曽根崎心中読んだ
20220425夜、稲垣、木嶋、桐澤、丹澤、南出、神田、徹平さん
★曽根崎心中をみんなで交代で読み始めたけど最初のシーン全然頭に入ってこなくて、逐一止めながら、南出くんと丹澤さんが解説してくれる。
丹澤
最初、観音参りってシーンから始まるけど、今はこのシーンほとんど上演されないらしい。大阪の寺を参るシーンなんだけど、今の人たちは見てもよくわからんらしくて。
桐澤
一で観音巡りとかサブタイトルみたいなので書いてるけど、文章ずっと続いてるよね、わかりやすく章があってって感じではないってことよね、
南出
ただ、場が変わるってのがわかるようにはなってる。
最初お初っていう遊女が大阪の寺を巡っていて、
太夫の語り、リズム良い中に大阪の地名がたくさん入っている。
丹澤
上りやすなすな、下りやちょこちょこ、ってのは寺の階段をお初が登ったりしてる様。
裳裾がはらはら、は着物の裾がはらはらしてますってこと。
南出
お初だけじゃなく観光客もいる。遊女として観光に付き合ってるシーンなんです。
曽根崎は梅田のちょっと南あたり、昔は森やった。
お初は北新地、歓楽街の観光客がよく来るところらしい。
で、徳兵衛がこの後出てくる。
稲垣
寺の名前多すぎて、どんだけ行ってんねんて感じやな。
徹平
相思い草とか、草の連続で出てくるのとか洒落てる。
丹澤
徳兵衛登場シーンは色々言ってるけど要するに徳兵衛がいかに色男かを語ってます。
雛男、一つなる口桃の酒とか、とくとくと、ってのとかお初に徳さんって呼ばれるのと音がかかってる。
南出
お初と徳兵衛は恋人だけど、遊女との恋愛はあまり認められてない時代。
徳兵衛は醤油屋の仕事の途中で、お初とたまたま会って、丁稚の長蔵を帰らせて二人きりになるってシーンになります。
南出
おっきなお寺の見せ物かなんかを客たちが見てるうち、ガイド的な仕事してるお初が1人でいる時にたまたま徳兵衛やってきて二人きりで喋ってる状況。
お初が全然最近トクさん冷たいじゃないのって、田舎に帰ってたって聞いたけど、どうしたの、って手をとって懐の中に手を入れさせて、結構大胆やで、お初、周りから見たら夫婦と変わらんって第三者的意見とかも太夫語りで入ってくる。
で、徳兵衛の言い分は盆と正月が一緒にきたっていうくらいめっちゃ忙しかったって言い訳をしている。
そのあと長台詞が入って、徳兵衛がこれまでいかに大変だったか語り出します。
桐澤
他の女の話が上がったみたいな?、そんな系統の話してるよね?
丹澤
醤油屋の主人が、徳兵衛がいい男と分かったので、金をつけて、娘をやろうとして、継母にお金あげてしまうんだけど、徳兵衛、俺には好きな人がいるからって文句言って、そしたら主人が怒って、娘はやらんし、店出て行け、そして4月7日までに、あげた金もってこい、後金輪際大阪の地は踏まさんぞって、
南出
徳兵衛もカッコつけなとこあるから、承諾して、田舎帰って、母のとこ行くんだけどちゃんとお金返してくれんくて、なんとかなんとかお金の段取りしてきて、大変だったっていう。
丹澤
大阪追い出されても盗みしてるわけでもないし、大丈夫よ、なんかあったら一緒に死んでやるわってこの時点でお初は軽く言ってる。
南出
後々響いてくるんよね、この軽く言ってる言葉が。
丹澤
でも4月7日って明日やん、期日明日やんってなってる。
昔ってお金の支払いが月払いで、油屋の九平次、あと1日お金が必要だけど期日までには返すからって九平次っていう徳兵衛が親友って思ってるやつに4月7日までには帰ってくるって思って、お金貸しちゃう。だけどおかしいなあ、3日4日も返事ないんだよねってなってる。
稲垣
怪しい雰囲気がぷんぷんするよー、
桐澤
徳兵衛のええかっこしいなとこが仇に出てるな。
そんな状況報告していた2人の元に噂の九平次がたまたまやってきて、お金返せって言ったら、何言ってんねん、お前、俺借りてへんやないけ、証拠?あるんやったら見せてみろよ、はあ、この証文の日付の時、俺ハンコ無くしてたがな、押せるわけないやんけ、お前俺のハンコ盗んで勝手に偽の証文作ったなってなる。
みんな
あーーーーー、九平次、最低やな。
南出
九平次何が悪いって、計画犯やねんな、
あらかじめ役所にハンコ無くしたって言っといて、徳兵衛に金貸してもらった時にハンコ使ってる。ハンコない時にハンコ押せるわけないやろって、徳兵衛に完全犯罪成し遂げてる。
