カハタレ日誌

カハタレの稽古の様子

【台本:タンザワ】20211114

0 プロローグ

木嶋、紙を見ながら読んでいる。

こんな風に年を取るとは思っていなかった。今頃は郊外の一軒家、汚れの目立たない最新の壁で施工した一軒家に住んで子供は2人。下の子が3歳になったら幼稚園に預けて契約社員から社会復帰して。小学生になるころには正社員採用であの人と二人ダブルワークしてるのが私だと思ってた。子どもたちがねだったら柴犬かトイプードルを飼おうと思ってた。
服はユニクロジーユーとモードオフとトレジャーファクトリーとメルカリで循環させて、大量生産品も自分らしく節約上手のやりくり上手の腕の見せ所。そもそもそんなところに見え張らなくても私たち充実していて幸せで、生活に追われて悩んでる時間なんてないはずだった。結婚しようってプロポーズしてくれた時私はそこまで思い描いていたけれど、あの人は何考えて私に指輪をくれたんだろう。毎月給料は飲み代とゲーム課金と奨学金の返済でなくなるし。私にしたって美容院いってネイルしてまつエクしてカフェ行って、ネットで服買ってるうちになくなるし。貯金しなきゃ一軒家なんて夢のまた夢。子ども持つ気あるのって聞いたら、「そのうち、でも今じゃないよねまだそんな責任持てないしっ」てじゃあ家は?って聞いたら「郊外とか不便だからずっと賃貸でもいいじゃん」て、そうなんだ。あれなんか違う私そろそろ妊娠して、この会社も給料上がる見込みもないしそろそろ経営がやばそうだから辞めようって思ってたのにやめられないし凄い宙ぶらりんでって…

木嶋
あっすいませんつい夢中になっちゃった。男性よりも女性のほうが現実的な考え方をするなんてよく言いますが、結婚するってなった時には、やっぱり結構具体的に、妄想するんですよねぇ。家とか子供とか介護とか。それでも結婚生活が始まってみたらそんなの全然具体的に考えられてなかったって、気が付くんだけど。もっともより現実的に考える人が増えたから、結婚しないって選択をする人も増えてきたのかもしれませんね。男性はどうなんだろう。介護のこととか、考えます?奥さんがいたら、いつでもきれいな部屋にあったかい料理がでてきて、自分は仕事してたらいいと思ってない?ダメダメよ。もちろん、女性のほうも、男性を頼ればいいってもんじゃありません。お互いにパートナーであるってことを忘れちゃいけない。恋愛はドキドキとワクワクで特別感があるけど、結婚は生活。日常を繰り返していくことですからね。結婚相手っていうのは、一緒に生きていくパートナーですからね。え、何わたしですか?えええ、もちろん、夫と良好な関係を築いていますよ。そうですね、お互いに、ええと、協力?しあって、助け合って、本当ですよ、え?なに、疑うんですか?

岩村 あのお、となり空いてます?
木嶋 空いてますよ!
岩村 どうも。おーい。こっち、空いてた。(山下を呼ぶ)
木嶋 ではわたしはそろそろお暇します。では、みなさま、ごゆっくりどうぞ。

1-1 スタバ/あったかい話

岩村
犬、知ってる?犬、飼ってるんだけど、可愛いよ、犬、三郎って名前なんだけど、チワワなんだけど、白い、ちっちゃい、犬、飼うまでは、全然興味なかったんだけど、サブちゃん、飛びかかってくるからね、玄関開けると、はっはっはっは来るからね、もうさ、超ラブリーよ、ちょっと臭いけど、ちょっとなんかドッグフードの匂いと電車の椅子みたいな生地のソファが湿気てカビくさくなったみたいな臭いと、口の臭さと皮膚の匂いとが混ざった感じの臭さあるんだけど、その臭さも含めて超ラブリーよ、もう気分もラブリーだもん、気分も世界もラブリーだもん、犬いると、犬、いいよ、犬、飼いなよ、俺、サブちゃんの話してるだけで、ちょっと元気でるもん、にやけてきてるもの、今、あ、そう、あとね、犬ね、あったかいから、どこ触ってもあったかいから、特に腹、あ、でも足もいいよ、コリコリしてて、でもやっぱ腹ね、フニフニしてて、いやー、すごいよ、犬、あ、犬じゃない?、正直この世の中で、って言うかこの世界で、一番あったかいものって犬じゃない?って今思ったんだけど、どうかな?

山下 うーん、どうだろう、
岩村 って言うか、むしろ、世の中にあるあったかいものって実は犬だけなんじゃない、
山下 や、だって、肉まんとか、 
岩村 いや、わかるよ、肉まんとかあったかいのわかるよ、だけど本当は実のところ肉まんは冷たいんじゃないかね、って、カモフラージュのあったかさってのがあって、犬の腹のみが真のあったかさなのではなかろうか、って、
山下 うーん、ホットミルクとか、
岩村 それはもう、熱いじゃん、ホットじゃん、あったかくないじゃん、
山下 あったかいけどなあ、
岩村 いや、わかるよ、肉もんもホットミルクもホットレモンもホットコーヒーもあったかいのわかるよ、
山下 あと、コタツとか、
岩村 そう、コタツもね、あったかいよね、電気毛布も電気ストーブもガスストーブも、
山下 あと、お湯ね、
岩村 そうだね、お湯ね、あー、お湯、お湯かー、お湯、は、あったかいわ、むしろ犬よりお湯の方があったかいかもしれない。
山下 ごめん何の話?
岩村 温泉行きたいね、
山下 行きたー。

    スタバのコーヒー飲む

岩村 犬、呪われてんだ。
山下 は?
岩村 犬、サブちゃん、呪われてんだ。
山下 え?は?呪われてるって何?
岩村 最近鳴き声に元気がないんだ。
山下 え?は?呪われてるって誰に?
岩村 妻に。
山下 妻に?
岩村 温泉行きてー、
山下 温泉は行きたいけど、
岩村 山ちゃんが温泉なんて言うから温泉行きたくなっちゃったじゃない。
山下 温泉はイワムラーが言い出したんだよ、急に。
岩村 あ、そうか、山ちゃんはお湯って言っただけか?温泉とか行く?
山下 うーん、行きたいんだけどね、ほら、妻がね、あんまり好きじゃなくてね、
岩村 あー、妻ね、温泉好きじゃない妻っているよねー、
山下 温泉というより旅行が好きじゃないんだよね、
岩村 あー、いるいる、旅行が好きじゃない妻っているよねー、
山下 だからむしろ、どこでもドアが欲しい、犬よりもむしろどこでもドアが欲しい。
岩村 どこでもドア?
山下 どこでもドアでドアトゥドアで温泉行きたい。
岩村 めっちゃお湯好きじゃん。
山下 旅行なんて本当良いことないよ。
岩村 あー、それかも。
山下 え、何が?
岩村 犬、呪われてる理由それかも。
山下 ん、犬、呪われてる理由それ、ってどれ?
岩村 旅行旅行、
山下 あー、えっ、そもそも犬、呪われてるってどういうこと?
岩村 見ちゃったんだよね、
山下 うん、
岩村 夜、俺いつも十時に寝るんだけど、いつも妻は俺より寝るの遅くて、いつ寝てるのか俺先に寝ちゃってるからわかんないんだけれども、夜、トイレ行きたくなって目覚めて、あ、夜間尿ってあれらしいよ、一回でも寝てる時目覚めてトイレ言ったら夜間尿なんだって、ラジオで言ってた、膀胱衰えてるんだって、いや、最近膀胱ひどくてさ、尿漏れとか、ある?

山下 尿漏れはないよ
岩村 えー、何、トレーニングとかしてるの?
山下 や、尿漏れの話どうでもいいよ、
岩村 お前尿漏れの話結構大事だぞ、今後の人生に関わる話だぞ、
山下 犬、呪われてる話聞かせて。
岩村 あ、そうそう、サブちゃん、かわいそうに、サブちゃん、なんか見ちゃったんだよね、夜間尿で起きた時、妻、犬、呪ってるの、なんか微かに音聞こえてきてて、隣の部屋から、隣の部屋、あれなんだけど、なんて言うの、横にスライドさせるドア、なんて言うの?
山下 ふすま?
岩村 ふすま、なのかな?、ふすま、さ、ちょっとさ、そーっとさ、開けてさ、開けたら妻、いてさ、


1-2  スタバ/呪いの話

岩村 なんか、ブツブツ言っててさ、
芽衣子 ブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツ、
岩村 うわー、なんかブツブツ言ってるーって思って、

芽衣子、石鹸をナイフで犬の型に掘りながら、

目、深い深い黒に、光がポツンとともる。
鼻、湿った茶色のブツブツに息が出入りする。
口、ピンク、こそばゆいピンクの口。
耳、が生きている、ジャンプするように生きている。
足、優しい白で覆われている。
尾、振られる、とてつもなく揺れる。
愛してる。愛してる。愛してる。

岩村 て、どうやらなんか、犬のこと、話しているように感じて、一人で、
山下 こえー、
岩村 話しているっていうか、呟いてる、呟いてるっていうか、唱えている、っていうか、唱えていて、

芽衣
あなたが家にやってきた時、愛を感じた。
その走り回る姿、弱い吠え方に。
あなたの毛をコロコロで掃除する時、愛を感じた。
紙に張り付くおびただしい線に、私の抜け毛と混ざる様に。
あなたが膝の上にのっかかってくる時、愛を感じた。
撫でる手に伝わる優しい感覚に、生き物の動きに。
あなたと歩く散歩道に愛を感じた。
いつものおしっこポイントに、季節によって変わる光景に。
桜、朝顔、紫陽花、モミジ、スミレ、パンジータンポポ、ヒマワリ、白詰草
愛している。愛している。愛している。愛して
岩村 いる。愛している。愛している。って、みたいなこと、言ってて、明らかに三郎ちゃんとの思い出、言ってて、
山下 こえー、のか?
岩村 のか?って俺もなって、だけどよく見て、なんか犬の形したなんか持ってて、
山下 え、どこ?
岩村 ほら、手のとこ、左手に白いのなんか持ってて、右手にカッター持ってて、
山下 うわー、こえー、
岩村 掲げはじめて、あれが犬の形してるってわかったんだけど、その白いの掲げはじめて、愛してる。愛してる。愛してる。
芽衣子 愛してる。愛してる。愛してる。
岩村 愛してる。って言いながら掲げはじめて、
芽衣子 愛は眠らない。愛は滞ることを知らない。愛は読めない文字である。愛は触れられないスマホである。さようなら。ありがとう、さようなら。
岩村 って、犬の形の白いのの首のところにカッター持ってくから、
山下 えー、
岩村 やめてーって、飛び出して行っちゃったの。俺。え、なにやってるの?
芽衣子 なにもやっていないよ。
岩村 なにもやっていないわけないでしょ。愛してる愛してる言ってたじゃん。
芽衣子 愛してたのよ。
岩村 愛してた?なにを?
芽衣子 三郎ちゃんをよ。
岩村 カッター使って?
芽衣子 わたし、カッターを使わなきゃ愛せないの。
岩村 は?
芽衣子 カッターを使ってはじめて愛せるの。
岩村 は、なに、カッターを使ってはじめて愛せるってなに?新鮮な言葉、新鮮な言葉使うね君、
芽衣子 わかんない、わかんないんだけど、
岩村 え、なに、三郎ちゃん、殺したいの?
芽衣子 わかんないって言ってるでしょ、わかんないの、あー、
岩村 って泣いちゃって、話通じなくて、ちょっと、あの、来てくれない?
山下 え、なに?
岩村 すぐそこだから、来てくれない、
山下 え、

岩村、山下を連れて、その辺を丸く歩きながら、

山下 え、今から、
岩村 うん、
山下 行くの?
岩村 うん、
山下 そこに?
岩村 うん
山下 いやいやいやいや、
岩村 いやー、ちょっとちょっとだけだから、
山下 無理無理無理無理
岩村 いやー、もう、ほら、こういうのはさ、第三者がさ、大事なんだから、
芽衣子 あーーーー、
山下 え、泣いてんじゃん、
岩村 いや、そりゃ泣くよ、ずっと泣いてんだから、
山下 え、ずっと泣いてるの、
芽衣子 あーーーー、
山下 え、俺行っても何にもできないから、
岩村 俺言ってもどうしようもないんだから。
山下 じゃあダメだよ、
三郎 ワン、ワンワンワン、
岩村 ほらあ、サブちゃんも助けてって言ってるよ、
三郎 ワンワン、ワンワン、
山下 ええー、
岩村 ただいまあ。
山下 お邪魔しまーす。
芽衣子 あーーーー。あ?誰ですか?
山下 あ、山下です。友達の。って具合で、無理矢理、本当に無理矢理連れてかれてしまって、
あや なにそれ、なんか大変だったんだね。
山下 大変だったってもんじゃないよ。
あや てゆうか、それ、呪われてるの犬じゃないよね?
山下 え。
あや 呪われてんの、岩村さんでしょ
岩村 え?そうなの?


2―1 自宅/着いた 

芽衣子 え?誰ですか?
山下 あ、山下です。友達の。
芽衣子 あ、どうもはじめまして。お構いもしませんで。
山下 いえ。お構いなく。
岩村 山下、山下!まずはカッターだカッターを押さえてくれ!
山下 はあ?
岩村 あぶねーだろ、カッター!
山下 なんで自分だけそんな遠くにいるんだよ!
岩村 刺されたらどうすんだよ、俺が。
山下 はぁあ? 
岩村 だって、俺が呪われてんだろ?さぶちゃんじゃなくて。あぶねーじゃん、俺。
芽衣子 呪ってないわよ。愛しているのよ。
岩村 はいはいそうでした。
山下 あのう、芽衣子さん
芽衣子 はい
山下 なぜその、カッターを。
芽衣子 カッターを使わないと愛せないので
山下 え、あ、そうですか。じゃあ、あ、そうだ。なんでサブちゃんを、愛している?のですか?
芽衣子 え、わかんない。え?理由、要ります? 
山下 え、、いら、ないです……。
芽衣子 です、よね。
山下 あ、そうですね。
岩村 山下、負けるな!
山下 でも、カッターは危なくないですか?
岩村 よし、いけ。
芽衣子 でも、カッターを使わないと愛せないので。
山下 あ、じゃあ、しょうがないですね。
岩村 おーい!
山下 やっぱり俺ごときでは無理だって!
岩村 そこをなんとか!
山下 お前んちの問題だろ!
芽衣子 あ、山下さん。ごめんなさい、愛すのが足りない。わたしこれから愛さなくっちゃ。
山下 え?これから?
芽衣子 さぶちゃん、さぶちゃん。
岩村 ああ、もう、勘弁してくれよぉ。もしさぶちゃんが怪我でもしたらどうするんだよ。

芽衣子 愛している、愛している。ねえ、どんな因果かわかんないね、あなたと出会ったのも。ここまで育ててきたのも、無駄だったのかな。うっかり頭をうったみたいに、突然ふっと思い出しちゃう。あなたと一緒に沈んでいった渦の底で、一生過ごすっていうこと。沈んだ先にはいろんなものが積もってて、なんだろうって思うと、それは言葉。わたしの人生を台無しにしたものの一切に復讐する、呪いの言葉。ああさぶちゃん愛している、愛しているあなたを愛している。

山下 って、また、呪い始まっちゃって。初の呪い遭遇だよ、俺。
あや それってでも、呪いっていうか、
山下 え、なにが
あや 愛なんでしょ。
山下 え?
あや 愛だって言ってるじゃん。愛だよ。
山下 ええ、まあ、愛だっていってはいるけど、でも超怖いんだよ。カッター持ってるし。
あや 愛されてんのね、岩村さん。
山下 え?なんでそうなんの?
あや そうでしょ。
山下 いや、全然わかんないけど。
あや まあ、いいけど。


2-2 自宅/問答

岩村 山ちゃん、どうにかしてくれよ。
山下 どうにかっていったって。
岩村 どうみても呪ってるだろ。このままだとサブちゃんが!
山下 原因わかんないのかよ。
岩村 わからん。
山下 そういえば、さっきお湯とか旅行とかいってなかった?
岩村 え、ああ、旅行の話か。こないだ旅行いこうとしてて芽衣子が宿とったんだけど、ペット不可のとこでさ、サブちゃんいっしょに行けないじゃんってなって、行くのやめたんだよね。だってサブちゃん一人で留守番なんてさみしいじゃん。
山下 え?それじゃね?
岩村 なんでそんなことでサブちゃんが呪われなきゃなんないんだよ。
山下 だから呪われてるの、お前だって!
岩村 え、なんで俺が呪われるんだよ。
芽衣子 だから呪ってなんかいませんって、なんでわからないのよ。愛しているんじゃない。
山下 そうですよね、芽衣子さんはそうです、愛しています、サブちゃんを!
芽衣子 そうよ、何がいけないの。
山下 なにもいけなくはないです。芽衣子さんはサブちゃんに愛情を注いでいます。
芽衣子 そうよ、あなたには関係ないでしょ。
山下 そうですね、でも芽衣子さん、なんで愛さないといけないんですか。
芽衣子 何を言っているの?
山下 サブちゃんのこと、そこまでして愛さなくてもいいんじゃないですか?
芽衣子 どうしてそんなことをいうの。私はサブちゃんを愛しています。愛しているから、愛しているの。わたしがどれほどサブちゃんのこと、かわいがって手間かけて世話してきたか、あなたは知らないじゃない。
あや いいじゃない、本当のことを言ったら。あなたが愛しているのはサブちゃんじゃなくて岩村さんでしょ。
山下 なんであやがはいってくるの
あや あなただけじゃ頼りないから。
岩村 話が全然見えないが、芽衣子、いいたいことがあるならはっきり言えよ!
山下 ちょっと黙ってて。芽衣子さん、一度、愛するのをやめてみませんか。愛さなくっていいんです。

芽衣子(チワワに) 
サブちゃん。あの人の愛するさぶちゃん。あなたに落ち度は何一つないけど。ご飯に散歩にうんちの処理に全部やっているのは私。でも私が育ててるサブちゃんをあの人はかわいがって、喜んでる。いっつも楽しいところだけとっていく。私のことは視界にも入れずに、サブちゃんだけをみている。馬鹿な人。サブちゃんはいつまでも当たり前にかわいくてあったかくてフワフワしてると思ってる。それは私が世話を焼いてるからなのに。あの人は知らん顔でただかわいがっている。今日の朝、サブちゃんにドッグフードを上げようとしたら、軽く私の右手をかんで待ても聞かずに食べ始めた。この犬、私のことなめてるなってわかった。ねえ、サブちゃん。私のこと自分よりも下に見てるのばれてるからね。
あの人の心を私から奪ったらあんたはもうおしまい。朝のご飯もやらない散歩にも連れて行かない。毛はもじゃもじゃでよだれが張り付く痩せたあばらに目ヤニのたまった目ではあの人に愛されることもなくなるだろう。あんたがあの人の関心を集められるのはその可愛さ暖かさ柔らかさのおかげなんだから。愛玩動物って不幸だね。世話されないと不幸だね。でももう私だけつらい目に合うのはうんざり。もういいや。我慢するの止めたい。傷つけられた分より多めに痛手を与えてやる。存在を呪ってやる。(カッターを振り上げる)

岩村 もうやめてくれ!俺が悪かった!

芽衣子 うるさいうるさい!あなたは犬に癒されるだけ癒されて私に触れるのを避けてる。あんなに私に言い寄って結婚したのに今では手も握らないじゃない。そうやって私の居場所をこの家から奪っていく気なの?あなたの心が私の居場所なのに作り笑いにも気づいてくれないの?もうなにもかも嫌だ。終わりにしてやる!

