設定だけ、テーマっぽいとこだけ思いついたので、先に発表しますわ。

 

(((((稲垣版「松風」))))))

うだつのあがらない生業、小舟、生きていると言われない

涙に濡れる、身も心も、

この世で生きるつとめはいつまで果たせば良いか

野の草の露→日の光で消える、が、しかし、私は腐っていくだけ

かすかに見える、かすかに聞こえる。

汐を汲む、そこに映った月を汲む→月は一つけれど姿は二つ

 

-------

濡れる→乾く
乾く→潤う

腐る、水分がある、
ミイラ、乾燥している、腐らない

乾いた二人

二人、乾いている

濡れた二人、

二人、濡れている

果たせない目的、待つ

忘れている目的について、
かすかに見えることについて、

 

☆松の描写→〇〇の描写→〇〇の描写→〇〇の描写→草の葉の水滴の描写

 

女1
葉が、

女2
うん、

女1
痛くて、

女2
うん、

女1
針が、

女2
うん、

女1
伸びてて、

女2
うん、

女1
ゴツゴツとした幹が、

女2
うん、

女1
うねっていて、

女2
うん、

女1
ボロボロと落ちそうな皮が、

女2
うん、

女1
ひっついていて、

女2
松ね、

女1
そう、松、

女2
松がどうしたの?

女1
どうしたってこともないんだけどこの松ね、

女2
この松、ね、

女1
他の松じゃなくって、この、松ね、

女2
ああ、なんかね、存在感あるよね、

女1
触ってみて、

女2
え、なんで、

女1
いいから触ってよ、

女2
いいよ、

女1
わたし、知ってる。

女2
なにを?

 

南出
んんー、これは説明してもらわんとわからん

 

丹澤
難解だ

 

稲垣
点線より上の部分が読んでて面白いなと思ったところで、この生きていることの覚束なさ、涙で身も心も濡れる、それから野の草の露は日の光で消えるけど、私は腐っていっちゃうっていう。あとはこの話の中で松(待つ)ってことがすごい重要なテーマとしてあるんだけど、それを待ってるのに何を待っているのかわからなくなっちゃった人たちとして存在させてみた。もうそれは果たせない目的で、どこで待てばいいのかもわからなくて。でもかすかに見えている何かをとりあえず待っている。それと、濡れている人と、乾いている人が舞台にいたら面白いかなって思って。乾いてるのと、濡れてるのだったら、濡れてる方が潤ってる感じがしていいイメージだけど、松風はそれを「腐っていく」として悪いイメージで捉えてる。乾いていると腐らない、だからミイラは腐らない。

 

南出
目的も忘れて、というか待つこと自体が目的になって、ただただ「存在」だけしちゃってる感じがいいね

 

丹澤
松風のこの「待つ」っていうのは結構粘着質な待つだから、濡れてるってイメージとあっているよね

 

稲垣
そう。濡れてるって言っても真水じゃなくて海水だから、ベトベトなのよね。まとわりつくような濡れ方なのよ。

 

南出
じゃあ次は、僕が発表します。

(((((南出版「松風」))))))

ワキ:建築学
シテ:男
ツレ①:松風
ツレ②:村雨

 

前場

海辺。かつては臨界商業施設であった、今は廃墟となっている建造物がある。若者がくる。
若者は建築を学ぶ大学生で、その建造物の写真を撮ったり、ノートに簡単なスケッチをとったりしている。

 

老齢のスーツ姿の男、現れる。男のスーツはかなり上等のものであるが、よく見ると古めかしいデザインである。ぼんやりと建造物を眺めている。

 

建築学生「この辺の方ですか?この建物についてご存知ですか。自分は大学生で建築の勉強をしてるんですが、これいまは廃墟となっちゃってますけど、なかなか美しい建築物ですよね。」

 