歌舞伎とかになると、九平次がなんでこんな酷いことしたのかの理由も描かれてる。
そして、喧嘩始まる
徳兵衛はただ一人、九平次は5人、ずるい。
喧嘩に負けてボロボロになって、徳兵衛追い詰められて終わる。
南出
喧嘩に負けた後のシーンも徳兵衛の人の良さが出てるんよな、見物人に見苦しいとこ見せて申し訳ありませんでしたと一礼して帰っていく。
ここで一場終わる。
怒涛の展開だな。
南出
近松はこの実際の心中事件が起こってから一ヶ月で書いてて、
当時見てる人は、お初が出てきた時点でこの人が心中するってわかってる。
そのお初が観音巡りしてるってのがみんなグッとくるんよね。
二場はお初の店、天満、遊廓、お初は昼の事件見て落ち込んでるって状況です。
徳兵衛来て色々話しているうちに色々あって、
お初の着物の中に徳兵衛隠れる。
そこに九平次が来る。
徳兵衛が言うことはうわ言だから本気にするな。って釘差しにくる。
九平次とお初が話している中で、お初は独り言で死の決心があるかと着物の中に隠れている徳兵衛に確かめる。
足で死ぬ気があるかどうか確かめる。セクシー。
南出
見せ場であるよね。
稲垣
ギミックが効いてるよね、
南出
九平次の前で独り言言ってるけど、足で徳兵衛とやりとりしてる。
歌舞伎版で、足を顔に擦り付けるってのが出来たらしくて、その後で文楽もそれを真似たらしい。文楽の人形は基本足がないんだけど、このシーンだけ、人形に足をつけるらしい。
みんな
へー。
丹澤
徳兵衛はこの店からしたら良いお客さん。
九平次は嫌われてる、
南出
この後店終いになって、寝るんやけど、徳兵衛が下にいて、初が二階で、お初が白装束、梯子降りようとするんだけど、行燈ついてて、それを消そうと箒につけた扇子で消そうとするんだけど、お初が梯子から落ちちゃってその勢いで明かり消える。
木嶋
有明の火ってのは夜通しつけとく火ってことだよね、
南出
それを消したってことか、
そのあと、火が消えて主人が起きて、何事だって、でも真っ暗で、火打ち石をはたはたとか、カチカチとか、火をつけるリズミカルな音にあわせてそろそろと戸を開けて二人は嬉しがって出て行く。
ちょっとコミカルなシーンよね。
で、三場
南出
冒頭のこの二行が一番有名
「この世の名残。世も名残。死に行く身を譬ふれば。あだしが原の道の霜。一足づつに消えて行く。夢の夢こそあはれなれ。」
その後、
結構ややこしい表現が続くけど、曽根崎に着くまでの道中ってことなのかな。
丹澤
これで自分達も噂になるって話してる。
桐澤
ていうことはそれ以前もちょこちょこ心中あったってことよな。
南出
心中ってロマンチックに描くからね。
木嶋
死ぬのが美しいみたいな感じ。
南出
さっきの店出るところも嬉しい、死出の道を喜べり、とか表記してるしね。
で、盛り上がってく。
お初を脇差で刺して、徳兵衛は剃刀で喉をグルリと刺す。
貴賎群集の回向の種 未来成仏疑いなき恋の。手本となりにけり。って終わる。
桐澤
死に方結構グロいね。入水自殺やと勝手に思ってたけど、こんな感じなんやな。
南出
お初がリードするんよね、男は、全然刺せないない、お初は死に急いでて、心中スイッチ入ってしまってる。
丹澤
お初は先が見えてて、遊女としてもこの歳がピークみたいなのもあったらしい。
南出
ロミオとジュリエットっぽいよね。
木嶋
はじめてじゃないかな、こういう変なやつ読んだの。
みんな
変なやつ!?
木嶋
変なやつっていうか、古文のっていうかね。
このハルとか書いてるのなんなの?
丹澤
文楽の謡の楽譜みたいになってるんよね。
木嶋
。とかついてるのに、言葉繋がってたりが不思議だった。
南出
句読点って元々なかったんじゃないかな、日本て、ずっと一文というか、
桐澤
最近文楽見に行ったら、上と中で幕ごとで謡の人入れ替わったりしてた
桐澤
感情的に嬉しいって泣いたり悲しいって悲しがりながら死んでくから、のせられて、私たちも死にたくなるって気持ちも若干わかる。
丹澤
最後の死に方えぐいけどね、死に姿見苦しと思われないようにって言ってるけど、結構えぐいよね。
南出
真っ暗やから、なかなか刺せなくて、喉に当たっちゃうって感じやと思うんよね。
木嶋
お初は刺されるけど、徳兵衛はどうなったの?
