参加者 稲垣、丹澤、南出
南出、遅れて入ってくる。稲垣、丹澤、次回公演のことについて話している。
南出 ごめんなすってー
稲垣 いやあ、今日めっちゃ決めることあるわ、決めることだらけだわ
南出 次回公演についてね、いやそれよりさ、右足が痛いんだけどどうしたらいい?
稲垣 どこ?
南出 関節の中の筋みたいなとこ。歩くと痛いの
丹澤 それお尻が凝ってんじゃないの
南出 その可能性めっちゃある
稲垣 はい、じゃあとりあえず、寝て。うつ伏せで。
稲垣の施術、はじまる。
南出 あ痛、痛痛痛痛痛痛痛痛痛、なーそれ、めっちゃ痛いんだけど
足が痛いのに、お腹の下の方を押してくる。
丹澤 あ、そこなんだ、押すの
稲垣、的確に、ツボを押していく。東洋医学の治療の概念を説明してくれながら。南出には半分以上何言ってるかわからなかった。
丹澤 なるほどね〜。私も勉強したい
稲垣 丹澤さんも、通おうよ、鍼灸の学校。
丹澤 えー
稲垣 はいじゃあうつ伏せで、深呼吸してみて。
南出 すーーーはーーーー
稲垣 呼吸入っていきづらいな、ってとこあります?この辺息入っていきづらいなみたいなとこ
南出 背中の右の左の真ん中あたりかな
稲垣 あーここね
南出 痛、痛痛痛痛痛痛痛痛痛
施術、ひととおり終わる
稲垣 これで歩いてみて
南出 あ。全然、全然違う!痛くない、痛くないよ!
丹澤 ガッキーすごいじゃん
稲垣 今度、二人とも全身治療させてくださいな
丹澤 え私も?
その後、次の公演についての打合せ。会場、俳優、スタッフ、スケジュール、ワークショップなどなどなどなど。決めることとりあえず仮で理想を書き出しいく。やりたいことに溢れてる。
稲垣 いやー、決まったね。やればできるもんだね
丹澤 決まってはないけどね。こっからだから
南出 頑張ってこー
稲垣 でさ、ゴーゴリの人物描写で、最近思ったことあってね。共有していい?
南出 お願いします
稲垣 これ読んでみて。後半のとこ。
人物描写の「枠」の話。誰かの特徴を話す時、「好きそうな映画は絶対に映画館に観にいく人」とか、「机に出したペンとかポン酢とかをしまえない人」とか、っていう「枠」の重なりでその人のイメージを結んでいく。数学の「集合」みたいに、「枠」が重なる部分が狭くなるにつれて、その人のイメージは鮮明になっていく。一方で、その「枠」の設定の仕方は、語り手によって変わるし、聞き手によっても変わる。
南出 確かに、落語でも同じ話なのに、噺家によって熊さんや八つぁんのキャラは全然違って聞こえることあるもんね。
稲垣 まさにそうなんすよ。しかもそれを聞いて思い浮かべるキャラってのも、僕と南出君では違ってるかもしんない。その誤差の積み重なり、聞き手それぞれの具体的人物像が生み出されることの面白さがあると思うんすよね、
南出 誤差っていうと、最近デリダの「差延」についての本を読んでいて、誰かが誰かとして同定されるってのはそこに差異があるからみたいな。あんまよくわかってないんだけど。
丹澤 公演の内容にも関わるんだけど、そういう誰かの「語り」って、普通は不在の存在について語ることが多いじゃん。出てこない登場人物のことを語る。でも今回は出てきちゃうよね、本人。それはどうなんだろ
稲垣 そこなんすよね。でも出てきちゃっても面白いんだと思う。たとえば目の前に真剣な顔つきの男がいても、周りが「あいつは出したポン酢が片付けられないやつだ」「近くに寄ると焼き芋みたいな匂いのする男だ」とかいう情報を前もって言ってたら、その人の見え方って全然変わるしね。
丹澤 なるほどね
稲垣 次までの宿題で、ゴーゴリの『査察官』か『外套』か『鼻』の中で、人物描写の面白いところを見つけてくるってのをやりましょう。
みんな はいー
その後公演の内容についてのアイデア出し。気遣いの話から、稲垣の学校の話、家庭での聞く人と聞かない人の話。相手が聞いてくれるからこそ話すって人もいれば、聞いてなくても話し続ける人もいる。案外、人って人の話聞いてないよねっていうことがわかったり。演劇の会話で失敗してるパターンとして、聞き手が聞きすぎてる場合があるよねっていう話とか。
稲垣がホワイトボードに書かながら喋ってた曼荼羅みたいになってた。
稲垣 今日はこんなとこで。次の稽古は7/8です〜
終わり。