カハタレ日誌

カハタレの稽古の様子

20221015昼、伊原雨草、神話をつくるWS、2回目

20221015参加者、稲垣、木嶋さん、徹平さん、丹澤さん、南出くん、まりさん
 
 
稽古場に着くとなんだか久しぶりの巣鴨だからか休日感が漂っている。
徹平さんのカステラと木嶋さんのカツカレーパンが差し入れ。
美味しかったようー。
巣鴨の稽古場のおばちゃんが相変わらず話しかけてきた。(このおばちゃんとは昔夜空を見ながら星の話をしたのでマブダチ感がある。)
 
なんだかんだで始まる伊原雨草の神話を作るワークショップ。
前回の宿題として、腸内世界の神話をそれぞれ、戯曲や小説やパフォーマンスや形態問わず考えてくる。
 
そして、腸内細菌について思いを馳せた猛者どもの発表が始まった。
 



 
●徹平さんの発表
 
徹平
身体表現をやらないといけないプレッシャー感じつつ、
 
みんな
誰もそんなプレッシャーかけてませんてー、
 
徹平
歌舞伎とか、人形浄瑠璃を目指して作った。
救世主ヤクルトを、より実体が無く、善悪つかないようにしたいなと思って、腸内細菌の生態系を意味する腸内フローラに因んで、救世主フローラと名付けた。
腸内細菌の内訳は、10%悪玉、20%善玉、70%日和見菌らしく、バランスを見て善玉にも悪玉にもなるらしい日和見菌をモチーフにしたヒヨリミ神が物語の主役。
 
 
・あらすじ
ヒヨリミ神を善に導くスジャータとのロマンスとかありながら、ヒヨリミ神は腸内世界を旅して、いろんな菌を仲間にして強くなっていく。
 
・プロローグみんなで読む、
 
徹平
僕が口三味線でやります。
 
みんな
口三味線?
 
徹平
まりさん、琵琶法師とか義太夫節みたいな感じでやってください。
 
みんな
無茶振り!
 
・驚くほど上手いまりさん
 
徹平
現実世界のヤクルトは悪いわけではないけれど、この神話の中のヤクルトは、どんどん街で売っててどっから流れてくるのかよくわからないのにありがたいお薬だってみんな買う、悪い菌だけじゃなく、善いか悪いかわからない菌も殺しちゃうって設定。近隣国同士の争いに大国が介入して全世界の統制をとろうするのはどうなんだろうって話にも繋がり。
 
稲垣
仲間のぐんぐんグルト太子とか良いよね。
関係図見ただけで何か書きたくなる。書く意欲そそられる。
 
木嶋
バニラヨーグル島とかもすごくいい。
 
徹平
腸内のひだの世界とか、上の世界とか、色々、この菌はどこに住んでるとか考えて行っちゃう。
世界を広げて行っちゃう。
 
まり
住もうとしてるよね?移住計画立ててない?
 
徹平
ナウシカのイメージが大きい。
 
南出
キャラをたくさん増やして関係性で結んでそれが世界を広げてるのが面白いなって。
 
丹澤
フローラのセリフが唯一神感が出てる。
 
徹平
SF映画も絶対そう、便利ですよ、みんなこれ使いましょうに、惑わされてみんな洗脳されていく。そんな意識で作った。
 
まりさん
いま現在と繋がっているのが面白いなって、
最後の流行病で大量に死ぬとか、
コロナが始まってからいつ解決するの?ってストレスの中、圧倒的な正しさ、絶対的な正解を求めてしまう2020年代の人間と繋がってる気がする。
コロナのことがあって、価値観に揺さぶりをかけられたって話とも関わってる気がする。全体をつらぬく通奏低音というか。
 
伊原
面白いなって思ったのは、地図とか、神話でもこういう地図的なものが多い。
例えばインドだと、大地を亀が支えているって世界感を考えている。
キャラの中で、これってキャラが残っていき、違うかもってキャラが削られて、それぞれの神話がつくられていく。
一発目ですごく良いの出してくれたなあって。
 
●稲垣の発表
徹平
腸内自由党ていうのが、天空の巨大生物倒したいからそれをやってあげましょう、ってのを売りにしている。真田雲様が実は悪者じゃない、ってのが良いなって思った。
 