山下 危ない!サブちゃーん!!
岩村 逃げろー!

芽衣子 サブちゃん、どうして逃げないの。(見つめあう芽衣子と三郎)
三郎 ワン、ワン、ワン!
芽衣子 まさか、サブちゃん
三郎 クウーン(愛情を示す)
芽衣子 そんな、まさか、私のことを。愛してくれてたっていうの。
ごめんね、さぶちゃん。わたしが悪かったわ。ごめんなさい。私が間違っていた。全部あなたのせいにして。そんなことでは何も解決しないってこと、わかってたはずなのに。ごめんね、さぶちゃん。今度は一緒に、おでかけしようね。


3-1 山下家

山下 ていう、かんじで、一応、さぶちゃんは呪いから救出できたっていう。
あや ああ、そう。
山下 なんか突然劇的になってびっくりしちゃった。
あや あー。
山下 なんかふたりに振り回されたなあ。まあ、あいつらがそれでうまくいくならまあいいか。一応仲直りできたみたいだし。
あや ……。
山下 え、何。
あや 別に何も。
山下 あれ、飽きた?この話。
あや 別に飽きてないけど。
山下 なんかまた怒ってる?
あや またって何?
山下 いや、
あや っていうか怒ってないけど
山下 え?

あや ああ、そういえば、なんか、前にさあ、仕事疲れてて、夜ご飯、もうお弁当でいいよねってなってさ、私がほか弁でのり弁買ってきてっていってさ、買ってきてくれたはいいけど、ソースと醤油選べるじゃない?私さあ、いつも魚のフライは醤油で食べるのに、アジとか。絶対ソース貰ってくるの。しょうがないからさあ、家の醤油かけるわけ。だからさ、ソース余っちゃって、なんか、いっぱい溜まっちゃってるんだよね、冷蔵庫の隅に。使わないで捨てるのもあれかなーって思って、とっとくんだけど、やっぱ使わないっていう。あれどのタイミングで捨てればいいんだろうって、え?どうおもう?

山下 え、ちょ、ちょいちょい。なにそれ、それ今関係ある?
あや え?え?何が?
山下 え。怒ってんのと関係、ある、それ。ソース。

あや 何言ってんの?だから、怒ってないし。さっきからいってるけど、っていうか、もう何度目かもちょっとよくわかんないけど、ずーっと入れっぱなしなわけ。え?ティッシュだよティッシュ。多分さあ、花粉の時期とかにポッケ入れて、そのあとずっとね。いれっぱで。そうするとさあ、使えばいいけど、使わなかったらずっと入れっぱなしで、最後それ入れっぱなしだったらどうなるっていうと、ね、洗うよね、誰が?私だよねえ。するとどうなるって、あーあ、大悲劇が起きるよね。

山下 あ、そういうこと、わかったわかった。もう、謝ったじゃん。やり直しの洗濯、俺がやったし。
あや え?今更そんなことで怒るわけないじゃん。
山下 違うの?

あや 違うよ、だからね、朝、早く出て、夜、遅く帰ると、変わっていることと変わっていないことがあって、変わっているのは、テーブルの上にデリバリーの空いたプラスチックのケースがあったりとか、冷蔵庫の麦茶が残り1.5センチまで減っていることとか、シンクの中にお茶碗とお椀とお箸が一セットあることとか、変わっていないのは、明かりがついていることとか、部屋の窓が開いてカーテンが揺れてることとか、ひとり布団で寝てる人がいることとか、なんかそういうことが変わっていないんだけど、なんかもう遅いからさ、お風呂入って寝ようかなと、そうやってお風呂入ると、シャンプー切れてて、なんかああ、シャンプーはなくなっちゃったんだなあって思うけど、もうびしょびしょだし、ストック取りに行くの面倒だし、ボディソープで髪洗っとくかって、洗うとそれなりにキシキシして絶対失敗明日髪爆発ってわかってるけど、もう眠いし、いいやってなって、むりやりコンディショナーして、これでいいことになるような気がするし、実際翌朝にはなんかそれなりに毛先だけビョンビョンくらいでどうにかなったから、まあいいやってなって、それで、次の日もまたシャンプー切れてるんだけど、もう面倒くさいから次の日もボディソープでシャンプーして、毛先ビョンビョン、もはやビョンビョンでいいやってむしろビョンビョンしてるのが普通なのかもって思ってくるっていうか

山下 ちょっとまって!ずっと何を喋ってるの?全然話関係ないじゃん。シャンプーとか。俺、関係ないでしょ。

あや え?何が?
山下 俺のせいじゃないよ。
あや え、あたし、なんか言ってた? 
山下 え?どうしたの?なんかいろいろ言ってたじゃん、ソースとか、ティッシュとか、シャンプーとか。
あや 何にも言ってないけど。どうしたの。
山下 え?あれ?そうなの?いやでも。
あや 気のせいだよ
山下 え、気のせい?俺が変なの?
あや そうだよ。夢でも見てたんじゃない?

 

3-2 その後

芽衣子 (チワワに)
あー、さぶちゃん、さぶちゃん、見つめ合ってるね。あたしとさぶちゃん、見つめ合ってるね。運命はぐるぐる回る車輪のように、あなたと出会って恋をして、さまざまに骨をおって、苦労に身をすりへらしたのに、今度は別の生活に入って行こうとしている。

山下 で、その後どうよ。
岩村 いやなんかすっかり、さぶちゃん元気になってさ!家のなか走り回ってるよ。
山下 よかったじゃん
岩村 まじで、山ちゃんのおかげだわ!山ちゃんさまさま!
山下 いやいや、大したことできんかったけど。
岩村 それでさ、ちょっと聞いてほしいんだけど、夜間尿あったじゃん、夜間尿。最近夜に2回、行くようになっちゃってさ、前は1回だったんだよ、1回。今、2回。で、あんまりにもひどいから、病院行ったのよ恥を忍んで。でも原因わかんなくてさ。しかもさ、夜間尿のせいで寝不足続きで、みてこれ、にきび、肌荒れしてきちゃってさあ。あと口内炎、なんか寝不足でなるっぽいんだよ。あんまできないのに、急にできちゃって、舌の付け根とかにもあるから飯食うといてーし不便だよ、どうしよう夜間尿。山ちゃん、夜間尿対策何してる?
山下 なんもしてないよ、それ大丈夫か?
岩村 本当だよな、この年でこれだぜ?60代とかになったらトイレで暮らすしかねーよ。
山下 そういう問題じゃなくて。
岩村 え?どうゆう問題?
山下 それって、呪いじゃない?

あや
あなたの目が嫌。あたしのことを見ているようで見ていない。それでいて、他の誰かを見ている時、その目に光が宿るのがムカつく。何にも見えなくなっちゃえばいいのに。あなたの指が嫌。爪垢が溜まった指先をみるとゾッとする。そんな指であたしにさわんないでね。指を一本ずつ折ってやりたい。それはやりすぎか。指十本全部深爪になればいい。あなたの歯が嫌。1ヶ月掃除してない便器みたいに黄ばんじゃって。コーヒーの飲み過ぎじゃないの?虫歯と歯槽膿路と知覚過敏の三重苦になればいいのに。あなたの唇が嫌。小学校にあった遊具の古びたペンキを思い出す。カピカピに乾いてひび割れて。ビタミンが足りないのよ。そうとは知りながら肉ばっかり食わせてやる。あなたのへそが嫌。覗き込むと怖い。蟻地獄かよって思う。奥に黒々しているのは血の塊なんじゃないかと思う。耳かきで荒っぽく掻き出して、2〜3日腹痛になればいい。

芽衣子(チワワに)
ねえ。さぶちゃん。おっきくなったね。あなたがうちに来た時のこと覚えてる?どっちから言い出したかもう忘れちゃったけど、犬でも飼おうかって。二人でいても、間がうまんないって感じだったから、あのときは。だからあなたがきてくれてよかった。ペットショップであなたを見た時、忘れられない、あなたの目を見たの。ね、あなたの目、「あ、この人、わたしとおんなじだ」って、「人生が孤独だってわかってる目だ」って。そんな目だったのね。なんか。だから、あなたにしたの。おかしいね、あの人も同じだと思ったから、結婚したんだけどね、もう、別のとこいっちゃったなって。あの人からしたらあたしがいっちゃったって思ってると思うけど。

山下 今日の夕飯どうしよっか。
あや カレーとかでいいなら、材料あるよ
山下 カレーかあ、カレーもいいけど、たまには食べに行ってもいいかあ。
あや ふうん。そっちの財布から出してくれるならいってもいいけど。
山下 まじか、うーん。でもいいか、たまには。俺もちで。
あや えー。給料日前なのに大丈夫なの?

芽衣子 (チワワに)
あのときのことをあたしは絶対に忘れない。あのとき、一瞬の表情であたしわかっちゃった。「裏切られたな」ってね、どっちがだよ。向こうも、「あっ、俺いまやばい顔しちゃった」って気づいたんだろうね、すぐさまいつもの、申し訳なさそうな、情けない笑顔つくってさ。あたしに、こう言った。

山下 大丈夫だよ
あや 大丈夫ってなに

芽衣子 (チワワに)
その日からはもう、渦に飲みこまれちゃった感じで、気づいたら、なんか、底、みたいな、あ、これ底だよね、あたしたちいるの。でも二人ともそれを口には出さなくて、なんかもう、ちゃんとした、会話ができなくなってて、いや、当たり障りのないことはしゃべるよ。旅行の話、温泉の話、アジフライのソースの話、あの日の夕焼けの話。あなたが花粉症で目薬をさすのが下手な話、ボディソープで髪を洗った話、ドアを開けると部屋のカーテンが揺れてた話。ね、だから、会話?はしてるね。会話はしてるの。でも、ね、さぶちゃん、沈黙って二種類あるって知ってた?ひとつは言葉が一言も話されてない時、もう一つは無意味な言葉がただずっと喋り続けられてるとき。だって。もうじゃあずっと喋ってようか。ね、べらべらべらべら。あなたあなたあなた。あなたの何を恨んでいるか、あたしもう忘れてしまいたい。ただただ空虚な言葉によってあたしたち、まるごと上書きしてしまいたい。そうしてあたしたち、一緒に言葉によって飲み込まれてさ。最後は、ね。沈黙。

END


20211107みんなたくさん書いてきたの巻

20211107参加者、稲垣、桐澤、丹澤、南出、木嶋

 

南出、丹澤、いる。

稲垣、入ってくる。

 

稲垣

いやー、ね、いやー、

 

丹澤

どんなテンションだよ、

 

稲垣

いや、全然書けなくてさ、戯曲、

 

丹澤

わたしめっちゃ書けたよ、

 

南出

僕も書いてきた、

 

稲垣

すごー、いや、なんか全然あれなんだよね、苦しんでた、一週間、戯曲のこと考えてもすぐ俳句のこと考えちゃって、

 

南出

めっちゃ俳句にはまってるやん。

 

桐澤、入ってくる。

 

稲垣

ウスウス

 

桐澤

うすー、

 

・ヨガする。

・先日見た徹平さんの日本舞踊落語の話する。

 

桐澤

日本舞踊一時期習っていたけど、すごいインナーマッスル使って大変やったよ、

着物であまり見えずらいけど、やってる人本当にすごいねん!

 

みんな

そうなんやー

 

稲垣

着物ってすごい重いし、稽古の時着れなくて、本番でいきなりその重さやから大変らしいよ、撤平さんが言ってた。

 

みんな

すごいなー、

 

稲垣

なんか、五反田怪談見に行って、普通にエピソード怖くて、

 

南出

あー、俺も行ったことあるかも

 

桐澤

わたしもあるわ、

 

稲垣

普通に怖い話するけど、良い?

 

南出

え、今するの?

 

稲垣、怖い話するけど、全然みんな怖がらない。

 

稲垣

え、怖くないの?

 

みんな

え、うんいや、怖かったよ、

 

稲垣

五反田怪談、最後の演劇っぽい話、語り手が演じ手になって、演じ手が語り手になるっていうのが、スムーズというか自然というか、すごかった。

 

桐澤

すごいよね、チェルフィッチュの切り替わり方とまた違うよね、

 

稲垣

ちょっと申し訳ないんだけど、先日、鴇田智哉さんとオルガン同人のメンバーで行われた俳句講義がめっちゃ面白かったから共有していい?

 

みんな

え、うん、いいけど、

 

  • 俳句講義が行なわれる。

1、簡単な言葉にする

2、逆を考えてみる。

3、主語を気にする。

4、見えた気がしたものを読んでみる。

 

この四つの要素に従って、作られた句の添削していくという鴇田さんの講義をそのまま伝えようとしたけど、みんなそれぞれの納得の仕方や見方があって、大変良い時間になりましたとさ。

ちょっと全部ちゃんと書きたいけど、長くなるので、、またちゃんと機会あればまとめますわ。

とにかく俳句ってめっちゃ面白いって内容です。

 

 

みんな

いやー、すごい、おめでとう、楽しかった、今度、句会しよう、ていうか今日句会しよう。

 

稲垣

え、じゃあ今日句会しようか、時間余ったら、

 

みんな

ういーす、うすうす、

 

稲垣

じゃあ、まあ、書いてきたの読むか、南出君の読むか。

 

  • 南出君の書いてきたものを読む

 

シーン①岩村・山下

 

岩村

犬、知ってる?犬、飼ってるんだけど、可愛いよ、犬、三郎って名前なんだけど、チワワなんだけど、白い、ちっちゃい、犬、飼うまでは、全然興味なかったんだけど、サブちゃん、飛びかかってくるからね、玄関開けると、はっはっはっは来るからね、もうさ、超ラブリーよ、ちょっと臭いけど、ちょっとなんかドッグフードの匂いと電車の椅子みたいな生地のソファが湿気てカビくさくなったみたいな臭いと、口の臭さと皮膚の匂いとが混ざった感じの臭さあるんだけど、その臭さも含めて超ラブリーよ、もう気分もラブリーだもん、気分も世界もラブリーだもん、犬いると、犬、いいよ、犬、飼いなよ、俺、サブちゃんの話してるだけで、ちょっと元気でるもん、にやけてきてるもの、今、あ、そう、あとね、犬ね、あったかいから、どこ触ってもあったかいから、特に腹、あ、でも足もいいよ、コリコリしてて、でもやっぱ腹ね、フニフニしてて、いやー、すごいよ、犬、あ、犬じゃない?、正直この世の中で、って言うかこの世界で、一番あったかいものって犬じゃない?って今思ったんだけど、どうかな?

 

山下

うーん、どうだろう、

 

岩村

って言うか、むしろ、世の中にあるあったかいものって実は犬だけなんじゃない、

 

山下

や、だって、肉まんとか、

 

岩村

いや、わかるよ、肉まんとかあったかいのわかるよ、だけど本当は実のところ肉まんは冷たいんじゃないかね、って、カモフラージュのあったかさってのがあって、犬の腹のみが真のあったかさなのではなかろうか、って、

 

山下

うーん、ホットミルクとか、

 

岩村

それはもう、熱いじゃん、ホットじゃん、あったかくないじゃん、

 

山下

あったかいけどなあ、

 

岩村

いや、わかるよ、肉もんもホットミルクもホットレモンもホットコーヒーもあったかいのわかるよ、

 

山下

あと、コタツとか、

 

岩村

そう、コタツもね、あったかいよね、電気毛布も電気ストーブもガスストーブも、

 

山下

あと、お湯ね、

 

岩村

そうだね、お湯ね、あー、お湯、お湯かー、お湯、は、あったかいわ、むしろ犬よりお湯の方があったかいかもしれない。

 

山下

ごめん何の話?

 

岩村

温泉行きたいね、

 

山下

行きたー。

 

   スタバのコーヒー飲む

 

岩村

犬、呪われてんだ。

 

山下

は?

 

岩村

犬、サブちゃん、呪われてんだ。

 

山下

え?は?呪われてるって何?

 

岩村

最近鳴き声に元気がないんだ。

 

山下

え?は?呪われてるって誰に?

 

岩村

妻に。

 

山下

妻に?

 

岩村

温泉行きてー、

 

山下

温泉は行きたいけど、

 

岩村

山ちゃんが温泉なんて言うから温泉行きたくなっちゃったじゃない。

 

山下

温泉はイワムラーが言い出したんだよ、急に。

 

岩村

あ、そうか、山ちゃんはお湯って言っただけか?温泉とか行く?

 

山下

うーん、行きたいんだけどね、ほら、妻がね、あんまり好きじゃなくてね、

 

岩村

あー、妻ね、温泉好きじゃない妻っているよねー、

 

山下

温泉というより旅行が好きじゃないんだよね、

 

岩村

あー、いるいる、旅行が好きじゃない妻っているよねー、

 

山下

だからむしろ、どこでもドアが欲しい、犬よりもむしろどこでもドアが欲しい。

 

岩村

どこでもドア?

 

山下

どこでもドアでドアトゥドアで温泉行きたい。

 

岩村

めっちゃお湯好きじゃん。

 

山下

旅行なんて本当良いことないよ。

 

岩村

あー、それかも。

 

山下

え、何が?

 

岩村

犬、呪われてる理由それかも。

 

山下

ん、犬、呪われてる理由それ、ってどれ?

 

岩村

旅行旅行、

 

山下

あー、えっ、そもそも犬、呪われてるってどういうこと?

 

岩村

見ちゃったんだよね、

 

山下

うん、

 

岩村

夜、俺いつも十時に寝るんだけど、いつも妻は俺より寝るの遅くて、いつ寝てるのか俺先に寝ちゃってるからわかんないんだけれども、夜、トイレ行きたくなって目覚めて、あ、夜間尿ってあれらしいよ、一回でも寝てる時目覚めてトイレ言ったら夜間尿なんだって、ラジオで言ってた、膀胱衰えてるんだって、いや、最近膀胱ひどくてさ、尿漏れとか、ある?

 

山下

尿漏れはないよ、

 

岩村

えー、何、トレーニングとかしてるの?

 

山下

や、尿漏れの話どうでもいいよ、

 

岩村

お前尿漏れの話結構大事だぞ、今後の人生に関わる話だぞ、

 

山下

犬、呪われてる話聞かせて。

 

岩村

あ、そうそう、サブちゃん、かわいそうに、サブちゃん、なんか見ちゃったんだよね、夜間尿で起きた時、妻、犬、呪ってるの、なんか微かに音聞こえてきてて、隣の部屋から、隣の部屋、あれなんだけど、なんて言うの、横にスライドさせるドア、なんて言うの?

 

山下

ふすま?

