カハタレ日誌

カハタレの稽古の様子

蛙坂須美WS「実話怪談における幽霊表現」

「実話怪談における幽霊表現」
参加者、稲垣、丹澤、南出、アキバ、宮尾、松丸、卯ちりさん、柿内正午さん。
 
 
  稲垣、丹澤、南出、稽古場一階で卯ちりさんと会う。
 
稲垣
ああー、どうも、カハタレのワークショップでしょうか?
 
卯ちり
そうです、3階でしょうか?
 
稲垣
恐らく!いやはやありがとうございますございます。
 
  和室に入る。
 
みんな
すごー、宴会できるやつやん。
 
 
  と、電車の遅延のため、蛙坂さんを待ちながら、今回参加者が勢揃いする。
  しれーっと自己紹介を始める。
 
 
稲垣
どうも稲垣です。カハタレのリーダーしています。
好きな食べ物は、にゅうめんです。
 
柿内
夏なのに、にゅうめんなんだ。
 
稲垣
子供の時、にゅうめん好きすぎて鼻から出た記憶があります。
では、柿内さん自己紹介どうぞ。
 
柿内
どうも柿内です、今日昼キラーコンドームって映画見てきたので、シャツ買って即着てきました。
 
みんな
おおおー。
 
卯さん
実話怪談作家として、「怪談散華」で蛙坂さんと共著で関わっています。私自身元々演劇してたってのもあって、実話怪談がどう演劇に結びつくのか興味ありです。
 
松丸
最近書く方にも興味ある。
一人芝居作りたいなあと思ってます。
 
  (この辺りで蛙坂さんが到着。)
 
丹澤
カハタレのメンバーです。
好きな食べ物はポテサラです。
 
蛙坂
ポテサラいいですねえ。
 
南出
企画展で怪談ものを特集したりして、怪談興味ありで、今日楽しみにしてましたー。
 
宮尾
ジンギスカン好きです。最近めっちゃうまいなって。
 
アキバ
カレー作るのハマってる。家で作ってます。
 
 
  そして、なんだかんだで参加メンバーの雑な自己紹介が終わり、ファシリテーター蛙坂さんの自己紹介に、
 
 
蛙坂
蛙坂須美と申します。怪談作家として活動しています。
稲垣さんとは後藤明生の読書会で知り合いまして、ニコライゴーゴリの「外套」が好きだって話とかで盛り上がりつつ、カハタレの次回公演は「外套」を元にしているというので、依頼受けて何ができるか、って考えてたんですが、自分は怪談作家として幽霊書きながらこんな感じで書いてていいのかなって思うこともあって、幽霊表現について皆さんと共有しながら、今後の幽霊表現について互いに考えていけたらなと思っています。
 
みんな
いえーーー。
 
 
 
●まず最初に実話怪談の簡単な説明
 
蛙坂
「実話怪談」は週刊実話の「実話」に怖い話って意味の「怪談」がくっついている言葉です、
「実話」って言葉と「怪談」って言葉、少し矛盾をきたしているような変な言葉になります。
 
みなさん、「怪談」ってどういうものをイメージしますか?
ちょっと適当にみんなで上げていけたらなと思います。
 
松丸
今、クーラーの風、感じてて、怪談ぽいなって、涼しい風。
 
宮尾
怖い話聞くと寒くなるってなんなんだろうね。
 
蛙坂
なるほど、涼しくなる。寒くなる。ってのがありますね。
 
宮尾
怪談ですごく初歩的なフォーマットとして浮かぶ話が、知り合いのタクシーの運転手が長い髪の女の人乗せて、全然喋らない、なんだろう、って思ってバックミラー見たらいなくて、えって思うと後ろのシートがびしょびしょになってたってやつ。
 
