カハタレ日誌

カハタレの稽古の様子

20221015夜「荷物」椎名麟三、からのモリエリ前面トーク

20221015昼〜夜
伊原さんの神話ワークショップが終わり、木嶋さんの本番が近いため木嶋さんと丹澤さんが抜けて、伊原さんとまりさんと南出くんと稲垣の四人で時間あるので戯曲を読む。
 
「荷物」
 
を読む。
 
・大体の話
日曜日の午後、赤い毛糸を二人で鞠にしている夫婦、一見幸せそうな光景だが、夫は死にたがっている。妻は夫を罵っている。
配達人夫によって荷物が送り返されてくる。
中身はどちらかの浮気でできた子供のホルマリン漬けらしい。
どちらの子かお互いの言い分噛み合わずに夫婦喧嘩はどんどんエスカレート、
俺は焼き芋が好きだ、ホッカホカの焼き芋がなあ。それ以外なんにもいらない、
夫婦なんて存在し得ないんだよ。社会社会うるせえんだよ、あなたは人間じゃなくケダモノよ、馬よ、大根足が、なんかめっちゃ喧嘩ばかりしてて面白い話。(ざっくりすぎてすみません)
 
まり
いつブチ切れるかわからないのが面白い。
 
伊原
なにが真実かわかんない。
 
南出
喧嘩してるけど不条理、
金属バット殺人事件と同じ雰囲気を感じた。
 
稲垣
なんか愛も感じるんよね、
 
南出
夫が皮肉ばっかり言ってるのに、なんだかんだで妻に従順なのが面白い。
 
伊原
二人の夫婦の全力ごっこ遊び、儀式めいている。
喧嘩という遊びをしてる感じ。
 
南出
人形とかもね、
 
伊原
お互い具体性ないまま、荷物で送られてきた中身を自分の子か相手の子か、言い合ってる。
これ自体が演劇構造を持っているよなって。
 
まり
配達の人夫、まともそうに見えて結構やばい人だなって。
 
伊原
物語自体のツッコミ系なのかなって。
 
南出
ボケの感じもすんねんな。
 
伊原
虚構への意識がでかいのかなって。
意味なんてないよ、だから面白いんじゃないかって。セリフでも言ってるけど。
 
南出
二人とも生活は安定してて、夫婦生活も特にロマンチックでもなかったけど、みたいな、70年台の大きな問題のない一般家庭の虚しさみたいなの、切実に迫る問題がないのが背景にある感じ。
 
稲垣
そう言うとこが椎名麟三好きで、
焼き芋が好きだ。のくだりとかすごい好きなの、俺はこれが大好きだ、これがあれば社会なんてもちろん、他に何もいらない。って、笑えるけど、なんか真理って気もする。
 
 
伊原
物語として具体性がなくない?
 
稲垣
ベケットの意識があると思う。
 
伊原
ベケットや別役よりかは現実に近い。実際にある現実なのに、展開されている虚構感がある。
椎名麟三ドストエフスキー好きでキリスト教の洗礼受けてる背景含めて、キリスト教との関係が分かるとより楽しめるのかなあって。
 
まり
ケダモノって罵りとかもなんかあるのかなあって。
 
稲垣
牛とか馬とか言うよね。
 
まり
動物と人間みたいなやりとり結構多いなって。
あと、人夫の存在とか深読みできるなって思った。
 
伊原
ゴドーを待ちながらに近いよね。
少年みたいな感じで出てくる。配達人夫。
 
南出
人間矛盾の諸相が明瞭化される装置=荷物って解説に書いてる。
パトカーのサイレンの音とか不吉感出してくるよね。
 
伊原
懺悔的なセリフがでてくるんだなあ。
 
稲垣
そうですね、荷物の子がどうやって生まれたか、二人のそれぞれの噛み合わないエピソードがなんというか、懺悔感というか、吐き出すことによる気持ち良さみたいなの感じる。
 
まり
懺悔の快楽っての面白いですね。
 
伊原
自白でしか事実が語られないから、本当かどうかわかんない、お互い本当に浮気してるのかどうかわかんない。
 
稲垣
愛人に電話したら火葬場に間違えちゃうってとことかそんな感じすごいですよね、愛人の電話番号なんて本当にあるのか感というか、ここで火葬場に間違えちゃって、妻にあんたの行き着くとこは火葬場なのよって馬鹿にされるの椎名麟三ぽいんですよ。
 