 

岩村

ふすま、なのかな?、ふすま、さ、ちょっとさ、そーっとさ、開けてさ、開けたら妻、いてさ、

 

   芽衣子、いる。

 

岩村

なんか、ブツブツ言っててさ、

 

芽衣

ブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツ、

 

岩村

うわー、なんかブツブツ言ってるーって思って、

 

芽衣

ブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツ、

 

シーン②メデイア呪い

 

(メデイア、チワワと向かい合う)

どんな因果かわかんないね、あなたと出会ったのも。ここまで育ててきたのも、無駄だったのかな。うっかり頭をうったみたいに、突然ふっと思い出しちゃう。あなたと一緒に沈んでいった渦の底で、一生過ごすっていうこと。沈んだ先にはいろんなものが積もってて、なんだろうって思うと、それは言葉。わたしの人生を台無しにしたものの一切に復讐する、呪いの言葉。

 

あなたの目が嫌。あたしのことを見ているようで見ていない。それでいて、他の誰かを見ている時、その目に光が宿るのがムカつく。何にも見えなくなっちゃえばいいのに。あなたの指が嫌。爪垢が溜まった指先をみるとゾッとする。そんな指であたしにさわんないでね。指を一本ずつ折ってやりたい。それはやりすぎか。指十本全部深爪になればいい。あなたの歯が嫌。1ヶ月掃除してない便器みたいに黄ばんじゃって。コーヒーの飲み過ぎじゃないの?虫歯と歯槽膿路と知覚過敏の三重苦になればいいのに。あなたの唇が嫌。小学校にあった遊具の古びたペンキを思い出す。カピカピに乾いてひび割れて。ビタミンが足りないのよ。そうとは知りながら肉ばっかり食わせてやる。あなたのへそが嫌。覗き込むと怖い。蟻地獄かよって思う。奥に黒々しているのは血の塊なんじゃないかと思う。耳かきで荒っぽく掻き出して、2〜3日腹痛になればいい。

 

シーン①岩村・山下

山下

それさー。犬が呪われてるんじゃなくない。

 

岩村

え、どういうこと

 

山下

呪われてるのさ、多分、お前だよ。

 

 

シーン③

 

山下 ていう、うけるよね。

 

あや え、あ何が?

 

山下 え、びっくりじゃない?犬呪われてると思ったら、自分が呪われてたっていう。

 

あや あー。

 

山下 え、どうしたの。

 

あや え、別にどうもしないよ。

 

山下 なんかまた怒ってる?

 

あや またって何?

山下 いや、

 

あや なんか、前にさあ、仕事疲れてて、夜ご飯、もうお弁当でいいよねってなってさ、私がほか弁でのり弁買ってきてっていってさ、買ってきてくれたはいいけど、ソースと醤油選べるじゃない?私さあ、いつも魚のフライは醤油で食べるのに、アジとか。絶対ソース貰ってくるの。しょうがないからさあ、家の醤油かけるわけ。だからさ、ソース余っちゃって、なんか、いっぱい溜まっちゃってるんだよね、冷蔵庫の隅に。使わないで捨てるのもあれかなーって思って、とっとくんだけど、やっぱ使わないっていう。あれどのタイミングで捨てればいいんだろうって、え?どうおもう?

 

山下 え、ちょ、ちょいちょい。なにそれ、それ今関係ある?

 

あや え?え?何が?

 

山下 え。怒ってんのと関係、ある、それ。ソース。

 

あや 何言ってんの?だから、あの日さ、空がきれいだったんだよね、夕焼けがまだ夕焼けじゃなくって、赤とオレンジと青が全部あって、雲はゆっくり流れていて、わたしはビニール袋を持っていて、中に入った大根がじわじわ重くなっていて、ああ、きれいだけど、腕痛いし、早く帰りたいなあ、みたいな気持ちもあって、でも帰ったころにはもう夜になっちゃうかって、だから、大根は重いけど、わたしもゆっくり歩いて帰ったほうがいいんだなあって思ったから、急ぐのやめたんだよね。

 

山下 ごめん、それ何の話?

 

あや は?だから、さっきからいってるけど、っていうか、もう何度目かもちょっとよくわかんないけど、ずーっと入れっぱなしなわけ。え?ティッシュだよティッシュ。多分さあ、花粉の時期とかにポッケ入れて、そのあとずっとね。いれっぱで。そうするとさあ、使えばいいけど、使わなかったらずっと入れっぱなしで、最後それ入れっぱなしだったらどうなるっていうと、ね、洗うよね、誰が?私だよねえ。するとどうなるって、あーあ、大悲劇が起きるよね。

 

山下 あ、そういうこと、わかったわかった。もう、謝ったじゃん。やり直しの洗濯、俺がやったし。

 

あや え?今更そんなことで怒るわけないじゃん。

 

山下 違うの?

 

あや 違うよ、だからね、朝、早く出て、夜、遅く帰ると、変わっていることと変わっていないことがあって、変わっているのは、テーブルの上にデリバリーの空いたプラスチックのケースがあったりとか、冷蔵庫の麦茶が残り1.5センチまで減っていることとか、シンクの中にお茶碗とお椀とお箸が一セットあることとか、変わっていないのは、明かりがついていることとか、部屋の窓が開いてカーテンが揺れてることとか、ひとり布団で寝てる人がいることとか、なんかそういうことが変わっていないんだけど、なんかもう遅いからさ、お風呂入って寝ようかなと、そうやってお風呂入ると、シャンプー切れてて、なんかああ、シャンプーはなくなっちゃったんだなあって思うけど、もうびしょびしょだし、ストック取りに行くの面倒だし、ボディソープで髪洗っとくかって、洗うとそれなりにキシキシして絶対失敗明日髪爆発ってわかってるけど、もう眠いし、いいやってなって、むりやりコンディショナーして、これでいいことになるような気がするし、実際翌朝にはなんかそれなりに毛先だけビョンビョンくらいでどうにかなったから、まあいいやってなって、それで、次の日もまたシャンプー切れてるんだけど、もう面倒くさいから次の日もボディソープでシャンプーして、毛先ビョンビョン、もはやビョンビョンでいいやってむしろビョンビョンしてるのが普通なのかもって思ってくるっていうか

 

山下 ちょっとまって!ずっと何を喋ってるの?全然話関係ないじゃん。シャンプーとか。俺、関係ないでしょ。

 

あや え?何で関係ないって思うの?

 

山下 俺のせいじゃないよ。

 

シーン②(メデイア、チワワと向かい合う)

あー、さぶちゃん、さぶちゃん、見つめ合ってるね。あたしとさぶちゃん、見つめ合ってるね。運命はぐるぐる回る車輪のように、あなたと出会って恋をして、さまざまに骨をおって、苦労に身をすりへらしたのに、今度は別の生活に入って行こうとしている。ねえ。おっきくなったね。あなたがうちに来た時のこと覚えてる?どっちから言い出したかもう忘れちゃったけど、犬でも飼おうかって。二人でいても、間がうまんないって感じだったから、あのときは。だからあなたがきてくれてよかった。ペットショップであなたを見た時、忘れられない、あなたの目を見たの。ね、あなたの目、「あ、この人、わたしとおんなじだ」って、「人生が孤独だってわかってる目だ」って。そんな目だったのね。なんか。だから、あなたにしたの。おかしいね、あの人も同じだと思ったから、結婚したんだけどね、もう、別のとこいっちゃったなって。あの人からしたらあたしがいっちゃったって思ってると思うけど。

 

あや 「裏切られた」って顔したでしょ。ね、あの時病院で。

 

山下 え、何が?

 

(メデイア、チワワと向かい合う)

子供のこと、わかったとき、一瞬の表情であたしわかっちゃった。「裏切られたな」ってね、どっちがだよ。向こうも、「あっ、俺いまやばい顔しちゃった」って気づいたんだろうね、すぐさまいつもの、申し訳なさそうな、情けない笑顔つくってさ。あたしに、こう言った。

 

山下 大丈夫だよ

 

あや 大丈夫ってなに?

 

(メデイア、チワワと向かい合う)

その日からはもう、渦に飲みこまれちゃった感じで、気づいたら、なんか、底、みたいな、あ、これ底だよね、あたしたちいるの。でも二人ともそれを口には出さなくて、なんかもう、ちゃんとした、会話ができなくなってて、いや、当たり障りのないことはしゃべるよ。旅行の話、温泉の話、アジフライのソースの話、あの日の夕焼けの話。あなたが花粉症で目薬をさすのが下手な話、ボディソープで髪を洗った話、ドアを開けると部屋のカーテンが揺れてた話。ね、だから、会話?はしてるね。会話はしてるの。でも、ね、さぶちゃん、沈黙って二種類あるって知ってた?ひとつは言葉が一言も話されてない時、もう一つは無意味な言葉がただずっと喋り続けられてるとき。だって。もうじゃあずっと喋ってようか。ね、べらべらべらべら。あなたあなたあなた。あなたの何を恨んでいるか、あたしもう忘れてしまいたい。ただただ空虚な言葉によってあたしたち、まるごと上書きしてしまいたい。そうしてあたしたち、一緒に言葉によって飲み込まれてさ。最後は、ね。沈黙。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

みんな

おおー、

 

南出

今までみんなが書いてきたのをまとめたって感じで、丹澤さんの前回書いてきたチマチマした恨みを、メデイアでなく、一般人的な綾に読ませたらどうかと。

 

稲垣

あーいいね、

 

南出

あと、呪う理由がわからないっていう問題があったので、二人の間に子供ができないのか亡くなってしまったのかっていうのを匂わせる形で入れて、メデイアのチワワに語るモノローグとオーバーラップしていくって構成にしました。

 

稲垣

いやー、すごい、一つの形としてできたって感じしますわ。

チワワに語るっていうの怖くて面白いね。

沈黙って二種類あるよね、っていう、その人にだけめちゃくちゃ信じられるものに行き着いてるのがすごくいいよね。

 

南出

あれは、ちょっとハロルドピンターのセリフを咀嚼した。

 

桐澤

丹澤さんの前に書いてきたのって、具体的だけど普遍的って感じで面白いよね。

 

南出

そうー、そこからグッと深刻なものにしたかった。

 

丹澤

あと、南出君の前に書いたのを現代語化して、わかりやすくなったというか笑えるようになった。

 

南出

これをもとに足したり引いたりしてできるかなあと。問題は岩村が空気になるってことかな。

 

稲垣

その問題ずっと前からあるよね、

 

桐澤

ちょっと、わたしは呪いの理由について書いてきたので、次読んでも良いですか?

 

みんな

オッケーオッケー

 

  • 桐ちゃんの書いてきたものを読む

 

こんな風に年を取るとは思っていなかった。今頃は郊外の一軒家、汚れの目立たない最新の壁で施工した一軒家に住んで子供は2人。下の子が3歳になったら幼稚園に預けて契約社員から社会復帰して。小学生になるころには正社員採用であの人と二人ダブルワークしてるのが私だと思ってた。子どもたちがねだったら柴犬かトイプードルを飼おうと思ってた。

服はユニクロジーユーとモードオフとトレジャーファクトリーとメルカリで循環させて、大量生産品も自分らしく節約上手のやりくり上手の腕の見せ所。そもそもそんなところに見え張らなくても私たち充実していて幸せで、生活に追われて悩んでる時間なんてないはずだった。結婚しようってプロポーズしてくれた時私はそこまで思い描いていたけれど、あの人は何考えて私に指輪をくれたんだろう。毎月給料は飲み代とゲーム課金と奨学金の返済でなくなるし。私にしたって美容院いってネイルしてまつエクしてカフェ行って、ネットで服買ってるうちになくなるし。貯金しなきゃ一軒家なんて夢のまた夢。子ども持つ気あるのって聞いたら、「そのうち、でも今じゃないよねまだそんな責任持てないしっ」てじゃあ家は?って聞いたら「郊外とか不便だからずっと賃貸でもいいじゃん」て、そうなんだ。あれなんか違う私そろそろ妊娠して、この会社も給料上がる見込みもないしそろそろ経営がやばそうだから辞めようって思ってたのにやめられないし凄い宙ぶらりんで困ってるんだけど。相談したら「とりあえず転職活動してみれば」って言ってきたよね。でも私なんか疲れちゃて適職の為のチャート記入とかエントリーシートとか見るのきついんだよね。この会社でもう一度ってやる気出そうとしても結婚してあと一年以内には妊娠してるから辞めようって思ってたからそのあとの三年は終わらない延長戦してるみたいな感じで以上に疲れるんだよ。それでミスも増えるし怒られるし。期待されないし。新人にもなめられてるし。

退職願い出した時のあいつらのほっとした顔悔しかった。先にお前ら見切ったのは私なんだよって言ってやりたかったけど逆に笑顔で感謝のスピーチしたりして。次の会社なんて決まってないのに「いつか仕事で会えたら声を掛けてください」なんて言ったよ。

不機嫌な態度で嫌悪感たっぷりに挨拶もせず去りたかった。最後の半年、無視するわミスだけ私のせいにするわ飲み会も何一つ誘わないわでじりじり追いつめてきた奴らに挨拶なんて要らなかったよね。でも、窓際に追いつめられて声もなく落下するみたいじゃんって思ったらそれが悔しくて次の会社決まってる体で半年ぶりにあんなにハキハキしゃべった。あいつらびっくりしてたけどどうせ私がいなくなったとたんに噂して笑って気持ちよく忘れていくんだと思う。結局何の爪痕も残せなかったなぁ。

あの日体裁だけの花束もなく帰ったらあなたは飲みに出かけてて私家でも独りぼっちだった。酔ってるあなたにうっかり笑顔で「お帰り」って言ったらあなたは「お疲れ様、どうだった?」って聞いてきた「うん、普通。普通に挨拶して帰ってきた」「そっか、やめられてよかったね、次の会社早く決まるといいね」「そうだね、頑張る」「うん、まあ無理せず」「うん」って会話したらすぐ寝てしまった。酔ってたしね、私も笑ってたしあんな言葉しかなくてもしょうがないよね。ああ、私家でも笑ってやり過ごしてしまった。ほんとは会社も上司も同僚も後輩も取引先もぎったぎたに罵りたかった。私の呪いで倒産して全員路頭に迷えばいいのに。って。でも言えなかった。あなたと私の幸せな結婚生活を守りたくて言えなかった。そんな言葉を使う私をあなたが受け止めてくれる確信が持てなかった。あなたは家の為でも子どもをつくるためでもなく、私を好いてくれたから。あなたと私をつなぐ線が恋愛感情だけなら本当の私を見られては行けない。って頑張ってた。

でも本当に私を好きなら結婚して何年も同じ屋根の下に生活してきたんだから、私の作り笑顔くらい見破って欲しいの。最近ずっと調子が悪いのにあの日笑顔でいるなんておかしいって、私のこと心配してほしかった。なんか私って安物のマットレスみたい。みんなが私を踏んづけてそれを当たり前みたいに思ってる。そしてわたしは言葉もなくひしゃげて反発もなくなって役立たずになって捨てられる。私を見捨てないで。あなたが結婚に夢見たときだって私は私だったんだから「こんなはずじゃなかった」なんて言い出したら許さない。2人で一緒に幸せになるっていう言葉を裏切ったらただじゃおかない。

あなたのもらってきた犬、サブちゃん。この子に落ち度は何一つないけど。最近のあなたはサブちゃんばっかりかわいがって一層私のことなんて見てない。それに、ご飯に散歩にうんちの処理に全部私がやってる。私が育ててるサブちゃんをあの人はかわいがって喜んでる。馬鹿な人。サブちゃんはいつまでも当たり前にかわいくてあったかくてフワフワしてると思ってる。それは私が世話を焼いてるからなのに。あの人は知らん顔でただかわいがっている。今日の朝、サブちゃんにドッグフードを上げようとしたら、軽く私の右手をかんで待ても聞かずに食べ始めた。この犬、私のことなめてるなってわかった。ねえ、サブちゃん。私のこと自分よりも下に見てるのばれてるからね。

あの人の心を私から奪ったらあんたはもうおしまい。朝のご飯もやらない散歩にも連れて行かない。毛はもじゃもじゃでよだれが張り付く痩せたあばらに目ヤニのたまった目ではあの人に愛されることもなくなるだろう。あんたがあの人の関心を集められるのはその可愛さ暖かさ柔らかさのおかげなんだから。愛玩動物って不幸だね。世話されないと不幸だね。でももう私だけつらい目に合うのはうんざり。

あの人は犬に癒されて私に触れるのを避けてる。あんなに私に言い寄って結婚したのに今では手も握らないよね。そうやって会社の奴らみたいに私の居場所をこの家から奪っていく気なの?あなたの心が私の居場所なのに作り笑いにも気づいてくれないの?

一人の踏み台になる人がいる。上には踏みつける人がいる。階段のように人を踏みつけてその人は幸せになる。踏み台になった人が文句を言わなければこの世界は形を保って二人の内一人は幸せになるだろう。それは50パーセントの人類が幸せになる世界。

もし踏み台が踏み台をストライキしたら?どうなる。踏みつけるやつと喧嘩したらどうなる。それは100パーセントの人類が傷つけあう世界。誰も幸せにたどり着くことができないだろう。もういいや。我慢するの止めたい。傷つけられた分より多めに痛手を与えてやる。存在を呪ってやる。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

木嶋

こわー

 

みんな

ねー、

 

桐澤

なんか前回の稽古から、一週間どういう状況なら人を呪うことができるのかってことをずっと考えていて、すき家でこれを書いてた時、子供がこっち見てきて、カッて睨んじゃって、めっちゃ怖がらせてもたもん、子供のこと、

 

稲垣

めっちゃモード入ってるやん、

 

南出

なんかすごいリアルよな、

 

丹澤

友達に仕事辞めたくて結婚したっていうやつがいて、その友達のこと思い出した。

あと、浮気とも結びつくなって感じていて、浮気って基本的に妻が夫のレベルを上げているのよ。服選んだり、髪型評価したり、奥さんと別れて、浮気相手のところ行ったら、拍子抜けされるというか、奥さんのいたあなたが好きだったわってなるパターンあるのよ。

 

木嶋

勉強になります!

 

桐澤

子供のこととか、大きな問題みたいなの入れようかなと思ったんだけど、書くのがつらかった。そうでないので恨みのリアリティ出せないかなと思って。

 

稲垣

これだけ出てくるのすごい、一週間でこんな分量書くの相当大変よね、

 

桐澤

あと、これ、パソコンの機能で機械の声で読み上げてくれるやつがあるんだけど、それやってみても面白そうだった。

 

・機械の読み上げを聞く。

 

みんな

ああー、変な感じあるよね。

 

稲垣

最初のオープニングシーンとかで、二割聞こえるぐらいでブツブツブツブツしゃべってたら面白そう、他の人のこういう長いのも何個か用意して、

 

みんな

あー、

 

稲垣

じゃあ、次は僕ので、

 

  • 稲垣の書いてきたやつを読む。

 

芽衣子、石鹸をナイフで犬の型に掘りながら、

目、深い深い黒に、光がポツンとともる。

鼻、湿った茶色のブツブツに息が出入りする。

口、ピンク、こそばゆいピンクの口。

耳、が生きている、ジャンプするように生きている。

足、優しい白で覆われている。

尾、振られる、とてつもなく揺れる。

愛してる。愛してる。愛してる。

 

岩村

て、どうやらなんか、犬のこと、話しているように感じて、一人で、

山下

こえー、

岩村

話しているっていうか、呟いてる、呟いてるっていうか、唱えている、っていうか、唱えていて、

 

芽衣

あなたが家にやってきた時、愛を感じた。

その走り回る姿、弱い吠え方に。

あなたの毛をコロコロで掃除する時、愛を感じた。

紙に張り付くおびただしい線に、私の抜け毛と混ざる様に。

あなたが膝の上にのっかかってくる時、愛を感じた。

撫でる手に伝わる優しい感覚に、生き物の動きに。

あなたと歩く散歩道に愛を感じた。

いつものおしっこポイントに、季節によって変わる光景に。

桜、朝顔、紫陽花、モミジ、スミレ、パンジータンポポ、ヒマワリ、白詰草

愛している。愛している。愛している。愛して

 

岩村

いる。愛している。愛している。って、みたいなこと、言ってて、明らかに三郎ちゃんとの思い出、言ってて、

山下

こえー、のか?

岩村

のか?って俺もなって、だけどよく見て、なんか犬の形したなんか持ってて、

山下

え、どこ?

