カハタレ日誌

カハタレの稽古の様子

20211016、きじまさん、呪い論議

★前回

現代版メデイアの構成を考えて、実際に体当たりでエチュードしてみる。

が、なかなか思うようにはいかない。てか、呪いむず。

各々で一回せりふ書いてこよう、

忙しかったら「メデイアの呪い」と「呪い問答」だけでも、

もっと忙しかったら「呪い」って何か、人を呪いたくなったことあるか、呪いの出てくる物語などなど、何でもいいから呪いについて考えてくる、

という宿題が出ていた。

 

★きじまさんが来てくれた。

稲垣「今日、きじまさんきてくれるって」

南出「え!そうなんや、きじまさん、ってあれやっけ。いつも名前が出てくる」

稲垣「そうそう、そのきじまさん、劇作家セミナーの」

南出「わーい」

丹澤「じゃあ、一緒にヨガからしますか」

稲垣「あ、きじまさん、ぎっくり腰になったって言ってた」

南出「じゃヨガあかんやん」

 

3人、きじまさんを待ちつつ、足をほぐす。

 

きじま「あ、どうも」

南出「あ、はじめまして、南出です。

きじま「きじまです」

南出ときじまさん、自己紹介をする。

 

4人、ヨガする。

丹澤「きじまさんは、腰無理しないでくださいね」

南出「あーっ、つった。つった。」

丹澤「南出くんも無理しないで」

 

20分くらい、しっかりヨガでウォーミングアップ。

 

稲垣「ふーーーっう。あーー、ほぐれたね。じゃあ、メデイアのやつ読みますか」

 

★それぞれ、書いてきたものを共有。

 

稲垣「じゃあ、僕の短いので僕から。短すぎてびっくりしちゃうよ、読んだら」

 

岩村、観客に向かって喋る。

岩村
うーん、なんだろうねえ、つまり、、なんだろうねえ、俺だって、ねえ、妻のことを愛してるよ、俺だって、この、幸せを、壊したりなんかしたくないわけさ。うーん、そうだなあ、つまり、、あれ、なんなんだろうねえ、なんで、あれさあ、二人っきりになるんだろうねえ、二人っきりになるってすごくない?なかなかなれないよ、二人っきり。つまり、さ、恋ってのはさ、あ、ごめんね、急に恋とか語りだしちゃうけどごめんね、恋っていうのは、さ、いかに二人っきりになるかっていう、そのう、なんて言うのかなあ、戦略っていうか、なんて言うのかなあ、そういうやつじゃない?

他の三人、群舞で歩いてくる。

友田
うーん、どうだろうねえ、

岩村
究極行っちゃうと、夫婦になるわけでしょう、ずっと二人きりなわけでしょう。

友田
うーん、そうだねえ。

岩村
あ、でも子供できるとあれか、二人きりじゃなくなるか。

友田
まあー、そうだよね、だけどもある意味、そういうことなんじゃない。

岩村
え、どういうこと?

友田
ごめん、今なにも考えてなかった。

岩村
え、なにそれ、

友田
ごめん、俺自身びっくりしてる。

岩村
ちゃんとあれしてよ、相談してるんだから。

友田
あ、相談してるんだ。

岩村
相談してるじゃないか。めちゃくちゃ相談してるじゃないか。

友田
恋、語ってたよね、

岩村
つまりこういうことなのだよ。電車待ってたのよ、渋谷で、

友田
待つわな、電車、

岩村

 

稲垣「っていう感じで、最初は岩村(あ、これは発見なんだけど、イアソンの現代版の名前は岩村っていう)のエピソードトークから入ろうと思って、まずモノローグで語って、そんでダイアローグに移行してく。あ、あと他の人は群舞で入ってくる」

 

丹澤「すぐ影響されんじゃん、ダンスの公演で見たからでしょ」

 

稲垣「あと、二人っきりになるってことが重要なんだよなって。二人っきりになって、キスしなきゃって思うタイミングってある。「これは契約だな」って思うタイミングが」

 

きじま「ふたりっきりになるって、それはお互いなろうと思ってなってるのよ」

 

南出「『NANA』の最初の方で、終電やばいっていうんでハチと男がホームの階段を走って登るんだけど、すんでのところで電車が行ってしまう。そこで男が「電車、行っちゃったね」っていうんだけど、ハチは「・・わざとだよ」っていうんだよ」

 

丹澤「ハチは度胸がちがうね」

 

稲垣「浮気、でいいんだろうかと思うんだよね。浮気くらいで呪うか?っていう。メデイアも浮気だけではないじゃん」

 