男、この建造物の由縁を話し出す。この土地は昔から塩の生産がさかんであったが、ある時にこの土地に商業施設を建設するということになった。不動産会社やら建設業者やら、都会から大企業がやってきて、この場所に暮らしていた人たちを追い出して、干拓事業をはじめた。当時はバブル景気であらゆる場所に莫大な費用をかけて同じような大掛かりな商業施設やホテル、テーマパーク等が建てられたが、ここもその一つであった。
ここの建設を担当した一人の若いデベロッパーがいた。当時大手不動産会社の社員であった彼は、好景気に沸く日本の機運と一体化しているように、血気盛んな若者であった。

 

彼は発展していく日本と、かがやかしい未来を夢見ていた。

 

地元の人たちは当初開発に強く反対したが、彼は地域の発展のためにこの土地がいかに重要であるかをこんこんと説明し、今の仕事とは比べられないほどの利益を生んで、実際住民のみなさんの生活も良くなるのだということを熱意に満ちた口調で説明した。最終的には彼の地道な説得と熱意に押し切られる形で、この土地の権利は彼の会社に譲渡されることとなった。

 

仕事が順風満帆で進む中、ある日彼はみた。
仕事が終わってとっくに日が暮れた頃、穏やかな海に月の姿が浮かんでいる美しい景色と、二人の汐汲み女の姿を。あんなに若い女も塩作りをしているのだと、彼は少し驚いた。遠くから見ても彼女らは非常に美しかった。沖には小さな漁り舟の影がかすかに見え、雁の姿やむら千鳥の形が夜空を背景に月明かりに照らし出されていた。野分、汐風、そのいずれもが秋の感慨をさそっていた。寄せては返し、寄せては返す波の中、二人の女は汐を桶に組んでは運んでいた。

 

村雨「あら、月が桶の中に映っている」
松風「ああ嬉しい、ここにも月がある」
村雨「月は一つ けれど」
松風「その姿はふたつ」

 

二人の女の会話とそれに続く楽しそうな笑い声が潮風に運ばれて聞こえてくる。

 

そのとき、今まで感じたことのないような感情が彼に湧いた。
「私はこの世界でほんとうに生きていると言えるのだろうか。」
自分がひとりぼんやりと小舟に乗って、夢のような、儚いこの世を渡っていく情景がふと目に浮かんだ。

 

彼は急いでその考えを打ち消し、ホテルに帰り珍しく酒を飲んで寝た。次の日からは何事もなかったようにはたらいたが、あの夜以来、二度と二人の姿をみることはなかったが、彼の心の隅にずっと残って離れなかった。

 

そして、ついに施設は完成した。新聞やニュースなどでもこの臨界商業施設のことは報じられ、多くの人が訪れた。
しかし、まもなくバブルが崩壊した。
他の多くの場所と同じように、この施設も廃業した。今ならわかる。私が作った建築がこのように朽ち果てて、歴史の中に埋没して過去のものとなってしまって、私がやってきたことはなんだったのだろう。私の人生、それはあの汐汲み女たちと同じように脆く儚いものではなかったか。

 

建築学生「あなたは誰です。どうして急に自分のことのような話し方をするんです。」

男「私はこの土地と、この土地に住む人たちの生活を奪った張本人です。」

男は消える。

 

後場

男と松風・村雨が海辺に佇んでいる。

 

 

丹澤
ドラマみたい

 

稲垣
ドラマみたい

 

丹澤
『バーフバリ』思い出した。最後の最後に「裏切り者は自分だ」と告白する感じが

 

稲垣
そんなんあるんだ。

南出
能の場合、シテが出てきた時点で、「どうせお前やろ、本人」てわかるけどね(笑)

 

丹澤
たしかに(笑)

 

南出
「松風」の行平に対する強い思慕っていうのが、特定の個人にそこまでの感情持つのが現代版にするときに難しいなと思って。だからここでは「土地への慕情」みたいなものにしたかった。松風と村雨は言葉を選ばずに言えば「やり捨てられた」って感じだけど、それが高度成長期の乱開発によって壊された塩の産地である二人の海人の故郷という風にして。でも事業に携わった本人である男も、自分が作った建物が廃墟になっているのを見て、「自分の人生はなんだったのだと」思うという。その後悔の念と、松風たちの時代→高度成長の時代→現代までの人間によって色々と変えられてきた土地の風景とを絡めて出したかった。でも、思ったのは、こういう叙情を表現するのは、やっぱり能が音楽劇の形式であるのが強いっていうか、これを現代版にするなら、維新派くらいの規模で幻想的な表現でやらないとうまくいかんやろなって思った。