稲垣
日本の昔話で太陽をやっつけようとする昔話とかあって。
そういうイメージで真田虫を置きたかった。
 
徹平
目に見える、オールドスタイルの悪い感じと、ATP生産するとかいう現代ぽいセリフがごちゃ混ぜになってる感じが神話っぽいなって。
お楽しみを提供しますよってのが僕もやりたかったことで共通してるなって。
真っ暗って表現、夜を怖がってるのがガッキーぽいなって。
 
木嶋
繰り返しの単語とかすごく面白い、
みんな知ってる商品名をそもそも使うのはどうなんだろう感があるよね、
 
伊原
今回は名前をヤクルトにすることでヤクルトの要素的なものを抽出していると思う。名前に意味があるっちゃあるけど、ないっちゃない。
インド神話ラクシュミという女神は名前自体に吉祥って意味があって、これは意味から神が生まれた。
あと、名前自体も変化していく。ルドラと呼ばれる暴風雨の神がシヴァという破壊神に名前が変わったりとか。
地方地方で名前が違ったりとか。
 
南出
意外と社会派、というか、
今の日本のポピュリズムを象徴している、こんな政党ありそうっていうか、
ごぼうの党がフィクションでなく現実に起こっているってのが怖い。
ヤクルトの言ってるのも割と良いこと言ってるけど、人間側のエゴなのかなって、
真田雲て自然と人間の対立みたいなの、
この後の展開もありそうだなって。
 
丹澤
徹平さんもそうだけど、現代っぽい作品に仕上がっていて、なるほどって感じ。
社会的なものとか普段ガッキーが書かなさそうなのが出てきてるのは今のガッキーの潜在意識なのかなって、
 
稲垣
そうね、そういうものを書こうとして書いてるわけでないから、出ちゃったなくらいのとこがあるので、潜在意識なのかも。
 
まりさん
腸内環境っていう生態系、どちらかと言えばオーガニックで温かくて繋がり合った世界について書こうとするんだけど、なぜか真逆の質感を持ったテキストが出てくるっていうか。
自分の書いてるテキストについても同じ疑問を持ったんだけど。
たまたまいつか誰かが書いてビンに入れて海に流した手紙を、たまたま読んでしまった感じというか。孤独?
 
 
伊原
設定が面白いなって。
大体、神話って神が取り扱いづらいから人間がよく出てくる。
対比としての自分達の知りうる存在を出してくる。
神々しいものを作り続けることができないから、自分達に寄る。ゼウスは浮気症とか、妻に弱いとこがあるとか、自分達に近い設定が神にも出てくる。
徹平さんもそうだけど、自分達の実生活から神を見ている。
選挙とか宗教とか、そういうものが反映しているってのは良いことだなあって思った。
自分達の世界、社会の目、
昼が真っ暗って設定が面白いなって。徹平さんが作った世界観にも合いそうだなって。
 
 
●南出くんの発表
 
南出
良いか悪いか判断できないみたいなところで書いた。
お腹の中の戦争みたいなことで、癌に勝てるかなって。
 
稲垣
仕事中に絶対に出さない長セリフ、それが出ちゃうくらいの状況なんだなて。
最初の幻想のが繰り返されるのがいい、一回二回だと幻想的って言葉は抽象的でちょっとってなっちゃうんだけど、何回も繰り返されると成立するなあって、
イヨネスコの「禿げの女歌手」冒頭の英国のが繰り返されるの、英国の椅子に座り英国の夕暮れが、ってト書思い出した。
 
木嶋
数が多いのが勝つって話が永遠のテーマだなあって。
 
南出
ヤクルト1000の1000億個って数が意味わからんくて面白いなって。
 
丹澤
良い戯曲だなあって思った。
 
南出
母の中で戦争が起こってる。
母の中で神話が起こってる世界観。
 
まりさん
母親の腸内っていう神話の空間があって。それから、このお嬢さんにとってみると、母親が生きるか死ぬかとか、容体がどうなるかというのは、もうこの空いっぱいに大嵐が起きたり地面が割れたりするようなスケール感を持った問題なのかなって。主観的には世界全体の問題。なので、その2つの空間がなんとも言えずリンクしてるのが、神話の見せ方としておもしろいなぁって。
 