丹澤「家族とか故郷とか全部捨ててきたもんね、メデイアは」

 

稲垣「そう、でも今回移民とかそういう話にしたいとは思ってない、設定を増やすって方向にはしたくない。そうじゃなくて、『岸辺のアルバム』だとさ、八千草薫は必ずしもあの男が好きだったっていうわけじゃなくて、家からの脱出っていう意味合いもあった」

 

南出「そういう感覚の、いまの若者のリアルっていうのが欲しいよね」

 

丹澤「浮気されたら別に別れたらいいしね。女性も仕事あるんだし。四谷怪談のお岩さんについて最近読んだんだけど、当時の女性たちのシンボル的な意味合いもあったみたい。ただ個人的な話として夫がひどい、恨んでやる、っていうんじゃなくて、当時の全女性の怨霊を背負っていた」

 

稲垣「じゃあ次は丹澤さんの読みますか」

 

20211016 お試し戯曲

夫の友達(山下)
夫(高木)
妻(ゆき)
夫の友達の妻(あや)

1 居酒屋
高木 いや、待たせた~
山下 おう、大丈夫だったか
高木 ああ、でも20分くらい電車動かなくてさぁ、安全確認ってゆうの
山下 ああ
高木 線路内に人が立ち入ったってさ
山下 まあ、20分くらいですんでよかったじゃん。
高木 まあな、人身だったら動かなかったしなー。
山下 最近、また増えてきたもんな、(店員に)あ、すみません、生、(2、のつもりで)
高木 と、ハイボール
山下 え、ビールじゃないの?
高木 なんか、自粛でさー、去年飲みまくってたら、腹がやばくなった
山下 まじかー、え、でもさ、むしろちょっと痩せてない?前よか。
高木 ああ、まあちょっとね。太った後、まあ、いろいろあって、結局マイナス7キロくらいかな。
山下 なにそれ激変じゃん。
高木 なんとなくビール飲まなくなってからそのままやめちゃって、そのまま。まあ、そんなことよりさあ、めちゃめちゃ久しぶりだよなあ。
山下 だよなあ、もうさだってコロナ前に飲んだのが最後じゃん。だから、もう2年ぐらい前だぜ。やばいよなあ。全然外で飲んでなかったし。
高木 そうだよな、俺も俺も。
山下 家でばっかりだよな。そりゃ自粛疲れするってかんじだよなあ。
高木 だよなー。

店員 おまたせしました、ハイボールです。
山下 じゃま、
2人 かんぱーい
山下 あーー。うまい。やっぱいいわー。
高木 ……
山下 ん?どうした
高木 レモンサワーだわ。
山下 えー!
高木 はあー
山下 え、変えてもらう?
高木 ああ、いいいい。
山下 いいならいいけど、ちょっとがっかりだよな
高木 がっかりだよー。まあ、いいけど。こないだもさ、昼飯食べに行ったとき、生姜焼き定食頼んだのに、おろしタツタ出てきてさ。
山下 どういう間違え方だよ。
高木 時間もなかったからそのまま食べたけどな。
山下 いいのかよ、なんか、高木、災難続いてない?呪われてんじゃね?
高木 あー。そうなんだよね、俺呪われてんだよ。
山下 ……は?
高木 だから、俺呪われてんだよね、嫁に。
山下 え、何言ってんの?大丈夫か?
高木 実はさ、ちょうどコロナになる前に、会社の後輩と、そのぉ、浮気、しちゃってさ。
山下 うっそ。
高木 まじまじ。で、コロナになっちゃって、うちの会社基本在宅になって、今日出社になったから行くって言って会ってたら、まあ、結局ラインとかでバレちゃって。
山下 なにやってんだよー。そんな不倫のテンプレみたいな。
高木 で、まあ、結果としてはその子とは別れることになったんだけど、いや、俺も、ちょっとまあ気の迷いっちゅうか、まあ別に本気だったわけじゃないっていうか。
山下 いや、それ相手に失礼だから。もちろん奥さんにもだけど。
高木 まあ、それはまあわかってるけどぉ。で、で、こっからなんだよ、うちの奥さんがさあ、呪いだしたんだよね、俺を。
山下 呪うって、まあ、そりゃ恨み言ぐらいいうだろよ。
高木 いやマジなんだって。夜中の12時と、多分昼の12時にも、儀式?みたいなのをやっててさ、呪文唱えて、藁人形に釘打ってんの。
山下 いやぁそんな古典的な。
高木 俺も最初は意味わからんかったけど、実際さあ、効いてんだよ。足に釘打ってた日は、箪笥の角に小指ぶつけたし、頭に打ってた日は一日ひどい頭痛でさ。
山下 ええ、偶然だろ。
高木 偶然かもしんないけどさ、今日だって、電車とか、コレ(酒)とか、こんだけいろいろあるんだから、絶対あいつの呪いのせいに決まってるんだって!