 

稲垣
では、最後は丹澤さんお願いします。

 

丹澤
印刷してきたので、ガッキー、読んで

(((((丹澤版「松風」))))))

相談カテゴリ:恋愛、家族
質問者:マツカゼの妹
 
Q 真剣な相談です。何年も前に恋人をなくした友達が、ずっと彼への思いを引きずり、成仏できずに苦しんでいます。どうしたら彼女を救うことができるでしょうか。
 
恋人をなくしてずっと引きずっている彼女を成仏させてあげたいです。
私の友達の話なんですが相談させてください。
 
友達のA子は東京から地方転勤してきた男性と交際をしていました。
A子とA子の姉が実家の仕事をしているときに(実家は老舗の塩屋さんです。)、引っ越してきたばかりの彼のほうから声をかけてきたそうです。
3年がたち、彼は東京に戻ることになりました。東京に戻る前に、彼は忘れてくれと言いました。彼ははっきりといいませんでしたが、おそらく東京に奥さんか彼女がいたのではないかと思います。(うすうす気づいてはいましたが、彼を失うのが怖くて問い詰めることはしなかったそうです。)
A子がずっと待っているからと伝えると、彼は自分の帽子とジャケットを「自分と思って」と置いていきました。A子はそれを大切にしていましたが、二度と彼は戻ってきませんでした。二年ほどたったある日、東京から警察の人がやってきて、彼がなくなったことを知りました。殺人の可能性があり、彼とA子との関係を聞かせてほしいといわれました。その後事件性のない病死だったと連絡を貰いました。
 
A子は彼がなくなったことはわかっています。でも、彼を待つ、という気持ちを捨てられず、死んだ彼を待っています。ほかの人を好きになったり、別のことに興味を持ったりすることもできずに、どうしたらいいかわからず苦しんでいます。ほかのことにも無関心になってしまい、何もすることもできないまま、いたずらに時を過ごすばかりです。
どうしたら彼女の苦しみをやわらげ、休ませてあげることができるでしょうか。
(真剣な相談ですので、茶化すような回答はご遠慮ください。)
 
追記:
実は彼女の姉も、同じ男性と関係がありました。お姉さんのほうは落ち込むばかりではなく、神経症も患っている状態です。
庭にある松の木を彼のように錯覚し、話しかけたり抱きしめたり、しています。
姉妹で同じ男の人を好きになってしまうなんて、おかしいかもしれませんが、どうすることもできなかったのです。
 
ベストアンサー : タビノソウ
A. ご友人はつらい体験をされましたね。
 
この世の中には自分でどうにかできることと、どうしようもできないことの二つがあり、人を思い慕う気持ちも、己ではどうすることもできないものの一つかと思います。
ご自分の気持ちと向き合うことは苦しいことですが、ご友人様は苦しみながらもご自身の思いをしっかりと抱えて生きてこられたのですね。
その強き魂がその強さゆえに、この地から離れられない状況を作ってしまっておられるのだと思います。ご自身で苦しみや悩みをその手から解き放ってあげることが一番の近道ではないでしょうか。手放すということ、それもまた強さです。
熱き恋心をなかったことにしたり、忘れようとするのではなく、そこにあることを認め、その愛と出会えたことに感謝し、それを自身の意思で手放すことで心が自由になれるのではないでしょうか。
 