伊原
冒頭がちゃんとイメージを作ってる。
腸内神話のワンシーンがある。ここが重要。
南出くんは神話の解釈をした上で、自分の世界観に落とし込んでいる。
神話を活用した立派な戯曲。
予備知識があると説明を省けたりする。
こういう使い方がありだし、面白いなって。
 
●丹澤さんの発表
 
丹澤
全部あらすじです
口であらすじを二葉さんから聞かされるパターンが多くて、自分でなんか書こうとなったらこういう形態になった。
神話ってなにかを倒して褒美として獲得する。
サルモネラ菌o157は付き合っている。そうなると三角関係。
ヤクルトレディがヤクルトを供給し続けるって設定。
 
稲垣
ヤクルトの赤い帽子が良かった。こういうのが残るよなあって思ってるんですよ。
ドラクエ感あるし、ドラゴンボール感あるし、色々MIXされてて面白かった。
 
木嶋
人間関係に悩んでいるが面白かった。
統制されたところって心地いいけど、窮屈だよねっていうのはどこの世界にもあるなって。
そうだよね、
 
南出
番神話感ある。口承として成立してる。
ドラマが色々起こってて、これを誰かに伝えることで違う話になって、別のバージョン生まれそうだなって。
あとなんでその行動したんって理由わからんとこがめっちゃある。
 
まりさん
なんでそんなに赤い実を食べたかったのか、食べたら死んだのか、理由のわかんない感じがめっちゃいいなって。
おとぎ話とか宮沢賢治とかでよく出てくる、理由が書いてない感じ。なんかわかんないんだけど、犬は泡を吹いて死んでしまいました、とかさ。理由はわかんないけどそうだったんだ、という余白のある書き方が神話っぽくて秀逸。
 
伊原
神話だなって。
すごい口伝ぽい、これを洗練していくと詩になる。神話の始まり感があるなって。
細かい設定がちょこちょこ出てくるのが頭に引っかかりやすい。
理由はないんだけど、後から人が考える。
徹平さんは自分の思想を神話にしてるけど、丹澤さんはわからないものを、誰かに考えてくれるような作り方してて面白いなって思った。
 
●まりさんの発表、和室の一角を舞台に音と語りのパフォーマンスが始まる。
 
まりさん
最初に読んだ「クレモリスの神話」と、終わりがけに出てきた「サルモネラ神の婚姻」がザ・神話なんですけど。
ただそれが、ネットの波に乗って、ビンに入った誰宛かもわからない手紙のようにたまたまここに流れ着いた感じ。
かなり未来、人間がいるのかもわからない、人間の知性そのものが半分人工知能に置き換わってるかもしれないような世界の話です。
人工知能の暴走が起きるんじゃなくて。今もうスマホで始まってるみたいに、人間の知性がコンピュータとの癒着を進めて、脳にプログラムを一括インストールするようになった時代。それをこの割とガチガチなくだりで書いてるんですけど。
 
無性生殖で増える細菌とか、宇宙人の群れみたいなものを、私たちはなんで無機的、冷たいものという質感で捉えちゃうのかなって。ミツバチの群れのように、満たされてつながってるかもしれないのに。
まぁヒトとして個にこだわっちゃうというか。
自分の書いたものがネット上で、分身みたいに増殖して誰かに届いたり、残り続けたりする。それもある種の増殖だと感じるのだけど、それが生き生きしてるのかは分からない。
 
稲垣
たくさんなのに冷たいって言葉が象徴的だなって。
詩から一番遠い言葉、プログラムみたいな言葉、何何=ゼロみたいなの、バグ感ある言葉が繰り返されることで詩になってく感じがあって面白かった。
 
木嶋
最初読み始めた時に詩的な文章が始まって、期待感が高まり、そう変化するのか、って、ついてけないとこもありながらすごいなあって。
 
南出
紀元前から未来までの時の流れ、
先週のやった腸内の菌の世界と無数のデジタルデータの無限増殖、と時間が繋がる感じがして、すごかった。
文章がシンプルにうまい
無数にあることによって、余計に孤独になってる感じ。
データの冷たさ、と連なって、菌も冷たく見えてくる。
ウェルベックの小説みたいだった。
 