丹澤
徳兵衛はお初殺したあと、剃刀でグリグリ、
木嶋
お初ちょっとね。殺人させるか?恋人に、普通。
丹澤
時代もあるんかな、そういう。
稲垣
めぞん一刻の響子さんも、私より1日でいいから長生きしてっていうしね。
南出
昔の武士とか、自害するってすごいですよね。
丹澤
心中とか死にきれなくて一人だけ残るとかあるよね、
南出
それで大体、男が残る。
木嶋
現代でもあるよね、弱い方を先に殺して、自分もいざって時にできないって。
桐澤
最後死に行く前の、火打ち石とかの音に合わせて、微笑ましいシーン描いてるのとか、死にいかず逃げれば良いやんってなるよなあ、ああ、って
南出
インタビューで、これは道行、三場の最初のところを語るための台本で、天満屋のシーンは結構スラスラ行けって、師匠から言われてるらしい。見せ場は最後、道行にどれだけ下ごしらえするかってのがあるらしい。
桐澤
まとめたらこんな短いんかって思った。
南出
予定調和に登場人物出てくるしね、タタターていくよね。
丹澤
九平次の話とかも気になるけど、
木嶋
九平次の話に行っちゃうとそっちに話が行っちゃうよね。
南出
九平次が友達になんであんなことしたのかってのはたしかに謎よね。
稲垣
歌舞伎では九平次の話入ってるっての聞いて面白いなって思ったんだけど、なんかの本で、(思い出した、斎藤憐の「劇作は愉し」だと思う。)、歌舞伎は物語が、一つでなく、二つも三つも、一緒になってるってのがあるって話を書いてて、重層的って言うの、なるほどなーって思った。
枝分かれしてく感じあるんよな。
南出
それで言うと、歌舞伎には「世界」って概念があって、たとえば「仮名手本忠臣蔵」って作品は、元は江戸時代に起こった赤穂浪士討ち入り事件を題材とするけど、当時は政治的事件をそのまま劇にすることが禁じられていたから、『太平記』っていう南北朝時代の軍記物語の世界で起こったこととして書き換えた。そして今度は「仮名手本忠臣蔵」がヒットしたことによって今度は「忠臣蔵の世界」ってものが成立した。その忠臣蔵の世界のサイドストーリー・後日談として、「東海道四谷怪談」とか「盟三五大切」とかって作品がうまれた、みたいな。おんなじ世界だけど一方こっちでは、みたいな。
稲垣
スピンオフってことやんね。踊る大捜査線の『交渉人 真下正義』とかもそんな感じちゃう。
丹澤
マーベルとかもまさにそうだよね。世界を共有してる。
桐澤
ハムレットに出てくる。「ローゼングランツとギルテンスターンは死んだ」見たいな、ハムレットの話が進行してる中で、ローゼングランツたちが死ぬまでの間に何があったかの話。
南出
近松は心中物を書くけど冷めた目で見てる。そこが面白い。歌舞伎やと九平次のことも書いて、痛い目に会うとか、二人の死を見て自分も死ぬ見たいな流れに持ってくけど、近松は、そう言うの書かずに、そのまま置いてるって感じ。
稲垣
あと、謡って行為と言葉が密接に結びついてるのが面白い。
「〜〜〜」とむせびなく。
「〜〜〜」と懐に手を入れる。
て「」の台詞と、それに対応する行為が逐一あるって感じ。
木嶋
それ不思議よね、行為は見たらわかるもんね。わざわざ言わなくても、
南出
人形いなくてもわかるようにってことなのかな。
木嶋
浄瑠璃、はじめは語りだけがあって、後で人形が使われるようになったってことなのかな。
桐澤
人形がやってくれることで、わかりやすくなるんだろうな、もしかしたら、言葉だけでわかっても追えない部分を人形が保管してくれたのかな。
木嶋
講談みたいなのがあったのかな。
桐澤
琵琶法師とかなのかな。
木嶋
歌舞伎の舞台が長いのは、浄瑠璃が元々舞台が長いからってのは聞いたことある。
徹平
二次元ですよね。全員前向いて、座ってるイメージだよね。
杉本文楽って、浄瑠璃で奥行きを持たせてやらせるってのやったらしい、
南出
蝶が飛んでる映像があって、最後のお初の着物の模様に蝶があるて演出がカッコよかったってのを聞いたことある。
徹平
日常の身体から離れたところに行ったものを自分の中に落とし込んでいる、
型を持ってやってるときは人形ぶり、人形浄瑠璃、
結城座、あれも、分家した人は、本家と別で、普通のサイズより大きいのにして、最後に人間が出てくるってのを見たことがあって、バタイユの作品とかやってたかな?夢想的な、攻めたやつがある。
足がないって感じを重量のある自分達がどうやってできるかが大きいテーマ。
桐澤
人形の方に人が近づくっての不思議よね。
木嶋
人形って人の模したものなのにね。
南出
人形には人間ができないことができる。究極は人間は舞台で死ねないけど、人形使いが人形から離れていくと、人形は本当に死んだみたいに見えるのよ。死の表現力がすごいんよね。
徹平
心中ものってやっぱ人形浄瑠璃が一番向いてるんだなあって。
木嶋
歌舞伎は黒子が隠してはけてくもんね。
南出
能は何事もなかったかのように去るのが面白いよね。
次回は5月8日。
桐ちゃんのワークショップ二回目。