カハタレ日誌

カハタレの稽古の様子

20230129 稲垣劇作セミナー&WS

20230129 稲垣劇作セミナー&WS
 
参加者
稲垣、丹澤、南出、徹平、宮尾、木嶋(午後から)
 
午前10時にみんな集まってくる、
 
稲垣 いや〜、勉強大変だ〜テストやばいっすよ〜、骨の名前全部覚えるのとかムリムリ〜
 
宮尾 俺たちが日常に使う骨じゃないの?
 
稲垣 知らない骨だらけっすよ〜。ま、そんなことより今日は午前中に戯曲を書くワーク、昼から次やる短編公演について考えましょい。じゃあまずはヨガしよう。ヨガして最高の気分で、最高の気分で戯曲書いて、最高の気分で次回公演について考えて、最高の気分で帰りましょう
 
 
たっぷり45分くらい、ヨガ。ほぐれる〜気持ちいい〜
 
稲垣 じゃあ次はちょっとワークショップしましょう、みなさん、地面にうずくまってください。
 
稲垣の指示に合わせて、体が変化していくワークショップ。
 
タネから植物に、植物が風に吹かれて、今度は鳥に、鳥が溶けて液体に、液体が波に揺られていって、手を触れられた人はイソギンチャクに、マンボウに、たこになって、海が干からびて、気化していって、雲になって、雲から雨になって、地面に落ちてタネになって、また植物になって芽が出て、最後は綺麗に咲いて。
 
稲垣 さて、じゃあ劇作のこと話していきまーす
 
大事なことは「切り口」を決めること。
 
参考映像を見る。(参考作品に★マーク)
M1グランプリ 2022 「三遊間」のネタ
 
ここでの「切り口」
「車内に水平なとこない」
「車内で小さくて大事なものだすな」
 
ポイズンガールバンドのネタ「グローブ」
ここでの「切り口」→グローブの言い換え
 
野球する時に左手にはめるもの
野球する時に聞き手と逆の方にはめるもの
使ってるうちにだんだんやらかくなってくる野球用革製品
ジャンボ革手袋
パンに例えたらクリームパン
野球用クリームパン
フルーツに例えたらバナナ
野球用バナナ
親父との絆
父ちゃんの背中
網付きジャンボ革手袋
 
宮尾 ずっと、カバンいじってるのもおもしろい。相方がずっとひっそり聴いているのもおもしろい
 
稲垣 世界をどういう切り口で見ているのかってことなんすよね、車の中を曲線しかない世界でみる、グローブをどういう切り口でみてるか、親父との絆でもあり、ただのジャンボ革手袋でもある
 
★藤子F不二雄「宇宙人のレポート」
稲垣「宇宙人の視点で地球人の生態が語られていくって話なんだけど、実はロミオとジュリエットの話が、宇宙人視点で語られていくんですよ。僕が書いた頭町戯曲集では、坪内逍遥訳のロミオとジュリエットと、藤子F不二雄のロミオとジュリエットを比較しました。」
 
 
 
 
 
宇宙人の視点で見ると、宇宙人視点でみるから広範囲で抽象的な言葉になる
ナイチンゲール」→「夜行性小型飛行生物」
「ひばり」「昼行性小型飛行生物」
セックスの描写→「AとBはお互いの相違点を奇妙な形で利用し合った」
 
宮尾 最初で言ってた切り口って話とはどう関係するんだっけ 
 
稲垣 車の中、グローブ、宇宙人、というそれぞれの切り口で見るから言葉が生まれる 
 
稲垣 じゃあここで、ちょっと体も動かしながらやっていきましょう。徹平さん、ちょっと前に出てもらって「昨日あったこと、とか、最近はまってることとか、なんでもいいので短い話をしてもらえますか。
 
 
 
★「身体と言葉ー舞台に立つために山縣太一の「演劇」メソッド」にのってるワークショップを参考にしてます。
 
 
 
 
徹平さんの両国に行った話を、次は丹澤さんが今の徹平さんの話を徹平さんの質感を自分の体に宿して、再現してみる。ちょっと恥ずかしがりつつ再現。左手の動きが面白かった。
 
丹澤 むずかしいね、これっ
 
次に宮尾さんが、「徹平さんを宿した丹澤さん」を再現してみる
 
照れながら喋るところが誇張されて面白い、左手だけだったのが今度は両手が動かされていた
 
稲垣 どこを意識してやりました?
 