わたしには祈ることしかできませんが、お二人の心が安らかになりますよう祈っております。
 
【追記】
追記、拝見しました
松は日本では神の宿る神聖な木とされ、「神を待つ」という意味から「松」となったといわれています。また、「行く末を待つ」という言葉を語源とするとも言われます。
お姉さまが松の木を頼りにしたのも、神を頼りにされての行動ではないでしょうか。お姉さまもおつらかったのでしょうが、松の木にすがることでご自身のお命をこの世にどうにかとどめておられたのですね。姉妹で同じ男性を愛してしまうとは、数奇なことと思いますが、お二人一緒だったから同じ苦しみを理解し、助け合って生きてこられたのではないかと推察いたします。
 
質問者からの返信
 
優しい言葉をありがとうございます。
 
一番私の気持ちに寄り添ってくださり、思いやってくださったタビノソウさんをベストアンサーとさせていただきました。
ほかのみなさんもさまざまなご意見ありがとうございました。
 
これで成仏できそうです!
 
〈その他の回答〉
A. 信じられないような話ですね。申し訳ないけれど、姉妹で同じ男に遊ばれるなんて…と思ってしまいました。世の中にはもっと素敵な男性がいると思いますよ!来世では、幸せな恋をしてください。人生もっと楽しんで!
 
A. お姉さんのほうは精神科に連れて行ったほうがいいんじゃないですか。妹さんの気持ちまでやられてしまいますよ。男性との関係もさることながら、お二人の関係も共依存的だと感じました。お互いを同一視して、同じ人を好きになっている状態なのではないかと。まずは姉妹の関係を見直してみることをお勧めします。
 
 
A. うーん。ちょっと男性がひどいんじゃないか?下手したら奥さんに訴えられていたのでは?死んだのも女がらみなんじゃないかと思うが。本当の話なら、ですが。。。。。。お姉さんの話は盛りすぎ。
 
A. 昔の自分を思い出しました。
大学生になって東京に行くことになった彼に「待っていてほしい」といわれました。高校を出て私は地元で就職しましたが、同級生だった彼は東京の大学に進学後、地元に戻って就職する予定でした。最初は頻繁だった手紙のやり取りがだんだん減り、元気にしているか心配していたところ、「東京で就職する、ぼくは帰れない」と手紙が来てリクルートスーツを着た彼の写真が入っていました。約4年、今思えば短いようですが、当時のわたしにとってはとても長い時間。彼が帰って来たら結婚すると友達にも言っていて、狭い地元では私たちが付き合っていたのをみんな知っていたし、精神的にかなり追い詰められました。当時は苦しかったけど、その後、ご縁に恵まれ今は素敵な夫に出会え、娘二人と家族幸せに暮らしています。
質問者様のご友人とは状況が異なると思いますが、苦しみは理解できます。
質問者様のご友人のつらさもいつか晴れますように。
 
 
ほか

 

稲垣
最後、「木綿のハンカチーフ」やん!(爆笑)

 

丹澤
最後の方、ノってきちゃって。

 

南出
いやぁ、回答者がみんなリアル。こういう人いるな〜っていう(笑)
。。。。をたくさんつけるやつあるよね。

 

稲垣
聞いてないのに自分のこと語り出すのもね

 

南出
自分でも書いてみて、松風と村雨が二人っていうのが、難しいなと思った。

 

丹澤
でもそこが面白いところでもあるよね。

 

稲垣
松風が暴走して村雨が止めるって感じやけど、名前の意味的には
松風→松が揺れるほどの小雨
村雨→ざあざあ降り
って感じらしいよ。あと、松風と村雨は最初はなんか違う名前だったらしい、なんやっけな、なんかもっとダサい名前で、行平がちょっと引くみたいな。(調べて)「藻塩」と「小藤」や。

 

南出
「藻塩」はたしかに嫌だね(笑)

 

と、なんやかんや「松風」で割と盛り上がり、一時間半くらい喋って、まだ丹澤さんの講義と『お気に召すまま』の本読みがあることに気づき慌てて先に進む。

 

丹澤
それでは、喜劇講義を始めます。レジュメを作ってきました。

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1悲劇と喜劇
悲劇......「ヤギの歌」っていう意味で、別に悲しい劇だから「悲劇」ってわけじゃない。
英雄的人物が自分の運命やその苦難について悩む。答えの出ない苦悩。