岩村

ほら、手のとこ、左手に白いのなんか持ってて、右手にカッター持ってて、

山下

うわー、こえー、

岩村

掲げはじめて、あれが犬の形してるってわかったんだけど、その白いの掲げはじめて、愛してる。愛してる。愛してる。

芽衣

愛してる。愛してる。愛してる。

岩村

愛してる。って言いながら掲げはじめて、

芽衣

愛は眠らない。愛は滞ることを知らない。愛は読めない文字である。愛は触れられないスマホである。さようなら。ありがとう、さようなら。

岩村

って、犬の形の白いのの首のところにカッター持ってくから、

山下

えー、

岩村

やめてーって、飛び出して行っちゃったの。俺。え、なにやってるの?

芽衣

なにもやっていないよ。

岩村

なにもやっていないわけないでしょ。愛してる愛してる言ってたじゃん。

芽衣

愛してたのよ。

岩村

愛してた?なにを?

芽衣

三郎ちゃんをよ。

岩村

カッター使って?

芽衣

わたし、カッターを使わなきゃ愛せないの。

岩村

は?

芽衣

カッターを使ってはじめて愛せるの。

岩村

は、なに、カッターを使ってはじめて愛せるってなに?新鮮な言葉、新鮮な言葉使うね君、

芽衣

わかんない、わかんないんだけど、

岩村

え、なに、三郎ちゃん、殺したいの?

芽衣

わかんないって言ってるでしょ、わかんないの、あー、

 

岩村

って泣いちゃって、話通じなくて、ちょっと、あの、来てくれない?

山下

え、なに?

岩村

すぐそこだから、来てくれない、

山下

え、

 

岩村、山下を連れて、その辺を丸く歩きながら、

 

山下

え、今から、

岩村

うん、

山下

行くの?

岩村

うん、

山下

そこに?

岩村

うん

山下

いやいやいやいや、

岩村

いやー、ちょっとちょっとだけだから、

山下

無理無理無理無理

岩村

いやー、もう、ほら、こういうのはさ、第三者がさ、大事なんだから、

芽衣

あーーーー、

山下

え、泣いてんじゃん、

岩村

いや、そりゃ泣くよ、ずっと泣いてんだから、

山下

え、ずっと泣いてるの、

芽衣

あーーーー、

山下

え、俺行っても何にもできないから、

岩村

俺言ってもどうしようもないんだから。

山下

じゃあダメだよ、

三郎

ワン、ワンワンワン、

岩村

ほらあ、サブちゃんも助けてって言ってるよ、

三郎

ワンワン、ワンワン、

山下

ええー、

岩村

ただいまあ。

山下

お邪魔しまーす。

芽衣

あーーーー。あ?誰ですか?

山下

あ、山下です。友達の。って具合で、無理矢理、本当に無理矢理連れてかれてしまって、

あや

へー、

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

稲垣

個人的には南出君の前回書いてきたのを僕なりに踏襲しようと思ったんだけど、難しい言葉が出てこなくてこうなった。

 

南出

愛は眠らない、めっちゃ笑った。

 

稲垣

あそこなんかあれなんだよね、雰囲気的に愛についての名言を求められてる気がしてああなった。

 

木嶋

カッター使わなきゃ愛せないってのも笑った。

 

南出

コミカルよなー、

 

丹澤

あと山下が岩村に今から俺の家行く?って誘われて無理無理無理無理ってなるとこも笑った、そんな修羅場なとこ行きたくないよね。

 

桐澤

呪いのパフォーマンスで、石鹸を犬の形に彫るっていうの、東南アジアの文化で、スイカを彫って模様作るってのがあって、日常的に使われているものとか、人参とか、彫って形作るの怖そうだなって思った。針で縫い物してるとかも怖いよね。

 

みんな

こわー、

 

稲垣

ちなみに石けんは美堀真利ってかたの紫魔術入門って本に載ってた紫呪術を参考にしてます。

じゃあ、次、丹澤さんの読もうか、

 

南出

これは、友と女って字が似ててややこしいな。

 

稲垣

ちょっと丹澤さん、登場人物名決まったんだから頑張ってよ、

 

丹澤

すんませんー

 

桐澤

ちょっと待って、

 

稲垣

ん?なに?

 

桐澤

友と女の字が似てるってすごい、名言ぽくない?

 

稲垣

え?あ、

 

みんな

おー確かに、

 

稲垣

友と女の浮気の匂い感じるよね。

 

木嶋

いや、そんなに似てないよ。

 

一同爆笑。

 

  • なんだかんだあって丹澤さんの読む

 

友 あなたはなぜ呪いなんかしているのですか?

女 呪いをしてはいけないのですか?

友 してはいけないとは言っていません。しかし、まずは話し合うことが大事なのではないですか。

女 話し合いで解決するなら呪いなどしません。解決しないから、呪っているのです。

友 なぜ解決しなかったのですか。

女 あなたはなぜ話し合いで解決できると思うのですか。

友 人はそうしようとすれば、たがいに歩み寄ることができるはずです。

女 そうでしょうか。あなたは、人類は滅びるべきだと思いますか。

友 いいえ、思いません。

女 では、人類が滅びるべきだと信じている人間と分かり合うことができるのですか。あなたはその信念を曲げて、人類は滅びるべきと、話し合いで納得することができるのですか。

友 納得はできるかわかりませんが、その考えを理解することはできるかもしれません。理解しあう努力は必要です。あなたはその努力をしたのですか。

女 どうしてそんな言い方をするのですか。努力をしなかったのは私ですか。いいえ、しなかったのは彼のほうです。ですからこのような状況になっているのです。

友 彼はいったい何をしたのですか。

女 いいえ、彼は何もしなかったのです。彼が何かをしたならば、それについて、話し合うこともできたでしょう。なぜそうしたのか、そのなにが、私の気に触れたのか。そうであれば、私から、さらに彼に何かをして、また彼がそれに返してと、対話をすることも可能だったでしょう。しかし彼は何もしなかったのです。何もないところからは何も生まれません。

友 彼が何もしないのならあなたからアプローチをしてもよかったのではないですか。

女 そのようなことははるか昔に済ませたことです。私からアプローチをして、どうなったか。そうです、何も返ってこないのです。

友 いや、彼だって返したのではないですか。ホームランではなかっただけで、ファウルだったのかもしれません。誰しも失敗をしてしまうことはあります。

女 バットを振りもしない人を擁護するのですか。ファウルやヒットならいいでしょう。とっくにホームランなど期待していません。

友 なぜそのような相手との関係を絶たないのですか。そのほうがあなたも楽でしょう。

女 私もそう思いますが、残念ながら、人と人の関係はそんなに簡単ではありません。人には引き受けなければならない業があります。私にとってはあの人なのです。

友 そのようなことはありません。あなたのためにも、別れたほうがいいと思いますが。

女 それはできない話です。私があの人と別れたならば、あの人は喜んで生きてゆくでしょう。私はあの人が幸せになるということは受け入れがたいのです。

友 あなたは隣にいる人間が不幸でも幸せになれるのですか。あなたの話では、あなた自身が幸せに生きていくのは難しいように感じます。あなた自身のためにも、一緒にいて幸せを感じられるような人と共にいるべきです。

女 いいえ、あの人が不幸になればなるほど私にとっては幸せです。

友 そんなはずはありません。

女 それはあなたの理屈です。私にとっての幸せとあなたにとっての幸せは違います。あなたはどんな時に幸せを感じますか。

友 おいしいものを食べているときですかね。

女 ほかには。

友 休日の二度寝とか。

女 ほかには。

友 彼女とイチャイチャしたり……

女 ほかには。

友 えー。キャンプ行って星空眺めてるときとか。

女 ふつうですね。

友 いいじゃないですか、普通で。

女 私は日々が充実しているときに幸せを感じます。

友 それも普通ですよ。

女 呪いによって私の日々は充実しています。ですので、私は十分幸せです。

友 不健全ですね。

女 なぜですか。

友 人の不幸の上に幸せはあり得ませんよ。

女 どうしてですか。弱者から吸い取った税金で得た利権で肥えてる政治家は幸せそうですけど。

友 彼らは特殊な人間です。彼らは見せかけの幸せを楽しんでいるだけです。いずれ地獄に落ちます。

女 そうですか。でも彼らが地獄に落ちれば幸せを感じる人もでるかもしれませんけど。

友 それは幸せというよりざまあみろっていう爽快感でしょう。幸福感とは違うと思います。

女 どうして人の不幸で幸せを感じてはいけないのですか。昔からいうでしょう、他人の不幸は蜜の味って。

友 ですからそれも見せかけの幸せの仲間です。自分より不幸な人間を見ることで自分がその上に立って、幸せな気になっているだけです。

女 あなたは幸せを規定する気ですか。正しい幸せとそうでない幸せを、あなたが他人の分まで決められるというのですか。

つづく。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

南出

すごい、問答っぽい。

 

丹澤

NHK古典芸能へようこそでやってた能の卒塔婆小町の問答シーン参考にしました。

 

南出

急に例え出すの面白いな、ホームランとかファウルとか、

あと定型文っぽい言い回しかと思いきや、具体的な政治の話でたりして、

 

丹澤

幸せを感じる時はネットで検索した。

 

稲垣

わかりそうでわからんというか、深いのか浅いのかよくわからんというか煙に巻かれる感じありますよね。

あと、呪いによって日々が充実してくってのから、具体的な、さっきの桐ちゃんの考えてきた設定とか、呪いの経歴とか問答に入れられそうな気がした。

 

桐澤

弁護士っぽい掛け合いみたいなイメージで読んだけど、もっとフランクにもできそうなのかなって、

 

丹澤

その辺は色々いじれると思う。

 

稲垣

じゃあ、最後、木嶋さんの読もうか。

 

  • 木嶋さんが書いてきたものを読む

芽衣子は祖母の七回忌で実家に帰省中

綾 ほんとにいいの?留守中お邪魔しちゃって。
岩 いいのいいの
よっちゃんが寄ってくる
綾 犬飼ってるんだ、なんてゆうの名前
岩 よっちゃん
綾 へー
岩 ヨークシャテリアだから
綾 ああ、へー、かわいいねーでもこの毛大変じゃない?手入れとか
岩 ああ、芽衣子が月一かなートリミングに通ってる
綾 ふーん
岩 けっこうかかるの、金。大体犬なんかさー外で飼えばいいんだよー。家ん中で犬とか猫飼うのやなんだよねー

よっちゃん綾に寄ってくる

綾 わーかわいい
よっちゃん綾の手をペロペロする
岩 お前ほんと八方美人だな
綾 え?あたし?
違うよ、よっちゃん いつもは芽衣子にベッタリなくせに
綾 へーそうなんだーあ、撮って撮ってー

岩はよっちゃんと綾の写真を撮る

数ヶ月後

芽衣子 よっちゃんかわいいねースキスキ❤️チュッチュッ❤️
犬 僕もめいちゃん好きです❤️ウットリ
芽 よっちゃんチュール食べる?チュール
犬 あ、、、チュール、、、テレビで猫がペロペロしてたやつだ。
!!?ぼく犬なのにいいの??!!わー!うれしい!
芽 もうね、猫用あるんだったら犬用も早よ出せよって話しよねーよっちゃん、はいどうぞ
犬 わーー!ペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロなにこれおいし〜ペロペロペロペロペロペロ。
芽 あらあらよっちゃんったら、チュールに夢中ねー。

玄関の音 岩帰宅 ソファにドサっと座る

岩 はー疲れたー
芽 ちょっともう!よっちゃんがびっくりするじゃない!
岩 あ、ごめん ゲップ
岩はテレビつける
芽 やだもーまた飲んできたの?
岩 うん
芽 誰と?
岩 山下
芽 ふーん、あ、綾さんって二人目できたんだって?
岩 ああ、そうそう
芽 そっかーおめでたいね
岩 ああ
芽 家族が増えるっていいよねー
岩 ああ
岩はチャンネルを変える
芽 ま、いっか、うちはよっちゃんがいるし
岩 ああ
芽 、、、さてっと、お風呂に入ろうっと
岩 ああ

岩とよっちゃんは二人きりになる
よっちゃんはまっすぐ岩を見ている岩は視線を感じてよっちゃんをみる

岩 お前はいいなー、クッチャ寝クッチャ寝で

よっちゃんは岩を見つめたまま近寄る岩はよっちゃんを抱っこする
よっちゃんは澄んだ目で岩を見つめる

岩 よっちゃんやめてくれる?そういう目で見るの
犬 いや別に、ただ見てるだけですよ、お酒臭いなーて思いながら、他意はありません
岩 この間の事、内緒だぞ!
犬 ああ、寝室のベット使った事ですか?言いませんよ、めいちゃんに呪い殺されますよ
岩 呪いって何よ
犬 岩さんだけじゃないですよ。
岩 え?
犬 ぼくだって、、、
岩 なんで、よっちゃんまで呪うのよ
犬 この間、写真撮ったでしょう?綾さんと
岩 ああ撮ったね
犬 僕誰にでも愛想良くしちゃうからさ、あの写真発見されたら僕の立場やばくないですか?
岩 確かに笑 いつもめいちゃん命!って感じなのにね
犬 僕はただあの時、愛想良くしてチュールくれないかなーって思ってただけなんですよ?それなのになんかラブラブみたいに撮られてちゃったから不本意と言うか。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

爆笑の渦が巻き起こる。

 

みんな

すごー、

 

木嶋

犬殺した方が良いのではと思って、あと、自分が可愛がってた犬が旦那の方へ行くってので書いてみました。

 

南出

独特すぎるなー、

 

稲垣

チュール面白すぎる。

 

丹澤

綾と岩できてるよね、めっちゃドロドロやん。

 

桐澤

あと、犬が岩村のことを岩さんて呼ぶのめっちゃええよな。

 

南出

犬普通に喋ってるの面白すぎるな。

 

桐澤

しゃべる犬の前で浮気するってこと?

 

稲垣

犬が芽衣子とは言葉通じず、岩さんとだけ言葉が通じてるから、謎で面白い。

クレヨンしんちゃんのヘンダーランドの冒険に出てくる、ス・ノウ・マンっていう、雪だるまの格好してて、みんな普通に接してるのにしんちゃんだけが違和感感じまくってるていう怖いやつをなんか思い出した。

 

  • で、どうするか悩む。

 

稲垣

へー、みんなすごいね、もっと足りなくて悩む感じかと思ったらありすぎて悩む感じになってきたね。

ま、ちょっとまとめるか。

 

以下、まとめたの

 

f:id:romantist721:20211107235935j:plain



 

稲垣

南出君が書いてきたの、ほぼ完成しているのをAパターンとして、今までの流れを主に組んでいるのがBパターンって感じですかね。

大きく違うのは、子供の問題があるかどうかと、呪い問答があるかどうかだよね。

 

南出

問題がないと難しくないかなーと思って、

 

稲垣

逆に、前回までのダサいねーって距離とられるって綾のあり方も面白いと思っていて、前回の丹澤さんのモノローグがかぶってくみたいなのも結構面白いと思ってる。テンション上がるというか。子供の問題が出ちゃうとそっちに舵がいっちゃうて気もする。

 

丹澤

わたし的にはもっとぼかしたいって気がする。そういうのが隠れてあってもいいよなーって、病院とかも出さずに、

 

桐澤

メデイアの異質さっての大切にした方がいいよね、

 

南出

メデイアの孤立してる感というか、異質な感じを出すのと、問答に入るとちょっと人と対話ができるレベルにいるってなるのも難しいなーと思う。

 

桐澤

丹ちゃんの書いてきたのって、男が演じても女が演じてもって感じあるよね、人対人っていうか、

 

南出

様式美的なものあると思う。

抽象的世界って感じで、そこにジャンプする何かが必要かなと。

 

稲垣

山下のセリフをナチュラルなものに変えることも可能よね?

 

南出

山下って、理屈っぽいやつじゃないと問答のシーン成立せんのでは?

もっともっぽいこと言ってるけど何もわかってないというか

 

桐澤

反対に岩村は無邪気にわかってない感あるよね、

 

みんな

あー、

 

桐澤

メデイアは異質やけど、一般人的な綾の方も呪う一歩手前感あるよね、タンちゃんの活かすと。

 

と、まあなんだかんだあり、桐ちゃんの呪いの言葉をブツブツ言うのはオープニングシーンで使えるのではないかという話になる。

 

丹澤

演劇っぽーい、

 

稲垣

ここで僕は提案するのは、橋幸夫ジェンガに合わせてステップ踏みながら登場するていうのはどう?演劇っぽさをなくすため、

 

桐澤

いや、むしろそっちのほうが演劇っぽくない?

 

みんな

そうだそうだー

 

稲垣

えー、

 

南出

でもオープニングでブツブツ流れるのいいかもね、

 

稲垣

あと、これあると、細かいなぜ呪うのかってところをなんとなくわかるので、無理に頑張って入れなくても成立するのではないかと、

 

みんな

あー、

 

と、まあ、いろいろ議論は深まる。

 

稲垣

僕の気持ち的には一旦それぞれ持って帰って、南出君みたいにそれぞれの筋を通して見せ合って、誰のをもとにしてつくるか決めたいかなあと。

 

みんな

うーん、もっと詰めた方がいいのでは?

せめて結末だけでも決めた方が良いのでは?

 

なんかいろいろあって、

 

稲垣

いや、まあ、ここは各々で、好みの問題もあるし、多分完成しないと判断できない要素が大きいと思う。

 

丹澤

全然違う形になってもいいってこと?

 

稲垣

いいよいいよ、各々の一番納得いく形を持ってきてほしい、今あるやつを編集してもいいし、キャラのつじつま合わせとかもしたり、どういう結末にするかとかも含めて、

 

みんな

ういっす

 

稲垣

とりあえず、今日書いてきたの通そうか、aパターン、bパターンで、

 

  • 通す。

稲垣がaパターンの録画失敗したから、aパターン二回する

 

木嶋

面白かったよ。

どっちもやったらいいじゃない。

 

みんな

えー、

でもやってみてわかることあるよね、

 

稲垣

帰る、それともここから句会を始めるか。

 

みんな

いや、帰るわ、しんどいわ、

 

稲垣

えー、

じゃあまあ、帰りましょうか。

 

みんな掃除して去る。

民芸の話で盛り上がった。

 

次回宿題

各々で最後までの筋を考えてくる。

 

 

 

 

 

20211030 書いてきたやつ読んでみるやってみるどうするか考えてみる

20211030 13:30~19:00 @巣鴨第一区民集会室

参加者 稲垣、丹澤、南出、木嶋、桐澤new!!

 

 

南出 こんにちは。あっ

桐澤 はじめまして

南出 はじめまして

 

本日から桐澤さんが参加

 

稲垣 南出君、とりあえず休憩しよ。

南出 なんで二人は疲れてんの

丹澤 調子悪いねん

稲垣 土曜の朝から予定あるとしんどいんよな

 

初対面の二人が自己紹介、そしてゆるゆるヨガ

 

なんとなくはじまるワークショップゲーム。ボール投げたり、木になったり歩いたりする。

 

木嶋 おはようございます~

   あっ木嶋です

桐澤 あっ桐澤です

二人 よろしくお願いします~

 

自己紹介ふたたび。

 

桐澤 去年くらいから宝塚にハマってて~

稲垣 踊るやつみたことあるな

桐澤 レビューだね。トップスターから期待の新人まで、幅広く楽しめるんだよ~

   今度忠臣蔵、やるんだよ~

丹澤 おお、この間私たち歌舞伎の四谷怪談みたんだ。四谷怪談忠臣蔵の裏鏡になってるんだよね。なんかつながってくな~

 

稲垣 さて、やりますか

木嶋 わたしも書いてきたよ~

一同 おおー

稲垣 じゃ、木嶋さんのから読もうか。

 

Aあたし、浮気しても良いかな?

B、、、へ?え、、?