まり
昔話が不正確な人っているよね。
自分の中でいい記憶に変わったりとか、つらすぎて変わっちゃったりとか、記憶が変わるってのは身近に起こることのような気がする。
 
伊原
喜劇でなくて、ホラーとして成立するよなって。
素が面白いから、奥にあるものをちゃんと捉えないと滑った公演になりそう、浅くなりがちそうだなあって。
 
まり
「物」って漢字の成り立ちがおもしろくてさ。左半分の「牛」は牛そのもので、右半分の「勿(なかれ)」は弦が切れる様子を表した象形文字なんだけど。牛が死ぬ、生き物が死ぬと「物」ってことらしい。ゾワッとする。
なんか別役ぽいよなって。
あと、長子って名前に由来的なのあるのかなあって、反射的に思いつくのは岩長姫だけど。
古事記に出てくる話で、見た目はアレだけど永遠に続く命を持った岩長姫と、命が短いけど美しい木花咲耶姫の姉妹がいて。天照大神の孫が地上で結婚するとき、石長姫もお嫁にどうかって勧められたんだけど、木花咲耶姫だけでって断ったんだよね。
人間に寿命ができたのは、石長姫を拒否ったからだって。
 
伊原
花の命と岩の命って話ですね。
 
 
以下、モリエリ稽古場発表
 
・夜、モリエリさんが「とある恋愛のカタログ」公演内でやった稲垣の戯曲「前面トーク」を見れなかった人もいるので、セリフ覚えてるうちにやりたいとのこと。稽古場移動して、発表会が始まる。
 
日舞稽古で伊原さんのワークショップ途中で抜けてた徹平さんが舞い戻ってくる。
 
・四回ぐらいしか喋らない男役を稲垣が奮闘する。
 
・暗転が必要なので徹平さんに頼む。
 
・終わった後、モリエリさん中心に演技や戯曲の話が始まる。
 
・感動した。
 
・さよならアワーアワーって戯曲上演から何年も経って、モリエリさんの中で花開いてる感じがして感動した。セリフをドライブする感覚がわかったらしい。
 
・劇場創造アカデミーで学んだ佐藤信のセリフ覚えメソッド(文節で区切り、意味で覚えない)がめちゃくちゃ活きているらしい。
 
・アポックでやってた時は蜘蛛の巣をはわせるような感覚があったらしい。
 
・飲みに行った。
 
・コーンのかき揚げが居酒屋にあると美味しいから頼んだほうがいいらしい(モリエリ談)
 
・モリエリさんの食レポがうまい。
「ニラ玉ってフワッフワで美味しいんだけど、ちょっと食感に物足りなさを感じる部分があって、だけどここにたくあんが入ることで食感面もカバーできている。」
 
・伊原さんがチャーハン一人で食い切ってお腹いっぱいになってた。
 
・セリフの中にはいろんな角度から見れて意味さえ超えてそのセリフ自体がドカッて残ってくる「しゅみセリフ」(関西弁?おでんの大根につゆがしゅんでるみたいなこと)があるって話してたら、柳美里さんが「魚の祭」で岸田國士戯曲賞取った時、選考委員だった別役さんが全てのセリフに唾がついてるって表現していたって話をまりさんがしていて、そこから柳美里トークが始まった。
 
・徹平さんもモリエリさんも劇場創造アカデミー同期なので、昔話に花開くよなあて。
・伊原さんも俳優座養成所の時のこと話してた。
 
次回は11月13日(日)13時から、
稲垣の戯曲ワークショップ予定です。
今のところ藤子不二雄の漫画を参考に演じることで変わるセリフの実験みたいなことしたいなと考えています。
なんか書いてみたい人気軽にカモンです!
なんらかのワークショップしてみたい人、劇作でも演技でも身体表現でもレクチャーでも、なんらかのワークショップしてみたい人も募集中です。
少し謝礼出ます
romantist721@gmail.com までメールかなんらかの手段で稲垣まで連絡ください。