2 高木んち
ゆき ほんと迷惑かけちゃってごめんなさいね、山下さん。
山下 いや、すみません、夜分に……。
ゆき わざわざ連れてきてくれなくても、その辺にでも転がしてきてよかったのに、山下さん、終電逃しちゃったでしょ。
山下 ああ、いえ、大丈夫ですよ、そんなに遠くないしタクシーで。
ゆき まったく、うちの馬鹿な旦那のせいで、すみません。
山下 ああ、いやいや、いいんです。なんか久しぶりに飲んだんで、俺も、高木もちょっと盛り上がったっていうか、飲みすぎちゃったっていうか。俺もあいつに飲ませすぎたですし。
ゆき あ、山下さん、お茶くらい飲んでいってください。よかったら。
山下 ああ、いいですよ、そんなお気遣いなく。もう帰ります。
ゆき でも、山下さんがよかったら、ちょっとお伺いしたいわ、高木のことで……。
山下 ああ。
ゆき 遅くに申し訳ないですけど……。
山下 いえ、じゃあ、あの、お茶だけ、いただきます。
ゆき ありがとうございます。どうぞ。
山下 (傍白)あいつ、呪いなんて言ってたけど、奥さん別に普通じゃないか?

部屋の中には謎の魔法陣、壁に五寸釘を打たれた藁人形、あと怪しげなお札、不思議なお香がたかれている。

ゆき ごめんなさいね、散らかっていて。さっきまで12時の儀式の時間だったものだから。
山下 儀式というと……。
ゆき 呪いよ。あの人に聞いていないですか?
山下 あ、はい。まあちょっとだけ。
ゆき なんていってるのか知りませんけど、悪いのはあの人ですから。
山下 はい、それはそうだと思います。
ゆき あれ、あの人の肩を持たないんですね。
山下 不倫するなんてダメですよ!あいつが悪いに決まっているじゃないですか。ゆきさんの気持ちも考えず……。
ゆき ちょっと意外でした。私の呪いの儀式のこと聞いたら、彼の味方をするのかなって、思ったから。
山下 そうですか?
ゆき ええ、浮気ごときで、呪いなんて馬鹿なことしてるっていうのかと。
山下 浮気ごときって、怒って当然ですよ。夫婦なのに裏切ったわけだし。呪いって言うのはちょっとまあ結構驚きましたけど。
ゆき 私も最初は半信半疑だったんですけど、続けていくうちに、これは本当だって、思ったんですよ。この呪いの効果、彼を見ていたらわかるでしょう?自粛期間中ごろごろしてビールばっかりでぶくぶく太ったくせに、私が呪いを始めたらするする痩せていったんです。ほら見てくださいこの藁人形、おなかのところにどれだけくぎを打ち込んできたことか。
山下 一周回ってちょっとげっそりしてきてますけど……。でも、それってみんな偶然じゃないですか?呪いのせいとはいいきれないとおもうけど。
ゆき 偶然、そうかもしれませんね。でも、偶然起こることだって、結局は必然でしょう?なにか、起こるべくして起こった、そういうことです。
山下 はあ。
ゆき 山下さん、夫は、私と別れたいといっていましたか?
山下 え?いや、そんなことは、言ってなかったですよ。
ゆき そうですか。
山下 あのう、ゆきさんは。
ゆき はい?
山下 その、ゆきさんは、別れたいんですか、高木と。
ゆき え?何でですか?
山下 ああ、すみません。ああ、そうですよねえ。
ゆき 山下さんは誰かを呪ったこと、ありますか?
山下 ないですよ、そんなこと。
ゆき そうですよねえ。呪わないですよね、普通。
山下 いや、そっちが、普通かもしれないです。
ゆき え?
山下 呪うほうが、普通なんじゃないですか?
ゆき そうかな。
山下 そうです。だってあいつ、別れたいなんて、言ってなかったんですよ。

 

 

 

 

 