Aいい?浮気。

Bいや、、、、ええ?

A二択

Bに?にた?、、く、、いや、ええ?

Aいいの?だめなの?どっち?

C浮気してもいいかダメかどっちって聞かれたらそうだねー、ふつうはダメって答えるけど人によっては

Bダメダメダメ!

Aだめかー。

B何言ってんの?!ダメに決まってるでしょお!

C心狭いね。

Bえっ?

Aほんと、ほんと。

Bえ、なに、ぼく?僕が悪いの?

C悪くはないけど、人それぞれだからでも

 

ーなんだかんだあってー

 

Aやっぱダメだってー

Dえー心狭くね?

Aなんかそんなことしたら呪うって言ってた。

Dええー呪うの?だっせー。

A呪うってどうやって?聞いたら、

D笑人形。

Aそう藁人形ね。で、おまじないするって。

Dおまじないって笑人形で?かわいいー

 

 

稲垣 C、誰なんだ

木嶋 わかんない

稲垣 木嶋さんどんな書き方してんだ……

南出 なんだかんだあって、もすごい

稲垣 笑人形、めちゃおもしろいな

   藁人形の、丑の刻参りのやつって、やりかたとか決まってるんだよ。白い着物で髪を振り乱し、白粉、鉄漿(おはぐろ)、口紅して、頭に鉄輪をかぶって、そこに3本のろうそくを立てる。あと高下駄をはいて、胸には鏡をつけるって。

木嶋 鏡で呪いが自分に返ってこないようにするんだよ

丹澤 けっこう大変だよね。鉄輪とかおもいし、ろうそくとかたれてきそう

桐澤 鉄輪ってどこかで売ってるのかな。

南出 鉄輪って五徳のことらしいよ

稲垣 まじか

丹澤 その呪いするときの恰好って、なんとなくみんなの中に共通のイメージがあるのすごいよね。

稲垣 なんか平家物語の宇治の橋姫が最初らしい。

桐澤 やっぱり女性のイメージが強いよね

木嶋 昔の映画の八つ墓村だと男性がやってるシーンがあるよ。

一同 へー

 

稲垣 じゃあ次、僕のやつ、冒頭のとこ書いてきたんで、いきますか。

 

岩村

犬、知ってる?犬、飼ってるんだけど、可愛いよ、犬、三郎って名前なんだけど、チワワなんだけど、白い、ちっちゃい、犬、飼うまでは、全然興味なかったんだけど、サブちゃん、飛びかかってくるからね、玄関開けると、はっはっはっは来るからね、もうさ、超ラブリーよ、ちょっと臭いけど、ちょっとなんかドッグフードの匂いと電車の椅子みたいな生地のソファが湿気てカビくさくなったみたいな臭いと、口の臭さと皮膚の匂いとが混ざった感じの臭さあるんだけど、その臭さも含めて超ラブリーよ、もう気分もラブリーだもん、気分も世界もラブリーだもん、犬いると、犬、いいよ、犬、飼いなよ、俺、サブちゃんの話してるだけで、ちょっと元気でるもん、にやけてきてるもの、今、あ、そう、あとね、犬ね、あったかいから、どこ触ってもあったかいから、特に腹、あ、でも足もいいよ、コリコリしてて、でもやっぱ腹ね、フニフニしてて、いやー、すごいよ、犬、あ、犬じゃない?、正直この世の中で、って言うかこの世界で、一番あったかいものって犬じゃない?って今思ったんだけど、どうかな?

 

山下

うーん、どうだろう、

 

岩村

って言うか、むしろ、世の中にあるあったかいものって実は犬だけなんじゃない、

 

山下

や、だって、肉まんとか、

 

岩村

いや、わかるよ、肉まんとかあったかいのわかるよ、だけど本当は実のところ肉まんは冷たいんじゃないかね、って、カモフラージュのあったかさってのがあって、犬の腹のみが真のあったかさなのではなかろうか、って、

 

山下

うーん、ホットミルクとか、

 

岩村

それはもう、熱いじゃん、ホットじゃん、あったかくないじゃん、

 

山下

あったかいけどなあ、

 

岩村

いや、わかるよ、肉もんもホットミルクもホットレモンもホットコーヒーもあったかいのわかるよ、

 

山下

あと、コタツとか、

 

岩村

そう、コタツもね、あったかいよね、電気毛布も電気ストーブもガスストーブも、

 

山下

あと、お湯ね、

 

岩村

そうだね、お湯ね、あー、お湯、お湯かー、お湯、は、あったかいわ、むしろ犬よりお湯の方があったかいかもしれない。

 

山下

ごめん何の話?

 

岩村

温泉行きたいね、

 

山下

行きたー。

 

    スタバのコーヒー飲む

 

岩村

犬、呪われてんだ。

 

山下

は?

 

岩村

犬、サブちゃん、呪われてんだ。

 

山下

え?は?呪われてるって何?

 

岩村

最近鳴き声に元気がないんだ。

 

山下

え?は?呪われてるって誰に?

 

岩村

妻に。

 

山下

妻に?

 

岩村

温泉行きてー、

 

山下

温泉は行きたいけど、

 

岩村

山ちゃんが温泉なんて言うから温泉行きたくなっちゃったじゃない。

 

山下

温泉はイワムラーが言い出したんだよ、急に。

 

岩村

あ、そうか、山ちゃんはお湯って言っただけか?温泉とか行く?

 

山下

うーん、行きたいんだけどね、ほら、妻がね、あんまり好きじゃなくてね、

 

岩村

あー、妻ね、温泉好きじゃない妻っているよねー、

 

山下

温泉というより旅行が好きじゃないんだよね、

 

岩村

あー、いるいる、旅行が好きじゃない妻っているよねー、

 

山下

だからむしろ、どこでもドアが欲しい、犬よりもむしろどこでもドアが欲しい。

 

岩村

どこでもドア?

 

山下

どこでもドアでドアトゥドアで温泉行きたい。

 

岩村

めっちゃお湯好きじゃん。

 

山下

旅行なんて本当良いことないよ。

 

岩村

あー、それかも。

 

山下

え、何が?

 

岩村

犬、呪われてる理由それかも。

 

山下

ん、犬、呪われてる理由それ、ってどれ?

 

岩村

旅行旅行、

 

山下

あー、えっ、そもそも犬、呪われてるってどういうこと?

 

岩村

見ちゃったんだよね、

 

山下

うん、

 

岩村

夜、俺いつも十時に寝るんだけど、いつも妻は俺より寝るの遅くて、いつ寝てるのか俺先に寝ちゃってるからわかんないんだけれども、夜、トイレ行きたくなって目覚めて、あ、夜間尿ってあれらしいよ、一回でも寝てる時目覚めてトイレ言ったら夜間尿なんだって、ラジオで言ってた、膀胱衰えてるんだって、いや、最近膀胱ひどくてさ、尿漏れとか、ある?

 

山下

尿漏れはないよ、

 

岩村

えー、何、トレーニングとかしてるの?

 

山下

や、尿漏れの話どうでもいいよ、

 

岩村

お前尿漏れの話結構大事だぞ、今後の人生に関わる話だぞ、

 

山下

犬、呪われてる話聞かせて。

 

岩村

あ、そうそう、サブちゃん、かわいそうに、サブちゃん、なんか見ちゃったんだよね、夜間尿で起きた時、妻、犬、呪ってるの、なんか微かに音聞こえてきてて、隣の部屋から、隣の部屋、あれなんだけど、なんて言うの、横にスライドさせるドア、なんて言うの?

 

山下

ふすま?

 

岩村

ふすま、なのかな?、ふすま、さ、ちょっとさ、そーっとさ、開けてさ、開けたら妻、いてさ、

 

    芽衣子、いる。

 

岩村

なんか、ブツブツ言っててさ、

 

芽衣

ブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツ、

 

岩村

うわー、なんかブツブツ言ってるーって思って、

 

芽衣

ブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツ、

 

山下

こえー、

 

 

 

 

丹澤 でたな、犬。

南出 犬、いいよね。

稲垣 犬、いいでしょ。

男女の関係だけだと、なんか全然書けんくって。

桐澤 なるほど

稲垣 あったかさが人間関係のぬくもりみたいなものとかかってるって感じかな、お湯とか。

桐澤 お湯って聞いて、わたしは白湯のことが浮かんだんだけど、お湯から温泉ってつながってくんだね。

丹澤 わたしは大学時代のエピソードからある特定の人が浮かぶんだけど、一つの単語からそれぞれが浮かぶものが違うの面白いよね。

稲垣 それはだいぶ特殊だけどね。

 

丹澤 次は南出くんの行きましょー

南出 呪い問答のところと、おまけ、あります

 

・呪い問答_試作②

 

あたしはもうあなたを愛することができない。あなたを呪うことしかできない。あたしの中にあった暖かいひだまりは、次第に煮えたぎる溶岩になった。スマホにあるあなたとのアルバムも、すべて真っ黒に塗りつぶされてしまった。あなたからもらった手紙の文字も、異国の文字みたいにあたしには読めなくなった。

 

どうして、彼の何が嫌いなんですか?

 

あの人の視線が嫌。他の誰かを見ている時、その目に光が宿るのがいやらしい。恐ろしい大蛇の黄色い目のように、獲物をじっと狙っている。じとっとした目に睨まれると、鳥肌がたつ。

 

それでは、彼の視線が嫌なのですね?

 

いいえ、あの人の目は暖かい。息子を見るあの人の目は父親の威厳が備わっている。ベッドであたしを見る目に、私の心は掴まれる。あの目に見られていることで、私の存在が感じられる。

 

わたしが嫌なのは、あの人の指。爪垢が溜まった指先に触れられるとゾッとする。うねうね動く様はミミズみたいで気持ち悪い。

 

では彼の指が嫌なのですね?

 

あの人の指は素晴らしい。快楽の泉の在処をしっている。あの指に触れられると幸せになる。太く逞しい指に血管が浮き出ているところなんて勇者の手みたい。

 

わたしが嫌なのは、、、(いくつか続ける)

 

あなたの目線、あなたの指、あなたのおでこ、あなたの髪、あなたの眉毛、あなたの鼻毛、あなたを構成する要素。その全てが憎たらしい。あなたへの恨みを口に出していくうちに、声があたしに語りかけ、言葉があたしを導きはじめた。声が声を呼び起こし、言葉が言葉を紡いだ。あなたあなたあなた。あなたの何を恨んでいるか、あたしはもう忘れてしまった。ただ恨みだけが残った。あなたを描写する言葉によってあなたをまるごと上書きしてしまいたい。言葉は呪い。言葉は全てを飲みこんでいく。そうして主体は消えていく。あなたを呪う言葉の群れは、あたしから生まれでて、次第にあたしも飲み込まれていく。あたしは言葉によって突き動かされていく。あなた・あたし・あなた・あたし・あなた・あたし・あなた。

 

 

・おまけ_犬を呪う

 

ああ、じろーちゃん、お前を育てたのも無駄だった。子供ができなかったわたしにはお前は我が子同然。身寄りのないお前を引き取って、さまざまに骨をおり、苦労に身をすりへらしてきたのも、むだだったのよ。ほんとうにまあ、人生という孤独な道行を一緒に歩いてくれたのはお前だった。この先もお前と一緒に生きていけるだろうと、そんな嬉しい考えも今は消えてしまった。お前を失って、この身に辛い、悲しい生活を送ってゆかねばならないのだから。じろーちゃん、そんなかわいい目で私をみないでおくれ、お前とは、もう、別の生活にはいっていくのだから。

 

 

南出 前回の話で、呪いが個人だけのものから、全体の怨念になってくっていうのがあって、何を呪っていたかも忘れてわからなくなるというのを書いてみた。呪いだけが残る、みたいな。なんか自分では説明しすぎかなって思うんだけど。

稲垣 南出くんのは直喩が多いかな。

丹澤 あんまり説明っぽい感じはしなかったけどな。南出くんの文体だと気になんない。

桐澤 ふたりとも全然文体が違って面白いね。淡々としている聞き手も印象深いね。

稲垣 どっちも演じ甲斐がありそうだよね

 

稲垣 では次丹澤さんの行きますか。

丹澤 書いたのは南出のとこと同じ呪い問答のパートです。

 

男 あのさ、俺、なんかした。

女 え?何が?

男 いや、言ってくれなきゃわかんないし。毎日毎日さあ。俺だって、どうしたらいいんだかもうわかんないよ。

女 なに、急にどうしたの?

男 だから、どうしてほしいわけ?

女 どうしてって、別にどうしてほしいわけじゃないけど、何度も言ってるじゃん。

男 いや、わかんないよ。

女 なんでわかんないの?だから、なんか前にさあ、仕事疲れてて、夜ご飯、もうお弁当でいいよねってなってさ、私がほか弁でのり弁買ってきてっていってさ、買ってきてくれたはいいけど、ソースと醤油選べるじゃない?私さあ、いつも魚のフライは醤油で食べるのに、アジとか。絶対ソース貰ってくるの。しょうがないからさあ、家の醤油かけるわけ。だからさ、ソース余っちゃって、なんか、いっぱい溜まっちゃってるんだよね、冷蔵庫の隅に。使わないで捨てるのもあれかなーって思って、とっとくんだけど、やっぱ使わないっていう。あれどのタイミングで捨てればいいんだろうって、え?どうおもう?

男 え、ちょ、ちょいちょい。なにそれ、それ今関係ある?

女 え?え?何が?

男 え。怒ってんのと関係、ある、それ。ソース。

女 何言ってんの、ソースごときで怒ったりはしないでしょ。だから、あの日さ、空がきれいだったんだよね、夕焼けがまだ夕焼けじゃなくって、赤とオレンジと青が全部あって、雲はゆっくり流れていて、わたしはビニール袋を持っていて、中に入った大根がじわじわ重くなっていて、ああ、きれいだけど、腕痛いし、早く帰りたいなあ、みたいな気持ちもあって、でも帰ったころにはもう夜になっちゃうかって、だから、大根は重いけど、わたしもゆっくり歩いて帰ったほうがいいんだなあって思ったから、急ぐのやめたんだよね。

男 ごめん、それ何の話?

女 は?だから、さっきからいってるけど、っていうか、もう何度目かもちょっとよくわかんないけど、ずーっと入れっぱなしなわけ。え?ティッシュだよティッシュ。多分さあ、花粉の時期とかにポッケ入れて、そのあとずっとね。いれっぱで。そうするとさあ、使えばいいけど、使わなかったらずっと入れっぱなしで、最後それ入れっぱなしだったらどうなるっていうと、ね、洗うよね、誰が?私だよねえ。するとどうなるって、あーあ、大悲劇が起きるよね。

男 あ、そういうこと、わかったわかった。こないだのやつまだ怒ってたんだ。もう、謝ったじゃん。やり直しの洗濯、俺がやったし。

女 え?今更そんなことくらいで怒るわけないじゃん。

男 違うの?

女 違うよ、だからね、朝、早く出て、夜、遅く帰ると、変わっていることと変わっていないことがあって、変わっているのは、テーブルの上にデリバリーの空いたプラスチックのケースがあったりとか、冷蔵庫の麦茶が残り1.5センチまで減っていることとか、シンクの中にお茶碗とお椀とお箸が一セットあることとか、変わっていないのは、明かりがついていることとか、部屋の窓が開いてカーテンが揺れてることとか、ひとり布団で寝てる人がいることとか、なんかそういうことが変わっていないんだけど、なんかもう遅いからさ、お風呂入って寝ようかなと、そうやってお風呂入ると、シャンプー切れてて、なんかああ、シャンプーはなくなっちゃったんだなあって思うけど、もうびしょびしょだし、ストック取りに行くの面倒だし、ボディソープで髪洗っとくかって、洗うとそれなりにキシキシして絶対失敗明日髪爆発ってわかってるけど、もう眠いし、いいやってなって、むりやりコンディショナーして、これでいいことになるような気がするし、実際翌朝にはなんかそれなりに毛先だけビョンビョンくらいでどうにかなったから、まあいいやってなって、それで、次の日もまたシャンプー切れてるんだけど、もう面倒くさいから次の日もボディソープでシャンプーして、毛先ビョンビョン、もはやビョンビョンでいいやってむしろビョンビョンしてるのが普通なのかもって思ってくるっていうか

男 ちょっとまってよ!!なにそれ、全然話関係ないじゃん。シャンプーとか。だから俺が聞きたいのは、なんで怒ってるのかって話で。

女 え?何で関係ないって思うの?

男 は?なんでそんなことが関係あるんだよ。

女 関係あるよ。要するにね、、、

 

 

稲垣 南出君の詩的なやつのあとだけど、これはこれで面白いね

丹澤 男に女の言っていることがわからなくなる、というところで、①しゃべってる言葉自体が意味不明②会話の意味内容がかみ合っていない③女は意味が通じる話をしているけど男には意味が分からない、のなかから③をやってみました

稲垣 とか、とか、って続くリズムがいいね

桐澤 こういう小さいことの積み重ねってあるよね……

木嶋 シャンプーとかめっちゃわかる。

 

稲垣 じゃあ、とりあえずやってみますか

南出 またでた。

 

強引に今日書いてきたテキストを、稲垣→南出→丹澤の順でつなげて、最後のほうは即興でやってみる。(最後のほうに木嶋が書いてきたテキストの要素を入れることができた!)

 

稲垣 無理やりでよくわからんかったけど、なんか最後のほう、けっこううまいこといったなあ。笑人形と、「なんで呪わないの」も入ったし。

丹澤 なんかいけたわ

稲垣 呪いダサくねーってとこから呪ってほしいの、みたいになるとこ、メデイア否定にもなりすぎず、よさそうな感じした。

 

そしてその後延々と続く構成会議。

 

主な問題点(結局前回からあまり変わっていない)

・犬を呪うの面白いけど、メデイアほど強い理由がないと、男ではなくあえて男(夫婦)の大事にしている犬に呪いをかけるところに説得力がもてない。なかなか現代人だとむずかしいのか。

・呪いのきっかけよりも呪いそのものに執着してしまう方向も行けるけどそれだと、夫婦と夫婦を対比するという構造がいまいち生きてこない気がする

・なんにせよ、メデイアの呪いシーンは強いエネルギーが必要   など

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丹澤 いまいちどこが作品のポイントかわかんなくなってきた。

稲垣 ①異人メデイアと②友人夫婦、両方いけると思うんだけどなー

南出 みんながそれぞれ気になってるポイントとかふくらまして書いてきたから、ちょっと方向が広がりすぎているような感じがする。ちょっと持ち帰って、それぞれが書いたやつちゃんと読んでみて、考えようよ

一同 はーい

木嶋 わたしも、また書いてきます

桐澤 わたしも、いけそうだったら書いてきます

稲垣 よろしく!



★次回の予定

20211107 13:00~ @巣鴨第一区民集会室

★宿題

ちゃんとみんなの読んで構成とか考えよう。

自分以外の人のに加筆したりもOK、稽古をもとに書けそうだったらまた書いてみよう!