丹澤
サルモネラ菌が出てきて安心した。
この話はどこまでいくんだ。ってとこから、サルモネラ菌が出てきて安心した。
最初とのギャップがあるから効いてくる。
不安になる。スラッシュとかゼロとか、不思議な体験をしたなって。
お客さんを敢えて置いていってる感じが良かった。
 
伊原
テキスト配らず語ってくれたってのがよかったなあ。
讃歌みたいなこと。
体験的だなあって思った。
神話の始まりだなあって。
最初の詩から次に研究書的なタームになる。ここも詩的だった。
紀元前の詩からSFの詩みたいな、詩の移り変わりみたいなこと感じた。
 
●伊原さんの総括
 
一人一人考えてきたこと、バラバラだったから側面が見えたなって
 
徹平さんは世界観作っていた。
稲垣くんが戯曲にして生きている人たちなんだろうってミクロな視点で書いてて、
南出くんは神話を下敷きにしてて、
丹澤さんは神話のコア、語りの原型。
まりさん、語る、音を聞くってこと、だとか、
 
腸内神話から始まって、自分なりの解釈で色々書いてきてくれたなって。
 
もし続けるとすれば、自分なりに神話の世界を固めていくって流れになるだろうなって。今回やらないけど、そういう、神話の可能性、使い方とか役割みたいなの見えたワークショップになったなって。
 
まり
設定をガッツリやるのが難しかった。別のことが広がっていっちゃった。
 
伊原
それもいいことだと思う。
必ず外れちゃう。
 
伊原
丹澤さんの赤い帽子とか、みんなの中に残っちゃうものとかが重要なのかなあって思ってる。
 
稲垣
戯曲においての反映のさせ方として、残るものとしての属性を持ったキャラってのちゃんと使えそうな気がした。
 
伊原
リソースがあるからやりやすいんではないかなって。太陽の神として抽出されたキャラクターだとか、
概念とかもいいかなって。
 
丹澤
徹平さんと稲垣くんが悪の概念が似てるって面白いなって。
適当に生きることとか、洗脳していくことを悪のイメージが似ているのが面白いなって。
 
伊原
ヤクルトが救世主って設定があったから、悪のイメージが似てきたのかなって。
 
稲垣
そうかも。救世主が胡散臭いってイメージが似てきているんだよね。
 
稲垣
残ってく、ってのが神話において重要だなって思った時に、そういう目でまりさんの作品見たら、ただ残ってる、残っちゃてる感がある。いわゆる神話の残り方と違う感じがして面白いなあって。
 
丹澤
今の世の中なんでも残せすぎちゃうんだよね。
 
木嶋
救世主が胡散臭くなるのは、本人が滅茶苦茶喋るからだ思う。
 
伊原
聖書とかキリストが書いてるわけじゃなくて周りが書いてる。
これを考えてる社会に対する肌感が出てきてたなあって、だから救世主=胡散臭くなるのかなあて。
 
南出
僕はメタ的なものしか書けなかったけど、徹平さん丹澤さんはちゃんと世界作ってる、いなちゃんは中間ぐらいというか、その違いが面白かったなって。
 
伊原
作家性の部分だと思います。
共通項があったからそういう楽しみ方ができていったんじゃないかなって。
 
木嶋
もらったテキスト見てすごいことやったんだなあって。
 
南出
設定が面白かった。腸内がどうたらって。
 
まりさん
前回の前の日、モリエリさんが腸内フローラの調子が悪いって言ってて、それをブレスト始まった時に適当に出したらそこが膨らんで行ったんですよね。
モリエリ本人のあずかり知らぬところで実は神話の出発点、ミューズになってたっていう(笑)
 
 
次回は11月13日(日)13時から、
稲垣の戯曲ワークショップ予定です。
今のところ藤子不二雄の漫画を参考に演じることで変わるセリフの実験みたいなことしたいなと考えていますー。
なんか書いてみたい人気軽にカモンです!
なんかワークショップしてみたい人も連絡ください。
戯曲や演技はもちろん、俳句や美術や太極拳や音楽やなんでも演劇に変換してきたいので、ワークショップファシリテーター幅広募集中、相談して謝礼出します。
romantist721@gmail.com までメールかなんらかの手段で稲垣まで連絡ください。