3 山下の自宅
山下 それで帰りがこんなに遅くなっちゃったんだよね。
あや そう
山下 ごめん
あや うん
山下 起こしたよね
あや うん、でも、寝たのさっきだったし
山下 え、そうなの。
あや 寝付けなくて
山下 飲んでた?
あや ちょっとだけだよ。
山下 そっか。
あや それで?
山下 なにが?
あや 彼女と話してどうだったの。
山下 どうって。
あや あなた、どうしたいの?
山下 え、なにを。
あや 呪わないの?あなたは。
山下 ……。
あや 何考えてんだか、全然わかんない。
山下 じゃあさ、あやは?呪ってほしいの?
あや ……なにそれ。
山下 呪ってみようかな、俺も。
あや 信じているわけ、呪いなんか。
山下 信じたら叶うかもよ。
あや もう寝るわ。
山下 あや、明日、朝起きたら前髪が飛び跳ねているよ。
あや ふざけないで。
山下 嘘だよ。……やっぱり俺は、呪わない。おやすみ、あや。
あや おやすみなさい。

 

 

4 あや
先月、私はSNSで出会った男の子と初めてデートした。ネットゲームで仲良くなった5個下の男の子。デートっていっても、お茶してゲームの話して解散しただけ。いまどきの男の子は会っていきなりホテルに誘ってきたりしない。てゆうか、私たちはゲーム仲間なわけで別にやましい恋愛関係なんかじゃない。だけどどうやら夫は私が浮気していると思っているらしい。夫にありのままいえばいいって?どうだろ信じるのかな。彼は彼で、女と男が一人ずついたらいわゆる男女の関係だって思うタイプ。つまり男女の友情は存在しないと思っている。わたしはそうとはおもわない。女友達とお茶するように男友達とお茶をする。確かに年下の男の子と出かけるのはちょっと新鮮で、気持ちがちょっとふわふわしていたかも。でもそれくらいのわくわくが、誰かと会うときにあるからといって、浮気なんて言われたら、何度浮気という言葉を使っても足りない。わたしにはわくわくすることがたくさんある。初めて出会う街並み、お気に入りのカフェで食べるご褒美ケーキ、仕事で新しい企画を立てているとき。毎日小さなワクワクを見つけながら生きている。でも、ただひとり、ワクワクしない人がいる。夫。彼と一緒にいても全然ワクワクしない。どうしてだろう。ワクワクするから付き合って、ワクワクするから結婚したはずだったのに。どう頑張ってもワクワクしない。わたしはずーっと前から、呪われている。夫にワクワクできない呪い。いまさら何か呪われたって怖くない。いつまで続くのだろう。この呪いの日々は。明日も明後日も終わらない。きっとわたしは夫を愛してはいない。夫が私を愛していないように。夫は私に愛されようとしているが、私を愛そうとはしない。愛すことも呪うこともせずに、ただそこに立っている。私は夫に愛されようと思っていないが、夫を愛したいとも思っていない。それでもただここに立っている。本当なら夜の闇が全部飲み込んでしまうのに、今は街灯が明るすぎて飲み込んでももらえない。さっさと眠ってしまおう。このワインを飲みほして。そのままベッドに倒れこんでしまえばいい。明日になれば、また太陽が昇り嫌でも一日を生きなくてはならなくなる。灰色の世界の中でも、小さな花が咲いているのを見つけることができる。だから、今日という日はもう、おしまいにしてしまおう。

 

南出「ワクワクしないっていうのが連続して出てくるのが面白い、ワクワクしないだけでも呪いなんだって思った」

 

きじま「ワクワクしないのは、家族ってことなんだと思う」

 

稲垣「『AGE35,恋しくて』っていうドラマで中井貴一が「妻とセックスするのは近親相姦みたいで気持ち悪い」っていうんだよね」

 

南出「じゃあ最後僕のやつ。全然リアリズムとか考えずに書いちゃったんだけど」

 

メデイア呪い

どんな因果かわからぬが 都会の男に恋をして 
男を知らない生娘に あなたは誓った永遠(とわ)の愛 
双葉の松の末(すえ)かけて 変わらぬ気持ち千代八千代 
子どもが産まれた夏の日の 夕日がとってもきれいだったね 
だけど夕日が沈んだとたん 夏が終わって秋が来て 
あなたはわたしに飽きてしまった あの子も連れて逃げたのね 
ああ恨めしい、呪わしい うっかり頭をうったみたいに 
夢現(ゆめうつつ)で鬱になって 
深い深い渦の底 真っ逆さまに沈んでく 
沈んだ先に積もった恨み 言葉になってあなたを呪う 
因果は車輪の廻(めぐ)るがごとく 
わたしを不幸にしたものの一切に 復讐してやる 呪ってやる 
 