20211016、きじまさん、呪い論議

★前回

現代版メデイアの構成を考えて、実際に体当たりでエチュードしてみる。

が、なかなか思うようにはいかない。てか、呪いむず。

各々で一回せりふ書いてこよう、

忙しかったら「メデイアの呪い」と「呪い問答」だけでも、

もっと忙しかったら「呪い」って何か、人を呪いたくなったことあるか、呪いの出てくる物語などなど、何でもいいから呪いについて考えてくる、

という宿題が出ていた。

 

★きじまさんが来てくれた。

稲垣「今日、きじまさんきてくれるって」

南出「え!そうなんや、きじまさん、ってあれやっけ。いつも名前が出てくる」

稲垣「そうそう、そのきじまさん、劇作家セミナーの」

南出「わーい」

丹澤「じゃあ、一緒にヨガからしますか」

稲垣「あ、きじまさん、ぎっくり腰になったって言ってた」

南出「じゃヨガあかんやん」

 

3人、きじまさんを待ちつつ、足をほぐす。

 

きじま「あ、どうも」

南出「あ、はじめまして、南出です。

きじま「きじまです」

南出ときじまさん、自己紹介をする。

 

4人、ヨガする。

丹澤「きじまさんは、腰無理しないでくださいね」

南出「あーっ、つった。つった。」

丹澤「南出くんも無理しないで」

 

20分くらい、しっかりヨガでウォーミングアップ。

 

稲垣「ふーーーっう。あーー、ほぐれたね。じゃあ、メデイアのやつ読みますか」

 

★それぞれ、書いてきたものを共有。

 

稲垣「じゃあ、僕の短いので僕から。短すぎてびっくりしちゃうよ、読んだら」

 

岩村、観客に向かって喋る。

岩村
うーん、なんだろうねえ、つまり、、なんだろうねえ、俺だって、ねえ、妻のことを愛してるよ、俺だって、この、幸せを、壊したりなんかしたくないわけさ。うーん、そうだなあ、つまり、、あれ、なんなんだろうねえ、なんで、あれさあ、二人っきりになるんだろうねえ、二人っきりになるってすごくない?なかなかなれないよ、二人っきり。つまり、さ、恋ってのはさ、あ、ごめんね、急に恋とか語りだしちゃうけどごめんね、恋っていうのは、さ、いかに二人っきりになるかっていう、そのう、なんて言うのかなあ、戦略っていうか、なんて言うのかなあ、そういうやつじゃない?

他の三人、群舞で歩いてくる。

友田
うーん、どうだろうねえ、

岩村
究極行っちゃうと、夫婦になるわけでしょう、ずっと二人きりなわけでしょう。

友田
うーん、そうだねえ。

岩村
あ、でも子供できるとあれか、二人きりじゃなくなるか。

友田
まあー、そうだよね、だけどもある意味、そういうことなんじゃない。

岩村
え、どういうこと?

友田
ごめん、今なにも考えてなかった。

岩村
え、なにそれ、

友田
ごめん、俺自身びっくりしてる。

岩村
ちゃんとあれしてよ、相談してるんだから。

友田
あ、相談してるんだ。

岩村
相談してるじゃないか。めちゃくちゃ相談してるじゃないか。

友田
恋、語ってたよね、

岩村
つまりこういうことなのだよ。電車待ってたのよ、渋谷で、

友田
待つわな、電車、

岩村

 

稲垣「っていう感じで、最初は岩村(あ、これは発見なんだけど、イアソンの現代版の名前は岩村っていう)のエピソードトークから入ろうと思って、まずモノローグで語って、そんでダイアローグに移行してく。あ、あと他の人は群舞で入ってくる」

 

丹澤「すぐ影響されんじゃん、ダンスの公演で見たからでしょ」

 

稲垣「あと、二人っきりになるってことが重要なんだよなって。二人っきりになって、キスしなきゃって思うタイミングってある。「これは契約だな」って思うタイミングが」

 

きじま「ふたりっきりになるって、それはお互いなろうと思ってなってるのよ」

 

南出「『NANA』の最初の方で、終電やばいっていうんでハチと男がホームの階段を走って登るんだけど、すんでのところで電車が行ってしまう。そこで男が「電車、行っちゃったね」っていうんだけど、ハチは「・・わざとだよ」っていうんだよ」

 

丹澤「ハチは度胸がちがうね」

 

稲垣「浮気、でいいんだろうかと思うんだよね。浮気くらいで呪うか?っていう。メデイアも浮気だけではないじゃん」

 

丹澤「家族とか故郷とか全部捨ててきたもんね、メデイアは」

 

稲垣「そう、でも今回移民とかそういう話にしたいとは思ってない、設定を増やすって方向にはしたくない。そうじゃなくて、『岸辺のアルバム』だとさ、八千草薫は必ずしもあの男が好きだったっていうわけじゃなくて、家からの脱出っていう意味合いもあった」

 

南出「そういう感覚の、いまの若者のリアルっていうのが欲しいよね」

 

丹澤「浮気されたら別に別れたらいいしね。女性も仕事あるんだし。四谷怪談のお岩さんについて最近読んだんだけど、当時の女性たちのシンボル的な意味合いもあったみたい。ただ個人的な話として夫がひどい、恨んでやる、っていうんじゃなくて、当時の全女性の怨霊を背負っていた」

 

稲垣「じゃあ次は丹澤さんの読みますか」

 

20211016 お試し戯曲

夫の友達(山下)
夫(高木)
妻(ゆき)
夫の友達の妻(あや)

1 居酒屋
高木 いや、待たせた~
山下 おう、大丈夫だったか
高木 ああ、でも20分くらい電車動かなくてさぁ、安全確認ってゆうの
山下 ああ
高木 線路内に人が立ち入ったってさ
山下 まあ、20分くらいですんでよかったじゃん。
高木 まあな、人身だったら動かなかったしなー。
山下 最近、また増えてきたもんな、(店員に)あ、すみません、生、(2、のつもりで)
高木 と、ハイボール
山下 え、ビールじゃないの?
高木 なんか、自粛でさー、去年飲みまくってたら、腹がやばくなった
山下 まじかー、え、でもさ、むしろちょっと痩せてない?前よか。
高木 ああ、まあちょっとね。太った後、まあ、いろいろあって、結局マイナス7キロくらいかな。
山下 なにそれ激変じゃん。
高木 なんとなくビール飲まなくなってからそのままやめちゃって、そのまま。まあ、そんなことよりさあ、めちゃめちゃ久しぶりだよなあ。
山下 だよなあ、もうさだってコロナ前に飲んだのが最後じゃん。だから、もう2年ぐらい前だぜ。やばいよなあ。全然外で飲んでなかったし。
高木 そうだよな、俺も俺も。
山下 家でばっかりだよな。そりゃ自粛疲れするってかんじだよなあ。
高木 だよなー。

店員 おまたせしました、ハイボールです。
山下 じゃま、
2人 かんぱーい
山下 あーー。うまい。やっぱいいわー。
高木 ……
山下 ん?どうした
高木 レモンサワーだわ。
山下 えー!
高木 はあー
山下 え、変えてもらう?
高木 ああ、いいいい。
山下 いいならいいけど、ちょっとがっかりだよな
高木 がっかりだよー。まあ、いいけど。こないだもさ、昼飯食べに行ったとき、生姜焼き定食頼んだのに、おろしタツタ出てきてさ。
山下 どういう間違え方だよ。
高木 時間もなかったからそのまま食べたけどな。
山下 いいのかよ、なんか、高木、災難続いてない?呪われてんじゃね?
高木 あー。そうなんだよね、俺呪われてんだよ。
山下 ……は?
高木 だから、俺呪われてんだよね、嫁に。
山下 え、何言ってんの?大丈夫か?
高木 実はさ、ちょうどコロナになる前に、会社の後輩と、そのぉ、浮気、しちゃってさ。
山下 うっそ。
高木 まじまじ。で、コロナになっちゃって、うちの会社基本在宅になって、今日出社になったから行くって言って会ってたら、まあ、結局ラインとかでバレちゃって。
山下 なにやってんだよー。そんな不倫のテンプレみたいな。
高木 で、まあ、結果としてはその子とは別れることになったんだけど、いや、俺も、ちょっとまあ気の迷いっちゅうか、まあ別に本気だったわけじゃないっていうか。
山下 いや、それ相手に失礼だから。もちろん奥さんにもだけど。
高木 まあ、それはまあわかってるけどぉ。で、で、こっからなんだよ、うちの奥さんがさあ、呪いだしたんだよね、俺を。
山下 呪うって、まあ、そりゃ恨み言ぐらいいうだろよ。
高木 いやマジなんだって。夜中の12時と、多分昼の12時にも、儀式?みたいなのをやっててさ、呪文唱えて、藁人形に釘打ってんの。
山下 いやぁそんな古典的な。
高木 俺も最初は意味わからんかったけど、実際さあ、効いてんだよ。足に釘打ってた日は、箪笥の角に小指ぶつけたし、頭に打ってた日は一日ひどい頭痛でさ。
山下 ええ、偶然だろ。
高木 偶然かもしんないけどさ、今日だって、電車とか、コレ(酒)とか、こんだけいろいろあるんだから、絶対あいつの呪いのせいに決まってるんだって!

2 高木んち
ゆき ほんと迷惑かけちゃってごめんなさいね、山下さん。
山下 いや、すみません、夜分に……。
ゆき わざわざ連れてきてくれなくても、その辺にでも転がしてきてよかったのに、山下さん、終電逃しちゃったでしょ。
山下 ああ、いえ、大丈夫ですよ、そんなに遠くないしタクシーで。
ゆき まったく、うちの馬鹿な旦那のせいで、すみません。
山下 ああ、いやいや、いいんです。なんか久しぶりに飲んだんで、俺も、高木もちょっと盛り上がったっていうか、飲みすぎちゃったっていうか。俺もあいつに飲ませすぎたですし。
ゆき あ、山下さん、お茶くらい飲んでいってください。よかったら。
山下 ああ、いいですよ、そんなお気遣いなく。もう帰ります。
ゆき でも、山下さんがよかったら、ちょっとお伺いしたいわ、高木のことで……。
山下 ああ。
ゆき 遅くに申し訳ないですけど……。
山下 いえ、じゃあ、あの、お茶だけ、いただきます。
ゆき ありがとうございます。どうぞ。
山下 (傍白)あいつ、呪いなんて言ってたけど、奥さん別に普通じゃないか?

部屋の中には謎の魔法陣、壁に五寸釘を打たれた藁人形、あと怪しげなお札、不思議なお香がたかれている。

ゆき ごめんなさいね、散らかっていて。さっきまで12時の儀式の時間だったものだから。
山下 儀式というと……。
ゆき 呪いよ。あの人に聞いていないですか?
山下 あ、はい。まあちょっとだけ。
ゆき なんていってるのか知りませんけど、悪いのはあの人ですから。
山下 はい、それはそうだと思います。
ゆき あれ、あの人の肩を持たないんですね。
山下 不倫するなんてダメですよ!あいつが悪いに決まっているじゃないですか。ゆきさんの気持ちも考えず……。
ゆき ちょっと意外でした。私の呪いの儀式のこと聞いたら、彼の味方をするのかなって、思ったから。
山下 そうですか?
ゆき ええ、浮気ごときで、呪いなんて馬鹿なことしてるっていうのかと。
山下 浮気ごときって、怒って当然ですよ。夫婦なのに裏切ったわけだし。呪いって言うのはちょっとまあ結構驚きましたけど。
ゆき 私も最初は半信半疑だったんですけど、続けていくうちに、これは本当だって、思ったんですよ。この呪いの効果、彼を見ていたらわかるでしょう?自粛期間中ごろごろしてビールばっかりでぶくぶく太ったくせに、私が呪いを始めたらするする痩せていったんです。ほら見てくださいこの藁人形、おなかのところにどれだけくぎを打ち込んできたことか。
山下 一周回ってちょっとげっそりしてきてますけど……。でも、それってみんな偶然じゃないですか?呪いのせいとはいいきれないとおもうけど。
ゆき 偶然、そうかもしれませんね。でも、偶然起こることだって、結局は必然でしょう?なにか、起こるべくして起こった、そういうことです。
山下 はあ。
ゆき 山下さん、夫は、私と別れたいといっていましたか?
山下 え?いや、そんなことは、言ってなかったですよ。
ゆき そうですか。
山下 あのう、ゆきさんは。
ゆき はい?
山下 その、ゆきさんは、別れたいんですか、高木と。
ゆき え?何でですか?
山下 ああ、すみません。ああ、そうですよねえ。
ゆき 山下さんは誰かを呪ったこと、ありますか?
山下 ないですよ、そんなこと。
ゆき そうですよねえ。呪わないですよね、普通。
山下 いや、そっちが、普通かもしれないです。
ゆき え?
山下 呪うほうが、普通なんじゃないですか?
ゆき そうかな。
山下 そうです。だってあいつ、別れたいなんて、言ってなかったんですよ。

 

 

 

 

 

3 山下の自宅
山下 それで帰りがこんなに遅くなっちゃったんだよね。
あや そう
山下 ごめん
あや うん
山下 起こしたよね
あや うん、でも、寝たのさっきだったし
山下 え、そうなの。
あや 寝付けなくて
山下 飲んでた?
あや ちょっとだけだよ。
山下 そっか。
あや それで?
山下 なにが?
あや 彼女と話してどうだったの。
山下 どうって。
あや あなた、どうしたいの?
山下 え、なにを。
あや 呪わないの?あなたは。
山下 ……。
あや 何考えてんだか、全然わかんない。
山下 じゃあさ、あやは?呪ってほしいの?
あや ……なにそれ。
山下 呪ってみようかな、俺も。
あや 信じているわけ、呪いなんか。
山下 信じたら叶うかもよ。
あや もう寝るわ。
山下 あや、明日、朝起きたら前髪が飛び跳ねているよ。
あや ふざけないで。
山下 嘘だよ。……やっぱり俺は、呪わない。おやすみ、あや。
あや おやすみなさい。

 

 

4 あや
先月、私はSNSで出会った男の子と初めてデートした。ネットゲームで仲良くなった5個下の男の子。デートっていっても、お茶してゲームの話して解散しただけ。いまどきの男の子は会っていきなりホテルに誘ってきたりしない。てゆうか、私たちはゲーム仲間なわけで別にやましい恋愛関係なんかじゃない。だけどどうやら夫は私が浮気していると思っているらしい。夫にありのままいえばいいって?どうだろ信じるのかな。彼は彼で、女と男が一人ずついたらいわゆる男女の関係だって思うタイプ。つまり男女の友情は存在しないと思っている。わたしはそうとはおもわない。女友達とお茶するように男友達とお茶をする。確かに年下の男の子と出かけるのはちょっと新鮮で、気持ちがちょっとふわふわしていたかも。でもそれくらいのわくわくが、誰かと会うときにあるからといって、浮気なんて言われたら、何度浮気という言葉を使っても足りない。わたしにはわくわくすることがたくさんある。初めて出会う街並み、お気に入りのカフェで食べるご褒美ケーキ、仕事で新しい企画を立てているとき。毎日小さなワクワクを見つけながら生きている。でも、ただひとり、ワクワクしない人がいる。夫。彼と一緒にいても全然ワクワクしない。どうしてだろう。ワクワクするから付き合って、ワクワクするから結婚したはずだったのに。どう頑張ってもワクワクしない。わたしはずーっと前から、呪われている。夫にワクワクできない呪い。いまさら何か呪われたって怖くない。いつまで続くのだろう。この呪いの日々は。明日も明後日も終わらない。きっとわたしは夫を愛してはいない。夫が私を愛していないように。夫は私に愛されようとしているが、私を愛そうとはしない。愛すことも呪うこともせずに、ただそこに立っている。私は夫に愛されようと思っていないが、夫を愛したいとも思っていない。それでもただここに立っている。本当なら夜の闇が全部飲み込んでしまうのに、今は街灯が明るすぎて飲み込んでももらえない。さっさと眠ってしまおう。このワインを飲みほして。そのままベッドに倒れこんでしまえばいい。明日になれば、また太陽が昇り嫌でも一日を生きなくてはならなくなる。灰色の世界の中でも、小さな花が咲いているのを見つけることができる。だから、今日という日はもう、おしまいにしてしまおう。

 

南出「ワクワクしないっていうのが連続して出てくるのが面白い、ワクワクしないだけでも呪いなんだって思った」

 

きじま「ワクワクしないのは、家族ってことなんだと思う」

 

稲垣「『AGE35,恋しくて』っていうドラマで中井貴一が「妻とセックスするのは近親相姦みたいで気持ち悪い」っていうんだよね」

 

南出「じゃあ最後僕のやつ。全然リアリズムとか考えずに書いちゃったんだけど」

 

メデイア呪い

どんな因果かわからぬが 都会の男に恋をして 
男を知らない生娘に あなたは誓った永遠(とわ)の愛 
双葉の松の末(すえ)かけて 変わらぬ気持ち千代八千代 
子どもが産まれた夏の日の 夕日がとってもきれいだったね 
だけど夕日が沈んだとたん 夏が終わって秋が来て 
あなたはわたしに飽きてしまった あの子も連れて逃げたのね 
ああ恨めしい、呪わしい うっかり頭をうったみたいに 
夢現(ゆめうつつ)で鬱になって 
深い深い渦の底 真っ逆さまに沈んでく 
沈んだ先に積もった恨み 言葉になってあなたを呪う 
因果は車輪の廻(めぐ)るがごとく 
わたしを不幸にしたものの一切に 復讐してやる 呪ってやる 
 
鼻毛よ伸びろ    月夜に伸びる不吉な影のように 
眉毛よ縮め     雷に怯える濡れた子猫のように 
脇毛よ白め     マムシの這っている白壁のように 
歯よ黄ばめ     便器のように 
産毛よ震えろ    さみしい病人の声のように 
顔よひしゃげろ   スクラップになった赤いスポーツカーのように 
唇よ乾け      日でり続きの田んぼの土のように 
肌よひび割れろ   小学校のうんていの古びたペンキのように 
下腹よ突きでろ   能登半島のように 
ほくろよ増えよ   第一次ベビーブームの頃のように 
デコルテよテカれ  アレキサンダー大王が殺した勇猛な雄ライオンのたてがみのように 
 
 
呪い問答 
Ready fight! 
実況「さぁ、始まりました。世紀の決戦。呪える女と呪えない男との戦いの、いま火蓋が切って落とされました。全てを貫く矛と、全てを防ぐ盾という、あの中国の故事さながらに、絶対に相容れない矛盾を抱えた二人の人間の邂逅。さぁ、さぁ、両者睨み合いが続いている。いったいどちらから仕掛けていくのか!?」 
 
男「どうしてそこまで真剣に呪えるのです?夫婦っていったって所詮は他人じゃないですか。他人のためにどうしてそこまでになれるのか、正直理解できません」 
 
実況「おーっと、いきなりの右ストレート!単刀直入とはこのこと、ズブっと核心をついてきた!」 
 
メデイア「あなたは本当の意味で、人を愛したことがないからじゃない」 
 
実況「な、何ということでしょう!まさに真剣同士の斬り合い、たった一言で心臓をひとつきせんというような、華麗なカウンターアタック。この試合、死人が出てもおかしくありません!」 
 
男「愛していると思います。でも、だからと言って、相手がいなくなってしまったら自分が保てなくなる、自分が自分じゃなくなるなんていう愛は、本当に愛なのでしょうか。それは愛ではなく、単なる執着というものではないでしょうか」 
 
実況「決まったぁ!これは完全に論破しましたよ!令和の論破王の称号は、今や彼のものです。」 
 
メデイア「お好きに言えばいい。人間同士の関係すら、そうしてきっぱりと決めてしまえるのね。冷静な眼差しで、起こることすべてに対して常に客観的に眺めことができるあなたは立派だと思います。ただ、わたしには、あなたはまだ生まれたばかりの赤ん坊。人生というものを深いところで味わったことがないというだけに見えます」 
 
カンカンカンカン! 
 