喜劇......「お祭りの行列の歌」が起源。悲劇と一緒で、訳すときに悲劇と対応するものとして「喜」という語をあてたが、笑えるものばかりというわけでもない。
あえて滑稽な状況を作り出すことで問題を浮き彫りにして観客に現実の問題を考えさせる。
例えばチェーホフの「桜の園」とかは悲劇に見えるけど、チェーホフ自身は「喜劇だ」と言っている)

 

ギリシア喜劇の特徴★
①題材が神話ではない
②現代が舞台で、同時代〈いま〉をえがく
③時事ネタや下ネタがある
④生理的状況を利用→共感して笑える
⑤風刺的役割・・・政権批判(ここで日本のお笑いは政権批判をしない、してもあんまり面白くならない、という状況を3人で嘆く)

 

2喜劇、具体的に
貴志哲雄『喜劇の手法 笑いのしくみを探る』から、喜劇の特徴をカテゴライズ。
(画像を参照)

 

丹澤
さて、これらの特徴を踏まえた上で、シェイクスピアの『お気にめすまま』をよんでみましょう。

シェイクスピアの『お気にめすまま』(福田恒存訳)を3人で読む。


〜〜〜〜三時間後〜〜〜〜
疲れた。疲れた、もうだめだ。何が「お気に召すまま」やねん。いや、面白かったけど。めっちゃ笑えたけど。長い、これは疲れ果てましたわ。(3人とも疲れ果てる。)

 

感想
・とにかく人が多い
・前半のシーリアおいしい役。みんなやりたいやろな
・場面がばんばん変わっていく
・第三幕二場が長すぎる
・稲垣歌上手い
・道化のタッチストーンがきれっきれ(機知合戦が面白い)
・ジェイキスが一番過激派でやばい
・タッチストーンとジェイキスの絡みがしつこくて笑っちゃう
・「この世は舞台」の大演説、唐突でびっくり
・途中一瞬出てくる騎士オリヴァー・マーテクストとウィリアム、絶対いらんやろ

 

丹澤
さて、実はまだ講義の続きでした。いきましょう。

 

3ヴォードビル
フランス発祥の歌入りのドタバタ劇。ステレオタイプな人たちがでてくる。吉本新喜劇みたい。当時のブルジョワジー(成金野郎)を馬鹿にした話が人気があったが、時代が変わってブルジョワジーと言われてもみんなピンと来なくなり廃れる。

 

4日本の喜劇
7世紀に伎楽→猿楽→狂言(前回もやりましたね。)
・俄(にわか)・・・即興な滑稽寸劇で庶民の芸能だった
曽我廼家五郎・十郎の曽我廼家劇・・・1904年に初めて喜劇という名称がついた
大阪で歌舞伎から派生する形ででてきた(一つ前の朝ドラ『おちょやん』の話ですな)
→内容は前近代的で低俗な教訓性しかなく、文学者や劇作家からは無視されてた
→松竹と結びついて発展。
・大正〜昭和にかけて浅草オペラ(レビューの形式)
・1931年東京新宿ではムーラン・ルージュ
 インテリ層を狙った社会性のある風刺の効いたコント・バラエティ

⇨のちのアングラ・小劇場運動につながっていく。

 

【まとめ】
喜劇にとって重要なことは「観客だけがすべてをわかっている」ということ
バナナの皮を踏んで滑るのは嫌だけど、滑っている人をみているのは笑える。
「観客は安心してみることができ、舞台上は不安な状態」が笑いを生むのであります!

 

稲垣・南出
パチパチパチ

 

丹澤
ありがとうございました。え、もう20時じゃん。

 

(14時から初めて終わったのが20時であった。ヘトヘト。本日はこれまで。)


★次回の予定
来週は歌舞伎座にて「四谷怪談」をみます。玉三郎仁左衛門の共演という歌舞伎ファンにとってはたまらない公演。歌舞伎初心者の3人ですが、果たして楽しめるのか!?