鼻毛よ伸びろ    月夜に伸びる不吉な影のように 
眉毛よ縮め     雷に怯える濡れた子猫のように 
脇毛よ白め     マムシの這っている白壁のように 
歯よ黄ばめ     便器のように 
産毛よ震えろ    さみしい病人の声のように 
顔よひしゃげろ   スクラップになった赤いスポーツカーのように 
唇よ乾け      日でり続きの田んぼの土のように 
肌よひび割れろ   小学校のうんていの古びたペンキのように 
下腹よ突きでろ   能登半島のように 
ほくろよ増えよ   第一次ベビーブームの頃のように 
デコルテよテカれ  アレキサンダー大王が殺した勇猛な雄ライオンのたてがみのように 
 
 
呪い問答 
Ready fight! 
実況「さぁ、始まりました。世紀の決戦。呪える女と呪えない男との戦いの、いま火蓋が切って落とされました。全てを貫く矛と、全てを防ぐ盾という、あの中国の故事さながらに、絶対に相容れない矛盾を抱えた二人の人間の邂逅。さぁ、さぁ、両者睨み合いが続いている。いったいどちらから仕掛けていくのか!?」 
 
男「どうしてそこまで真剣に呪えるのです?夫婦っていったって所詮は他人じゃないですか。他人のためにどうしてそこまでになれるのか、正直理解できません」 
 
実況「おーっと、いきなりの右ストレート!単刀直入とはこのこと、ズブっと核心をついてきた!」 
 
メデイア「あなたは本当の意味で、人を愛したことがないからじゃない」 
 
実況「な、何ということでしょう!まさに真剣同士の斬り合い、たった一言で心臓をひとつきせんというような、華麗なカウンターアタック。この試合、死人が出てもおかしくありません!」 
 
男「愛していると思います。でも、だからと言って、相手がいなくなってしまったら自分が保てなくなる、自分が自分じゃなくなるなんていう愛は、本当に愛なのでしょうか。それは愛ではなく、単なる執着というものではないでしょうか」 
 
実況「決まったぁ!これは完全に論破しましたよ!令和の論破王の称号は、今や彼のものです。」 
 
メデイア「お好きに言えばいい。人間同士の関係すら、そうしてきっぱりと決めてしまえるのね。冷静な眼差しで、起こることすべてに対して常に客観的に眺めことができるあなたは立派だと思います。ただ、わたしには、あなたはまだ生まれたばかりの赤ん坊。人生というものを深いところで味わったことがないというだけに見えます」 
 
カンカンカンカン! 
 
実況「そこまで、そこまでぇ!」

 

南出「今まで読んできたメデイア、能、サロメシェイクスピアから、もろもろパクってきてるのがバレバレですが。前回のエチュードやってみて、結構普通に喋るだけじゃしんどいなっていうのがあって、もういっそリアリズムからは離れて、五・七調だとか変な詩みたいな仕掛けもあっていいんじゃないかと思って」

 

稲垣「たしかに、それもいいのかもね」

 

★「呪いって、やっぱり何だ?」という話

 

きじま「呪いって人に見られちゃダメなものなような気がする。やっぱり世間的に褒められものではなくて隠さなきゃいけないもの」

 

稲垣「そうなんすよね。今の展開だと、呪ってるんですよって公表しちゃってるから、「呪いの本質」みたいなものが無くなっちゃってる。あと、もう浮気じゃなくてもいいのかも。なんかのきっかけがあって、呪い始めたら止まらなくなっちゃうというか、どんどんのめり込んじゃうっていう狂気の方が面白い気がしてきた」

 

きじま「呪いって、「相手のことが許せない」ってことだと思う。愛してるわけじゃない。相手のことを懲らしめたいんだよ。あとは、落差もいる。一度は幸せだったという経験があるからこそ、落ちた時に呪える」

 

丹澤「何で呪ってるとか、一旦言わなくていいんじゃない。浮気ってことがうっすら仄めかされるくらいはあってもいいかもだけど、その方がむしろリアリティがある気がする」

 

きじま「あと、呪ってたことがバレた瞬間が一番怖いかもね」

 

稲垣「あーたしかに!「あれ、俺呪われてる?」って気づいた瞬間めっちゃ怖い。あれ、これいけそうになってきたんじゃない」

 

★4人で状況をもう一度整理、ホワイトボードに書き出す。

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稲垣「じゃあ、一回やってみますか」

 

エチュード

なんやかんや問題はありつつも、まとまってきたのかもしれない。

次回の課題として、

・稲垣→(シーン①)日常の会話

・みんな→(シーン②)メデイアの呪い、(シーン③)呪い問答(文章としては理解できるけど意味がわからない台詞)

を考えてくることに。

 

★17時、解散。

帰りに池袋に寄って芸劇の下見と、稲垣と南出はジュンク堂に寄って帰りました。