丹澤 てっぺいくんが、みんなの方を見ながら喋ってたからそれを真似しようと思った。
 
稲垣 左手の意識がたぶんあったから、左手はどうしても変な動きになってなってた。てっぺいさんの動きをやろうとしても丹澤さんの体から逃れられない。ほぼ8割くらい丹澤さんの体だった
 
宮尾 正直途中から何やってるかわからない、でも恥ずかしがっている感じが印象的だったからそれをやろうと思った
 
稲垣 これ面白いのは、徹平さんを模倣すればするほど、丹澤さんの体が出てくる。それは本当の丹澤さんというわけではなくて、無意識の丹澤さんっぽさが出てくるってとこなんすよね
 
 
稲垣 今、府中美術館でやってる ★諏訪敦「眼窩裏の火事」って展覧会で、ダンサーの川口隆夫が舞踏家の大野一雄のパフォーマンスの模倣しているのを絵にしているってのがあって、ここでは3つの層があるのよね、大野一雄の身体が、川口隆夫によってトレースされて、大野一雄自体もスペインの舞踏家(ラ・アルヘンチーナ)を模倣してる。その三つの層が諏訪敦の目で絵画化されてる。大野一雄を模倣すればするほど、川口孝雄がでてくる、強調されるんだって。NHKのぶらぶら美術・博物館で諏訪さんが言ってたんだけど、絵を描くことによって、コミュニケーションをしている、ちゃんと関わっている、ってことなんだって。それを演劇でやりたいんすよね。アカデミーの時はそれを僕は儀式といっていた。劇場を出ると世界が変わっているっていう。最近は心構えが変わってきた。前は誰かの話を聞いて作品化してた時期があって、それは出演者のイニシエーションしていく過程が見たかったんだけど、なんかそれはその人のエサにしてる感じがして、それは違うなって最近は思っていて。それに自分が関わらなくては意味ないなっていうか、相互作用で、作ってる参加者全員が変化するような儀礼でないと意味がない、そこに双方向のコミュニケーションが必要なんだなって。距離をとってるだけでは、いい作品はもしかしたら生まれるかもしれないけど、それはあんまり意味ないなって。さらけだす覚悟と言ってもいいかもしれないけど、そういうのが必要だなって。
 
丹澤 わかる気がするかも。演出家自体がコミットしてない作品を見たら、なんかなって思う時がある、
 
稲垣 範宙遊泳の山本さんがツイートしてた。演出で心がけていることとして、人の動きを変えようとする時に、自分も変わる覚悟がないといけないっていうようなことを言ってて。役者を受けて、こうかもしれないと変化する覚悟がないと、ダメなんだろうなと。なんかそれは実感としてわかるなって。
 
宮尾 茶会期のプレイアクトで、「実感して喋る」っていうパフォーマンス思い出した
 
稲垣 あれは実感と、こうなればいいなという理想をミックスして喋っている
 
徹平 ガッキーのパフォーマンス、稲垣くんの私的なことでも、稲垣くんを知らなくても、実感を伴っていれば面白く見れた
 
稲垣 M1みた?ダイアモンドとキュウが、滑った感じになってた。面白かったけど、はまってなかった。それについてかまいたちが「作品化してる漫才と作品化してない漫才」って表現してて。「作品化してる漫才は、お客さんが乗れないと受けない」って。客とのやりとりとか、作品化されてない漫才は、その場の空気とか、取り込んでいけるから、観客の雰囲気に合わせていける。
 
宮尾 漫才でもそういう考え方やっぱあるんだね。「作品化」してるものとしてないものってあるんだなって
 
稲垣 それでいうとヨネダ2000はすごいよね。作品化されてるのに、観客をこっちに引き込む技術をもってるんですよね
 
南出 ヨネダ2000は愛ちゃんが、ちょっと戸惑ってる演技をすることによって、観客を引き込むのが上手いって聞いたことがあるなー。
 
稲垣 よっし、ではでは、書いていく段階に入ってみましょうか、「切り口」で、既成の文章を書き換えてみよう
 
ちょっとその前に、お昼休憩っすね、休憩しながら説明しますわ〜
 
お昼買いに行く。一同、巣鴨で美味しい豚まん屋さんを見つける。生地がもちもち、肉感のしっかしたタネがうまかった。ラム肉まんも絶品。
買い出しから帰ってくると木嶋さんがきてた。差し入れいただいた。鯖寿司とかお菓子とかいつもありがとうございます。
 
 
〜〜WS「切り口」で、既成の文章を書き換えてみよう〜〜〜
 
稲垣 じゃあ、僕が以前に書いた、「さよならアワーアワー」っていう、女が男に刺されて倒れるまでの数秒を刺された女のモノローグで書いた戯曲があるんですが、

 