実況「そこまで、そこまでぇ!」

 

南出「今まで読んできたメデイア、能、サロメシェイクスピアから、もろもろパクってきてるのがバレバレですが。前回のエチュードやってみて、結構普通に喋るだけじゃしんどいなっていうのがあって、もういっそリアリズムからは離れて、五・七調だとか変な詩みたいな仕掛けもあっていいんじゃないかと思って」

 

稲垣「たしかに、それもいいのかもね」

 

★「呪いって、やっぱり何だ?」という話

 

きじま「呪いって人に見られちゃダメなものなような気がする。やっぱり世間的に褒められものではなくて隠さなきゃいけないもの」

 

稲垣「そうなんすよね。今の展開だと、呪ってるんですよって公表しちゃってるから、「呪いの本質」みたいなものが無くなっちゃってる。あと、もう浮気じゃなくてもいいのかも。なんかのきっかけがあって、呪い始めたら止まらなくなっちゃうというか、どんどんのめり込んじゃうっていう狂気の方が面白い気がしてきた」

 

きじま「呪いって、「相手のことが許せない」ってことだと思う。愛してるわけじゃない。相手のことを懲らしめたいんだよ。あとは、落差もいる。一度は幸せだったという経験があるからこそ、落ちた時に呪える」

 

丹澤「何で呪ってるとか、一旦言わなくていいんじゃない。浮気ってことがうっすら仄めかされるくらいはあってもいいかもだけど、その方がむしろリアリティがある気がする」

 

きじま「あと、呪ってたことがバレた瞬間が一番怖いかもね」

 

稲垣「あーたしかに!「あれ、俺呪われてる?」って気づいた瞬間めっちゃ怖い。あれ、これいけそうになってきたんじゃない」

 

★4人で状況をもう一度整理、ホワイトボードに書き出す。

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稲垣「じゃあ、一回やってみますか」

 

エチュード

なんやかんや問題はありつつも、まとまってきたのかもしれない。

次回の課題として、

・稲垣→(シーン①)日常の会話

・みんな→(シーン②)メデイアの呪い、(シーン③)呪い問答(文章としては理解できるけど意味がわからない台詞)

を考えてくることに。

 

★17時、解散。

帰りに池袋に寄って芸劇の下見と、稲垣と南出はジュンク堂に寄って帰りました。

 

20211009、現代版メデイアのエチュード

20211009、稲垣、丹澤、南出、巣鴨稽古場


稲垣の最近
カリオストロの城を人生ではじめてみたけど最高だった。
ヒカルの碁のアニメ2話見て驚くほどに号泣してしまった。
ゴールデンカムイ興奮した。
最近、浦沢直樹のモンスターのアニメ版見はじめた。
野坂昭如にはまりそう。




☆丹澤さんのファシリテーションでヨガする。


南出
腰がきついけどがんばります。


足を重心的に、
その後腰、
そして太陽礼拝、


気持ちよかった。
体が軽くなった。
心が落ち着いた。


☆12月のプレイアクトの演目会議


丹澤
キングオブコントの解説でファイナル残った組が異人と関係を作ってたって話を受けて、前回話してたものに対して面白がり方がわかってきたよ。


稲垣
え、なになに、面白がり方?


丹澤
異人て今感あるね、演劇やってると多様化に許容的というか、でも自分とは全然違う考えを持ってる人たちがいて、逆の立場の人には受け入れられないこともあって、福祉施設の仕事をしていて、障害のある人々と接する仕事しているのだけど、久しぶりに会った友達が、私にはその仕事できないって言ってて、ああ、そうなのかあって感じた、


稲垣
ヒカルの碁を見たからヒカルの碁の話するけど、塔矢アキラが進藤と囲碁したいがために海南中学に入るってくだりがめちゃくちゃ異人で、塔矢アキラはほぼプロに近い存在だからアマチュアの大会には出ないはずなのに、進藤と対局したいがために中学の囲碁部に入るっていう。海南中学からしたら団体戦に選抜される三人のうちの一枠が取られるので、なんで来たねんって感じでいじめみたいなことまでするんだけど、しかも進藤と対局したいなんて、中学側からしたら知らんがなって感じやしね。


丹澤
坂口安吾の夜長姫と耳男って小説で、めっちゃいい言葉があって、メデイアに通ずるなと思ったのが、「好きなものは呪うか殺すか争うしかないのよ」


南出
設定だけ決まっていて、あとは言葉を作る事を楽しむっていう方が今のところ興味がある。
メデイアもサロメも共通しているのは過剰さって気がしていて、普通の人間なら抑圧してしまうものを突き破ってくる人達だと思う。


稲垣
南出くんの能の授業でやった、狂女物で、世阿弥がそんなこと言ってたよね、そこを描けよ花とせよって、


丹澤
ある時期の演劇の主流はそのイメージあるよね、過剰に、って感じ、でも今はあんまり見ない。


南出
メデイアの過剰さが際立てば際立つほど、メデイアになれない夫婦の冷たさが見えてくるよね。




その後キングオブコントについてめっちゃ喋る。
特にニッポンの社長についてめっちゃ喋る。


なんだかんだでメデイアやってみるかということになる。


☆メデイアについて今思ってる事を吐き出してみる。
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稲垣
友達の妻が現代口語的なナチュラルな口調に対して、メデイアが古語とか混じっちゃうとか面白そうね。


丹澤
メデイアの狂気が夫から見た場合の狂気ってのが面白そう。他の人と接しているときは普通な人にしか見えない、夫の視点ではそう見えているだけ、みたいな、モードが二つあるとか。
未来少年コナンジムシーの作画がコナン主観の見え方になっているように。


南出
能として見た場合、メデイアがマエシテ、友の妻がノチシテ、ワキが友って感じかなあ。


稲垣
友がインタビュアーだよね。


丹澤
でも、友が主役っぽくもあるよね、全部受けていくのは友だし。そう考えると、最後のモノローグは友の妻より友の方が良いのでは?


南出
友の妻が、関係ありそうで関係ない話するって気持ちわかる。ちょっと文学に逃げてる感を感じるけど、、


丹澤
友達とその妻との問題ってのは妻が浮気してるで良いんだっけ?


南出
浮気してる妻に浮気した友達の話しやんくない?


丹澤
子供ができないとか、子供に事故あったとか、子供関連のことになりそうだな、それじゃあ。
それで関係がギクシャクしているとか。


南出
メデイアがすごい主体性に対して、友達は主体性がないだろうと思う。しかし、ここが友達で繋がってるってのは面白いな。


☆構成を整理する。

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一場、男と友
妻の異変について、不倫について、


二場、男とメデイア
メデイアの呪いの言葉


三場、男と友
男が友を家に誘う。


四場、男と友とメデイア
友とメデイアのシーンでも良いかも?
呪い問答。


五場、友と友妻
夫婦の問題。
友妻が友に呪ってよと告げる。


六場、友妻のモノローグ
もしくは友のモノローグ。


丹澤
友妻は友に呪ってよと言うけど、友も友妻に呪ってよと思ってる。口にせずに。
これはある意味、さっきの坂口安吾的に愛だよね。


巣鴨の食堂で定食食べる。
・丹澤→ぶり刺身定食
・南出→アジフライ定食
・稲垣→海老フライ定食+自家製タルタルソース


ハエが一匹飛び回ってたけど美味しかった。


南出の食レポ
この、揚げたての衣が歯に優しく崩れて、ご賞味あれ!


外に出ると夜である。
巣鴨の商店街は閉まるのが早い。
眠らない街、新宿歌舞伎町。
眠る街、巣鴨
↑今日の丹澤さんの名言。


稽古場にもどってきて、


稲垣
じゃ、ちょっとやってみよっか。


南出
え、何をするん?


稲垣
今の、構成、全部、


丹澤
え、エチュードで?


稲垣
え、うん、なんか量やればなんか出るかなーって、


南出
え、ゴリゴリやな、


稲垣
役を交代交代でやりますか。


二人
ええー、、、


●一回目
・スタバで二人でキャラメルマキアート飲むときずーっって飲むの面白い。
・呪いの言葉が出ないけどキャラメルマキアートって言葉が乱立していて、それを呪いの言葉にしてみた。
・四場が不条理劇っぽかった。
・一場から二場になって、場面変わったのにスタバのキャラメルマキアート持ってるってのはフィクションと現実のズレが出て面白かった。
・男は不倫していてひどいけどちゃんと反省しなきゃならない、悪いのは男だけど、メデイアがヤバイと友に伝えねばならないの結構難しい。



●二回目
・問答が難しい。なぜ呪うのか、男が浮気をしたからだと答えが出てしまっている。
→現在普通に生きていて、人を呪うってことはあまりないだろうと思う、その状態の時点で奇妙なもの。
・もっと友は空虚感あっても良いかも。メデイアの熱さに対して空っぽ。
・四場は三人が久しぶりって設定が表面的な会話しかできなくて難しい。



●三回目
・呪いっていうより、早く別れろ問答になった。
・消しゴムを鉛筆で刺す、藁人形のイメージ。


一同
エチュードむず、、、


※宿題
エチュードでつくるの結構難しいので、今日の稽古を受けて、それぞれ書けそうなところを書いてきて次回見せ合う。

20211002ワイルド「サロメ」、モノノケ&異人講義、今後会議

20211002 参加者 稲垣、丹澤、南出@稲垣家

 

☆前回までのあらすじ

先週、歌舞伎座にて九月大歌舞伎 第三部「東海道四谷怪談」を観劇した3人。初の歌舞伎座にきょろきょろしながらも、歌舞伎の世界を堪能!なかでもお岩が鉄漿と櫛で髪をすいて身づくろいするさまはとても美しく全く見飽きない!伊右衛門もさることながら、喜兵衛がやばい。意見一致。2幕目がすっと終わって、煙に包まれたような気分で劇場を後に。どんなにシリアスでも笑いもあり、初心者でもとてもみやすかったし、引き込まれました!さすがエンタメ!

 

そして、今回こそは、これまでなんとなく話題に上がっていたサロメをそろそろ読むことができるのか……!

 

 

あたしンちを見ている稲垣と丹澤

 

丹澤 あたしンち、懐かしいなあ。

稲垣 みかんちゃんかわいいよね。あ、エアコンつける?

丹澤 大丈夫かな。

稲垣 エアコンのリモコンないなあ。

 

南出、はいってくる。

 

南出 どもども。講座どうだった?

 

稲垣と丹澤は午前中に能の実技講座に参加していた。

 

丹澤 テキストこれだよ!

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南出 熊野(ゆや)か!

丹澤 今日はお話の説明と、先生の謡を聞いて、すり足とか簡単な所作の練習したよ。

稲垣 雰囲気よかった。先生も優しそうだったし!

 

稲垣 あ、今日夜つくばいくから今日は5時くらいまでで!

丹澤 じゃあどんどんやらないとね。まずは、サロメから……

 

みんなで「サロメ」(オスカー・ワイルド 作/西村孝次 訳)を読む。

 

感想

・若いシリア人、ここで自殺すんの!?

・ヘロデの、サロメに酒を飲め&果物を齧れ、というくだりがきもい……

・ヘロデの説得長い!100羽の孔雀半分の50羽あげるとか、領土半分にこだわってたりとか、面白いな。あと聞いたこともない石がいっぱい出てくる

・それに対してサロメが「ヨカナーンの首をくださいまし」しか返さないのも面白い

・あんましゃべらんけど舞台上人めっちゃ多いな

・ヘロデはたくさんの人の前で約束しちゃったから、そうするしかなかったんだな

・序盤から不吉な予感のフラグ立ちすぎてて、絶対不吉なことが起こるに決まっている世界観。

 

 

稲垣 いろんな国の人出てくるけど、やっぱ背景がわからんからよくわからないなあ

南出・丹澤 だよね

丹澤 昔読んだときは、サロメはヘロデへの当てつけにヨカナーンの首を、といった印象が強かったんだけど。

南出 実際に読んでみるとサロメはヨカナーンを熱望してる感じが強いね。しかも首を手に入れても、本当には欲しいものは手に入れられていないっていう。

丹澤 うんうん。

稲垣 そういえば、聖書ではサロメはヘロデアに言われて、ヨカナーンの首を、ていうんじゃなかったっけ。

 

3人、モローの『出現』をみたりして、サロメが「ファム・ファタール」となっていったことを振り返る。

 

稲垣 今時、好きな相手に「君の唇はバラのように赤い」みたいなこといったらやばいよね

丹澤 やばいわ。

稲垣 詩的な表現みたいなのがもういま成立しなくなったよなあ。

 

というわけで、稲垣の講義に突入。

 

稲垣 ホントはもっとちゃんと準備したかったんけどな、ええーと、じゃ、ま、それでは、講義をはじめたいと思います。

 

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小山聡子「もののけの日本史」より

・モノノケは漢字で「物気」。理由がわからないものはモノノケとされた。

・モノは物体だけでなく、神や霊、その力を指す。

・ケは病気、霊や鬼が発し、目に見えず漂う。触れると病をもたらす。

⇒モノノケはすごい恐れられていた。

・怨霊:平将門菅原道真など社会で広く認識された人物の霊が社会全体に対して天災や疫病をもたらす

・モノノケ:正体が何かわからない段階で、「モノノケ」といわれた。個人や近親者に病や死をもたらす

・占いの道具だった、囲碁、双六、将棋もモノノケ退治に使われていた!

 

☆14Cからの霊魂観の転換

浄土に対するリアリティが減少し、他界への往生を求めないように。死後は墓地で安らかに眠り、子孫と交流するよう願われたため、能でも墓などに出てくる幽霊が描かれた。

 

☆近世では怪談が娯楽の一つとして大流行

近世では死霊の存在には懐疑的になっていた。また比較的平和な時代だったため刺激を求められ、怪談話として流行。

 

稲垣 もう一冊読んでて面白かったから紹介します!

 

小松和彦「異人論」より

 

井上ひさしのエッセイ『藪原検校』の冒頭(概略)

子供の時、点々と移り住んだ村に座頭池、琵琶ヶ池、盲沼、等と呼ばれる池があった。昔、座頭や琵琶法師が誤って転落し、溺死したからと言われたが、村の人たちに殺されたというのが事実ではないだろうか。

→実際はわからないが、外部の人に語らねばならぬときに話をかえる=真実味がある

 

村内での「説明のできない富裕や没落、身障者の誕生」を異人の怨霊のせいにして、「あの家は異人を殺して金を奪って栄えた/没落した」などと噂話した。

→異人殺しは語り手にとって都合のよい物語に変形される

 

ここでドラクエの神父の話が登場。魔物にかえられた神父が村民に殺されそうになり、村外から来た勇者たちが、それを助ける。しかし、後の世では、勇者たちが殺そうとしていたのを村民が止めたのだと、歴史が改変されて伝承している。真実を継承してきた一族の者は、「それは事実でない」と主張するが、誰にも信じてもらえない。

 

稲垣 異人はたたえるものであるとともに排除したいものでもあったっていう。勇者ってふつうに村の家とかからモノとったりするからな

丹澤 え、そうなの(RPG素人)

南出 勇者ものに対して、アンチRPGを掲げたゲームで「ムーン」ていうゲームがあった。その中で、何人か自分がRPGのキャラクターだっていう自覚を持っているやつがいて、「自分はなんか操られている存在だ」ってわかってるっていう。

なんか、普通に生きてても、ふとなんか自分の意志で動いてるんじゃないっていう、感覚になることってあるよな。電車とか乗ってて、なんで今ここにいるんだろうみたいな

丹澤 あ、なんかわかるかも。あれ、いまここにいるのってあってる?みたいなときある

 

☆異人殺し伝説→昔話

六部殺し・・・農家が旅の六部を殺して金品を奪い、財を成す。のち生まれた子が六部の生まれ変わりで「こんな晩だったね」と断罪する。(夢十夜「第三夜」)

異人殺しの要素を抜き去るようなタイプの話が生まれる(忌まわしい伝説を抹殺)

大歳の客・・・大みそか旅人が一晩の宿を乞い、快く泊めると、翌朝旅人は金、小判に変わっていた。【異人歓待型】

異人は神のメタファーでもあるとみられる。

 

★まとめ★

・異人殺しは民族社会内部の矛盾の辻褄合わせのために語りだされたものであり、異人に対する潜在的な恐怖心と排除の思想に支えられている。

・異人は社会システム維持のために具体的/抽象的に暴力と排除の犠牲にされていた。

 

稲垣 人と人との間で、どこに境界を引くかによってどこまでがウチでどこまでがソトかが変わってくる。何が「異人」かってことも変わるんやなっておもった。

で、異人との出会いって通過儀礼やと思うんよなあ。

Aだったのが、B(修業期間)を経験して、A‘にかわるってゆう。昔、修業したくてタイに行きたかったんだよなあ、通過儀礼しようと思って。金なくてやめたわ。

南出 大江健三郎の「飼育」もそんなかんじだね。黒人と出会った少年は彼と過ごした経験を経て成長する。村人は異人である黒人に対して、動物にするように接していて、作品としては結構怖い。

 

まとまったのか、広がったのかよくわからないが講義修了。

 

稲垣 それでは、12月に茶会記プレイアクトに参加する件ですが、

 

そう、カハタレ、12月に短編上演企画に参加し、作品を上演する予定ができていたのだ。

その後、稲垣プレゼンの下、今後の作品制作について話し合った。しかし結論に至るには時間が足りな過ぎた……

 

☆今後の予定

よって、来週は、12月の公演での上演作品について引き続きはなしあいます!

20210919能「松風」現代版、喜劇講義、シェイクスピア「お気に召すまま」

20210919、参加者、稲垣、丹澤、南出、@南出家

☆前回までのあらすじ
前回南出による能の講義の一部として、岡田利規訳「松風」(池澤夏樹個人編集『日本文学全集』より)を読んだ3人。翌週には能楽堂で能・狂言を鑑賞、狂言名取川」に爆笑し、松風より名取川やりたい気持ちにも流されかけるが、そもそもの名目を取り戻し(名取川だけに)松風現代版に取り組むことにするのであった…

 

南出の部屋、3人話している。

 

稲垣
プラトンの『饗宴」なんて、生きてる限り読まんやん。でもこの前「お気に召すまま」買うために蔦屋書店行ってたら土砂降りになって、時間潰しがてら店内うろうろしてたらプラトンの饗宴見つけてよんでたら、これがめっちゃ面白くて、なんかみんなで「エロス」について喋って、一人一人自分が考えるところのエロスについて発表していくんやけど、それもおもしろいんやけど、なんか一人(後にアリストパネスだとわかる)がしゃっくりとまらんくなるねん。(丹澤、南出笑う)そんでなんか医術に長けたやつが、次俺の発表の番やからその間に、しゃっくり止めるとっておきの秘術があるからやっとけと言って、「息を止めろ」とか「うがいをしろ」とかいうのよ。

 

丹澤
全部知ってるやつじゃん

 

稲垣
そもそもなんでしゃっくり止まらんやつの話も残ってんねんというのもあるんやけど、、(稲垣のマスクの片側の紐切れる、が、話し続ける)これがプラトンの伝え聞きの伝え聞き(ここ違ったらごめん)を書いてるっていう構造にもなっていて、まあそこが後藤明生が面白がってた部分でもあるわけだけども、あの、これ南出くん、ホッチキスある?