 
 
 
 
これをいろんな切り口で書き換えてみてください。例えば、
「タコ、ギャル、田舎のオカン、宇宙人、マンボウ、イソギンチャク、加山雄三、木嶋の目、麻生、ニュートン瀬戸内寂聴スネ夫のママ」
この中から自分で一個選んで、その質感を体に宿して、あんまり深く考えず、いきなり刺されたって状況のモノローグをがーと文章にしてみてください。タコだったらタコ、トマトだったトマトの質感だからこそ出てくる言葉があるはずです。制限時間20分くらいで、じゃあどうぞ。
 

 
 
 
 
みんな書く。
 
稲垣 はい、じゃあ順番はじゃんけんで。
結果 稲垣→丹澤→木嶋→徹平→南出→宮尾
 
①稲垣のまんぼう、ゆったりとした口調、一人称「おだ」。田舎っぺな感じ。途中からテンポはやくなる。
 
②丹澤の瀬戸内寂聴、淡々とした語り口、寂聴の体験・情報をセリフにしてる感じ
 
稲垣 情報で寂聴とはわかるんだけど、もうちょっと寂聴の質感を出せれたらもっといいなと。寂聴の質感ってどんなんだ?宮尾さん、できます?
 
宮尾さん、寂聴の質感に挑戦。俗っぽい寂聴がおもしろい。途中で稲垣から「喋り方は変えないで」「説教して」などの指示がとぶ、説教のモードでテンションがぐっとあがって面白い
 
③木嶋の寂聴。「あたし、寂聴よ」から始まるモノローグ。最初から名乗るんかい!のおもろさ。「あなた〜を刺せる?」という、定型の繰り返しでリズムを生み出すところはさすがの技術。
 
④徹平のたこ。はじまりの、え?えー。えー?え、とゆっくり始まるところ、1、2、3、、、と数を数えるところがちょっと不気味でおもしろかった。関西弁のタコのキャラというのがくっきりと頭に浮かんでいる感じがよかった。
 
⑤南出のトマト。トマトらしさちゃんとあった。「つぶつぶが出ちゃう」とか「水道で手洗わないで」とか、一個一個のフレーズがしっかりハマっててよかった。南出はトマトの質感うまいのでストックしておいたほうがいい。
 
⑥宮尾の加山雄三。シンプルに加山雄三の真似が上手い。「海よ〜遠き海よ〜」がちゃんと自分の中の海=刺されて溢れる血と綺麗にハマってたのが逆に腹立つ(いい意味で)加山というのは共通演技としてみんなの中にあってもいいんじゃないかと思った。
 
稲垣 みんなよかったです。いろいろやってみて、得意な質感を探っていくのはすごく大事だし、苦手な質感を知っておくのもいい。この質感が身につけば、演技の中で、ぐいっとテンションを上げていける、「仕掛ける」演技ができるようになったりもする。注意点としては、体を変えると言葉が変わるんだけど、それをそのままやってしまうと違うパフォーマンスになってしまうということ。例えば、タコをそのまま身振りでタコの動きをやりながらセリフを言っちゃうと、そういうパフォーマンスになっちゃう。タコになりきるんじゃなくて、その質感を体に内包するっていうか。みなさん、やってみてどうでした?
 
宮尾 何も考えずに書いていったんだけど、それをいざ話してみると、この言葉は違うなっていうのが出てきたのが気づきとしてあった
 
稲垣 それは大事で、声に出して言ってみると、これはいらないな、これは反復したいな、というのが出てくるんすよね。
 
丹澤 これは「誰」っていうのがわかったほうがいいの?
 
稲垣 いや、それはわからなくていい、みてる人が「誰」かわかるかは関係なくて、そのイメージが自分の身体を通して出てくる質感を面白がれるかが大事
 
宮尾 稲垣くんの戯曲で、徳川埋蔵金の話だったんだけど、そこで徳川埋蔵金のドキュメンタリーを見せてくれた。そこに出てくるおじさんの水筒のボタンの押し方が面白くて、そのおじさんを少しトレースして演技したらすごくうまくいったというのがあった。それも今思うと今回のワークとおんなじことをしてたのかなって。
 
稲垣 今回できなかったけど、みんなが書いたのを配役変えてとかも面白いかもね。この劇作のワーク、1年くらいずっとやりたくてできてなかったから、今日で来てよかったです。みんなどうもありがとうございました。