 

二人、稲垣のマスクの紐が切れて垂れ下がっていることに気づき、笑う

 

南出
いつからそうなったん

 

稲垣
いや、いま。いま。

 

丹澤
しゃっくり止まらん話ししてる人が、マスクの紐切れてるのウケる。


稲垣
いや、そんなことよりですよ!。(「ドサッ」と印刷してきたシェイクスピアのお気に召すままの戯曲を置く)これ、思ったよりめっちゃ長くて、早く読み始めちゃった方が、よいかも

 

丹澤
あれこんなに長かったんだ

 

南出
あ、でもあれも考えてきたよ、「松風」の現代版

 

稲垣
あ、じゃあそれからやりますか。僕も考えたよ

 

丹澤
わたしも考えてきましたよ

 

稲垣
じゃあ、僕はさっき電車で設定だけ、テーマっぽいとこだけ思いついたので、先に発表しますわ。

 

(((((稲垣版「松風」))))))

うだつのあがらない生業、小舟、生きていると言われない

涙に濡れる、身も心も、

この世で生きるつとめはいつまで果たせば良いか

野の草の露→日の光で消える、が、しかし、私は腐っていくだけ

かすかに見える、かすかに聞こえる。

汐を汲む、そこに映った月を汲む→月は一つけれど姿は二つ

 

-------

濡れる→乾く
乾く→潤う

腐る、水分がある、
ミイラ、乾燥している、腐らない

乾いた二人

二人、乾いている

濡れた二人、

二人、濡れている

果たせない目的、待つ

忘れている目的について、
かすかに見えることについて、

 

☆松の描写→〇〇の描写→〇〇の描写→〇〇の描写→草の葉の水滴の描写

 

女1
葉が、

女2
うん、

女1
痛くて、

女2
うん、

女1
針が、

女2
うん、

女1
伸びてて、

女2
うん、

女1
ゴツゴツとした幹が、

女2
うん、

女1
うねっていて、

女2
うん、

女1
ボロボロと落ちそうな皮が、

女2
うん、

女1
ひっついていて、

女2
松ね、

女1
そう、松、

女2
松がどうしたの?

女1
どうしたってこともないんだけどこの松ね、

女2
この松、ね、

女1
他の松じゃなくって、この、松ね、

女2
ああ、なんかね、存在感あるよね、

女1
触ってみて、

女2
え、なんで、

女1
いいから触ってよ、

女2
いいよ、

女1
わたし、知ってる。

女2
なにを?

 

南出
んんー、これは説明してもらわんとわからん

 

丹澤
難解だ

 

稲垣
点線より上の部分が読んでて面白いなと思ったところで、この生きていることの覚束なさ、涙で身も心も濡れる、それから野の草の露は日の光で消えるけど、私は腐っていっちゃうっていう。あとはこの話の中で松(待つ)ってことがすごい重要なテーマとしてあるんだけど、それを待ってるのに何を待っているのかわからなくなっちゃった人たちとして存在させてみた。もうそれは果たせない目的で、どこで待てばいいのかもわからなくて。でもかすかに見えている何かをとりあえず待っている。それと、濡れている人と、乾いている人が舞台にいたら面白いかなって思って。乾いてるのと、濡れてるのだったら、濡れてる方が潤ってる感じがしていいイメージだけど、松風はそれを「腐っていく」として悪いイメージで捉えてる。乾いていると腐らない、だからミイラは腐らない。

 

南出
目的も忘れて、というか待つこと自体が目的になって、ただただ「存在」だけしちゃってる感じがいいね

 

丹澤
松風のこの「待つ」っていうのは結構粘着質な待つだから、濡れてるってイメージとあっているよね

 

稲垣
そう。濡れてるって言っても真水じゃなくて海水だから、ベトベトなのよね。まとわりつくような濡れ方なのよ。

 

南出
じゃあ次は、僕が発表します。

(((((南出版「松風」))))))

ワキ:建築学
シテ:男
ツレ①:松風
ツレ②:村雨

 

前場

海辺。かつては臨界商業施設であった、今は廃墟となっている建造物がある。若者がくる。
若者は建築を学ぶ大学生で、その建造物の写真を撮ったり、ノートに簡単なスケッチをとったりしている。

 

老齢のスーツ姿の男、現れる。男のスーツはかなり上等のものであるが、よく見ると古めかしいデザインである。ぼんやりと建造物を眺めている。

 

建築学生「この辺の方ですか?この建物についてご存知ですか。自分は大学生で建築の勉強をしてるんですが、これいまは廃墟となっちゃってますけど、なかなか美しい建築物ですよね。」

 

男、この建造物の由縁を話し出す。この土地は昔から塩の生産がさかんであったが、ある時にこの土地に商業施設を建設するということになった。不動産会社やら建設業者やら、都会から大企業がやってきて、この場所に暮らしていた人たちを追い出して、干拓事業をはじめた。当時はバブル景気であらゆる場所に莫大な費用をかけて同じような大掛かりな商業施設やホテル、テーマパーク等が建てられたが、ここもその一つであった。
ここの建設を担当した一人の若いデベロッパーがいた。当時大手不動産会社の社員であった彼は、好景気に沸く日本の機運と一体化しているように、血気盛んな若者であった。

 

彼は発展していく日本と、かがやかしい未来を夢見ていた。

 

地元の人たちは当初開発に強く反対したが、彼は地域の発展のためにこの土地がいかに重要であるかをこんこんと説明し、今の仕事とは比べられないほどの利益を生んで、実際住民のみなさんの生活も良くなるのだということを熱意に満ちた口調で説明した。最終的には彼の地道な説得と熱意に押し切られる形で、この土地の権利は彼の会社に譲渡されることとなった。

 

仕事が順風満帆で進む中、ある日彼はみた。
仕事が終わってとっくに日が暮れた頃、穏やかな海に月の姿が浮かんでいる美しい景色と、二人の汐汲み女の姿を。あんなに若い女も塩作りをしているのだと、彼は少し驚いた。遠くから見ても彼女らは非常に美しかった。沖には小さな漁り舟の影がかすかに見え、雁の姿やむら千鳥の形が夜空を背景に月明かりに照らし出されていた。野分、汐風、そのいずれもが秋の感慨をさそっていた。寄せては返し、寄せては返す波の中、二人の女は汐を桶に組んでは運んでいた。

 

村雨「あら、月が桶の中に映っている」
松風「ああ嬉しい、ここにも月がある」
村雨「月は一つ けれど」
松風「その姿はふたつ」

 

二人の女の会話とそれに続く楽しそうな笑い声が潮風に運ばれて聞こえてくる。

 

そのとき、今まで感じたことのないような感情が彼に湧いた。
「私はこの世界でほんとうに生きていると言えるのだろうか。」
自分がひとりぼんやりと小舟に乗って、夢のような、儚いこの世を渡っていく情景がふと目に浮かんだ。

 

彼は急いでその考えを打ち消し、ホテルに帰り珍しく酒を飲んで寝た。次の日からは何事もなかったようにはたらいたが、あの夜以来、二度と二人の姿をみることはなかったが、彼の心の隅にずっと残って離れなかった。

 

そして、ついに施設は完成した。新聞やニュースなどでもこの臨界商業施設のことは報じられ、多くの人が訪れた。
しかし、まもなくバブルが崩壊した。
他の多くの場所と同じように、この施設も廃業した。今ならわかる。私が作った建築がこのように朽ち果てて、歴史の中に埋没して過去のものとなってしまって、私がやってきたことはなんだったのだろう。私の人生、それはあの汐汲み女たちと同じように脆く儚いものではなかったか。

 

建築学生「あなたは誰です。どうして急に自分のことのような話し方をするんです。」

男「私はこの土地と、この土地に住む人たちの生活を奪った張本人です。」

男は消える。

 

後場

男と松風・村雨が海辺に佇んでいる。

 

 

丹澤
ドラマみたい

 

稲垣
ドラマみたい

 

丹澤
『バーフバリ』思い出した。最後の最後に「裏切り者は自分だ」と告白する感じが

 

稲垣
そんなんあるんだ。

南出
能の場合、シテが出てきた時点で、「どうせお前やろ、本人」てわかるけどね(笑)

 

丹澤
たしかに(笑)

 

南出
「松風」の行平に対する強い思慕っていうのが、特定の個人にそこまでの感情持つのが現代版にするときに難しいなと思って。だからここでは「土地への慕情」みたいなものにしたかった。松風と村雨は言葉を選ばずに言えば「やり捨てられた」って感じだけど、それが高度成長期の乱開発によって壊された塩の産地である二人の海人の故郷という風にして。でも事業に携わった本人である男も、自分が作った建物が廃墟になっているのを見て、「自分の人生はなんだったのだと」思うという。その後悔の念と、松風たちの時代→高度成長の時代→現代までの人間によって色々と変えられてきた土地の風景とを絡めて出したかった。でも、思ったのは、こういう叙情を表現するのは、やっぱり能が音楽劇の形式であるのが強いっていうか、これを現代版にするなら、維新派くらいの規模で幻想的な表現でやらないとうまくいかんやろなって思った。

 

稲垣
では、最後は丹澤さんお願いします。

 

丹澤
印刷してきたので、ガッキー、読んで

(((((丹澤版「松風」))))))

相談カテゴリ:恋愛、家族
質問者:マツカゼの妹
 
Q 真剣な相談です。何年も前に恋人をなくした友達が、ずっと彼への思いを引きずり、成仏できずに苦しんでいます。どうしたら彼女を救うことができるでしょうか。
 
恋人をなくしてずっと引きずっている彼女を成仏させてあげたいです。
私の友達の話なんですが相談させてください。
 
友達のA子は東京から地方転勤してきた男性と交際をしていました。
A子とA子の姉が実家の仕事をしているときに(実家は老舗の塩屋さんです。)、引っ越してきたばかりの彼のほうから声をかけてきたそうです。
3年がたち、彼は東京に戻ることになりました。東京に戻る前に、彼は忘れてくれと言いました。彼ははっきりといいませんでしたが、おそらく東京に奥さんか彼女がいたのではないかと思います。(うすうす気づいてはいましたが、彼を失うのが怖くて問い詰めることはしなかったそうです。)
A子がずっと待っているからと伝えると、彼は自分の帽子とジャケットを「自分と思って」と置いていきました。A子はそれを大切にしていましたが、二度と彼は戻ってきませんでした。二年ほどたったある日、東京から警察の人がやってきて、彼がなくなったことを知りました。殺人の可能性があり、彼とA子との関係を聞かせてほしいといわれました。その後事件性のない病死だったと連絡を貰いました。
 
A子は彼がなくなったことはわかっています。でも、彼を待つ、という気持ちを捨てられず、死んだ彼を待っています。ほかの人を好きになったり、別のことに興味を持ったりすることもできずに、どうしたらいいかわからず苦しんでいます。ほかのことにも無関心になってしまい、何もすることもできないまま、いたずらに時を過ごすばかりです。
どうしたら彼女の苦しみをやわらげ、休ませてあげることができるでしょうか。
(真剣な相談ですので、茶化すような回答はご遠慮ください。)
 
追記:
実は彼女の姉も、同じ男性と関係がありました。お姉さんのほうは落ち込むばかりではなく、神経症も患っている状態です。
庭にある松の木を彼のように錯覚し、話しかけたり抱きしめたり、しています。
姉妹で同じ男の人を好きになってしまうなんて、おかしいかもしれませんが、どうすることもできなかったのです。
 
ベストアンサー : タビノソウ
A. ご友人はつらい体験をされましたね。
 
この世の中には自分でどうにかできることと、どうしようもできないことの二つがあり、人を思い慕う気持ちも、己ではどうすることもできないものの一つかと思います。
ご自分の気持ちと向き合うことは苦しいことですが、ご友人様は苦しみながらもご自身の思いをしっかりと抱えて生きてこられたのですね。
その強き魂がその強さゆえに、この地から離れられない状況を作ってしまっておられるのだと思います。ご自身で苦しみや悩みをその手から解き放ってあげることが一番の近道ではないでしょうか。手放すということ、それもまた強さです。
熱き恋心をなかったことにしたり、忘れようとするのではなく、そこにあることを認め、その愛と出会えたことに感謝し、それを自身の意思で手放すことで心が自由になれるのではないでしょうか。
 
わたしには祈ることしかできませんが、お二人の心が安らかになりますよう祈っております。
 
【追記】
追記、拝見しました
松は日本では神の宿る神聖な木とされ、「神を待つ」という意味から「松」となったといわれています。また、「行く末を待つ」という言葉を語源とするとも言われます。
お姉さまが松の木を頼りにしたのも、神を頼りにされての行動ではないでしょうか。お姉さまもおつらかったのでしょうが、松の木にすがることでご自身のお命をこの世にどうにかとどめておられたのですね。姉妹で同じ男性を愛してしまうとは、数奇なことと思いますが、お二人一緒だったから同じ苦しみを理解し、助け合って生きてこられたのではないかと推察いたします。
 
質問者からの返信
 
優しい言葉をありがとうございます。
 
一番私の気持ちに寄り添ってくださり、思いやってくださったタビノソウさんをベストアンサーとさせていただきました。
ほかのみなさんもさまざまなご意見ありがとうございました。
 
これで成仏できそうです!
 
〈その他の回答〉
A. 信じられないような話ですね。申し訳ないけれど、姉妹で同じ男に遊ばれるなんて…と思ってしまいました。世の中にはもっと素敵な男性がいると思いますよ!来世では、幸せな恋をしてください。人生もっと楽しんで!
 
A. お姉さんのほうは精神科に連れて行ったほうがいいんじゃないですか。妹さんの気持ちまでやられてしまいますよ。男性との関係もさることながら、お二人の関係も共依存的だと感じました。お互いを同一視して、同じ人を好きになっている状態なのではないかと。まずは姉妹の関係を見直してみることをお勧めします。
 
 
A. うーん。ちょっと男性がひどいんじゃないか?下手したら奥さんに訴えられていたのでは?死んだのも女がらみなんじゃないかと思うが。本当の話なら、ですが。。。。。。お姉さんの話は盛りすぎ。
 
A. 昔の自分を思い出しました。
大学生になって東京に行くことになった彼に「待っていてほしい」といわれました。高校を出て私は地元で就職しましたが、同級生だった彼は東京の大学に進学後、地元に戻って就職する予定でした。最初は頻繁だった手紙のやり取りがだんだん減り、元気にしているか心配していたところ、「東京で就職する、ぼくは帰れない」と手紙が来てリクルートスーツを着た彼の写真が入っていました。約4年、今思えば短いようですが、当時のわたしにとってはとても長い時間。彼が帰って来たら結婚すると友達にも言っていて、狭い地元では私たちが付き合っていたのをみんな知っていたし、精神的にかなり追い詰められました。当時は苦しかったけど、その後、ご縁に恵まれ今は素敵な夫に出会え、娘二人と家族幸せに暮らしています。
質問者様のご友人とは状況が異なると思いますが、苦しみは理解できます。
質問者様のご友人のつらさもいつか晴れますように。
 
 
ほか

 

稲垣
最後、「木綿のハンカチーフ」やん!(爆笑)

 

丹澤
最後の方、ノってきちゃって。

 

南出
いやぁ、回答者がみんなリアル。こういう人いるな〜っていう(笑)
。。。。をたくさんつけるやつあるよね。

 

稲垣
聞いてないのに自分のこと語り出すのもね

 

南出
自分でも書いてみて、松風と村雨が二人っていうのが、難しいなと思った。

 

丹澤
でもそこが面白いところでもあるよね。

 

稲垣
松風が暴走して村雨が止めるって感じやけど、名前の意味的には
松風→松が揺れるほどの小雨
村雨→ざあざあ降り
って感じらしいよ。あと、松風と村雨は最初はなんか違う名前だったらしい、なんやっけな、なんかもっとダサい名前で、行平がちょっと引くみたいな。(調べて)「藻塩」と「小藤」や。

 

南出
「藻塩」はたしかに嫌だね(笑)

 

と、なんやかんや「松風」で割と盛り上がり、一時間半くらい喋って、まだ丹澤さんの講義と『お気に召すまま』の本読みがあることに気づき慌てて先に進む。

 

丹澤
それでは、喜劇講義を始めます。レジュメを作ってきました。

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1悲劇と喜劇
悲劇......「ヤギの歌」っていう意味で、別に悲しい劇だから「悲劇」ってわけじゃない。
英雄的人物が自分の運命やその苦難について悩む。答えの出ない苦悩。

喜劇......「お祭りの行列の歌」が起源。悲劇と一緒で、訳すときに悲劇と対応するものとして「喜」という語をあてたが、笑えるものばかりというわけでもない。
あえて滑稽な状況を作り出すことで問題を浮き彫りにして観客に現実の問題を考えさせる。
例えばチェーホフの「桜の園」とかは悲劇に見えるけど、チェーホフ自身は「喜劇だ」と言っている)

 

ギリシア喜劇の特徴★
①題材が神話ではない
②現代が舞台で、同時代〈いま〉をえがく
③時事ネタや下ネタがある
④生理的状況を利用→共感して笑える
⑤風刺的役割・・・政権批判(ここで日本のお笑いは政権批判をしない、してもあんまり面白くならない、という状況を3人で嘆く)

 

2喜劇、具体的に
貴志哲雄『喜劇の手法 笑いのしくみを探る』から、喜劇の特徴をカテゴライズ。
(画像を参照)

 

丹澤
さて、これらの特徴を踏まえた上で、シェイクスピアの『お気にめすまま』をよんでみましょう。

シェイクスピアの『お気にめすまま』(福田恒存訳)を3人で読む。


〜〜〜〜三時間後〜〜〜〜
疲れた。疲れた、もうだめだ。何が「お気に召すまま」やねん。いや、面白かったけど。めっちゃ笑えたけど。長い、これは疲れ果てましたわ。(3人とも疲れ果てる。)

 

感想
・とにかく人が多い
・前半のシーリアおいしい役。みんなやりたいやろな
・場面がばんばん変わっていく
・第三幕二場が長すぎる
・稲垣歌上手い
・道化のタッチストーンがきれっきれ(機知合戦が面白い)
・ジェイキスが一番過激派でやばい
・タッチストーンとジェイキスの絡みがしつこくて笑っちゃう
・「この世は舞台」の大演説、唐突でびっくり
・途中一瞬出てくる騎士オリヴァー・マーテクストとウィリアム、絶対いらんやろ

 

丹澤
さて、実はまだ講義の続きでした。いきましょう。

 

3ヴォードビル
フランス発祥の歌入りのドタバタ劇。ステレオタイプな人たちがでてくる。吉本新喜劇みたい。当時のブルジョワジー(成金野郎)を馬鹿にした話が人気があったが、時代が変わってブルジョワジーと言われてもみんなピンと来なくなり廃れる。

 

4日本の喜劇
7世紀に伎楽→猿楽→狂言(前回もやりましたね。)
・俄(にわか)・・・即興な滑稽寸劇で庶民の芸能だった
曽我廼家五郎・十郎の曽我廼家劇・・・1904年に初めて喜劇という名称がついた
大阪で歌舞伎から派生する形ででてきた(一つ前の朝ドラ『おちょやん』の話ですな)
→内容は前近代的で低俗な教訓性しかなく、文学者や劇作家からは無視されてた
→松竹と結びついて発展。
・大正〜昭和にかけて浅草オペラ(レビューの形式)
・1931年東京新宿ではムーラン・ルージュ
 インテリ層を狙った社会性のある風刺の効いたコント・バラエティ

⇨のちのアングラ・小劇場運動につながっていく。

 

【まとめ】
喜劇にとって重要なことは「観客だけがすべてをわかっている」ということ
バナナの皮を踏んで滑るのは嫌だけど、滑っている人をみているのは笑える。
「観客は安心してみることができ、舞台上は不安な状態」が笑いを生むのであります!

 

稲垣・南出
パチパチパチ

 

丹澤
ありがとうございました。え、もう20時じゃん。

 

(14時から初めて終わったのが20時であった。ヘトヘト。本日はこれまで。)


★次回の予定
来週は歌舞伎座にて「四谷怪談」をみます。玉三郎仁左衛門の共演という歌舞伎ファンにとってはたまらない公演。歌舞伎初心者の3人ですが、果たして楽しめるのか!?