蛙坂
怪談のスタンダードみたいなことですよね。
 
アキバ
落語とかに近いのかなって、
 
宮尾
コードがありそう。
 
南出
最初に枕で、誰々さんから聞いた話なんですけど。みたいな言い方する。
 
蛙坂
伝聞、他のだれかからのって言いますよね。
 
稲垣
修学旅行とかでするイメージある。普段と違う特殊な状況?でするとか、UNOがなくてもできる。
 
宮尾
身ひとつでできるよね。
 
柿内
飲みの席でできる。仲良いわけでもないけどぶっちゃけその人に興味ない時のコミュニケーションツールとして使える。
 
稲垣
よくあるフォーマットとして、お前だー、とかもありますよね。
 
アキバ
お前だー、音が怖い。テンポがゆっくりなとこに急におっきくなる、みたいな。音しか怖くないんでないか。
 
卯ちり
その人の忘れてるこういうことあったってので出てくる。
記憶掘り起こすみたいなところがある。
 
蛙坂
お前だーっ、タイプは古くからある型ですね。
夏目漱石夢十夜の第三夜とか。
 
宮尾
どっか訪れて、この家はむかし、何々でって隣のおじさんがしゃべりがち。
赤いドレス着がち、
 
蛙坂
いわくを第三者が語る。みたいな。
 
蛙坂
ありがとうございます。色々出ましたね。
やっぱり幽霊が出てくる話と考えてる部分が大きいかなと思うのですが、実話怪談、幽霊だけでなく、たぬきとか、一旦木綿とかの妖怪、呪い、神様仏様、宇宙人も実話怪談に含むことが多いです。つまりざっくりと怖い話、不思議な話を含めています。
 
そこで気になるのは、
怖い話と怪談、これって同じ意味で捉えていいのか?
この二つの違いってなんだと思います?
 
南出
いわゆる人外が出てこない、人怖系の話は怪談に入んないのではないか。
 
丹澤
オチがハートフルで怖くなくてもいいのかなって。
 
アキバ
素人、プロ、って感じがしますね。
 
蛙坂
いいのが出ました。
話芸、文芸って言い方他のジャンルではしますが、芸事って意味合いが怪談は強いのかなあと僕も思います。
 
 
●実話怪談、そもそも何をするのか。
 

 
蛙坂
実話、本当にあった話、何が本当と言えるか。ってとこになるんですが、まず第三者が入ってくるってのが大きいです。
つまり、怖い体験をした人から話を聞くところから始めるのが実話怪談。
取材をしてから始める。その本当性の担保としての第三者からの取材。
中には自分の体験を書いてる人もいるのですが、そんなに多くない。二割くらい。
 
次に実話怪談がこれまでどういう発展をしてきたか、ってのを見ていこうと思います。
 
実話怪談って言葉がなかっただけで、そういうものは昔からあった。
中国だったら「志怪小説」って言われるもの。
日本だったらエッセイみたいなものの中で描かれてきた。
 
実話怪談って言葉が使われたのはおそらく2000年代入ってからで、
それまでも違う言い方されながらではあった。
 
そして2000年代後半から発展します。
その発展に貢献したのが二つのシリーズものがあって、
一つは「新耳袋」、九十年代からあるシリーズです。
いまだに新シリーズが作られているし、最近でもドラマとか映画にもなってる。
 
もう一つは
「超」怖い話」シリーズ。
 
この二つが実話怪談の基礎を作ったのかなあと僕は認識しています。
 
ただ、この二つの書き方に大きい差がある。
卯ちりさん的にはどこが違うと思いますか?
 
 
卯ちり
文体が違う。
新耳袋」は、体験者の目線で時系列的に語られる。
「超」怖い話」は違う時系列がカットインされたりして、必ずしも時系列順に描かれていない。
 
 
蛙坂さん
そうですね、時系列的か否かってかなり大きい違いがありますよね。
新耳袋」は脚色せずにごろっと描いてる話が多い、どっちかっていうと淡白。素材の味を出している。
「超」怖い話」は、簡単にいうと濃い、ケレン味がある。
 
新耳袋」の作家が書く時気をつけているらしいのは血まみれを出さない、ってことらしいです。
逆に「「超」怖い話」、平山夢明編集長になってから、血とかバンバン出てくる。
 
卯ちりさんが言った時系列の話は平山さんの話を後でするのでその時にちゃんと話します。
 
そもそも実話怪談、実はそんな幽霊って出てこない。
著者の傾向にもよるけど、全体的にざっと読み直してて、幽霊が出てくるのは全体で三割くらいなのではないか、って印象です。
 
 
●幽霊のイメージをみんなで共有する。
 
蛙坂
みなさんにもうひとつ考えてもらいたいのは、幽霊って聞いた時に、どういうものをイメージするでしょうか、
今の段階で、どういうイメージを持っているか、小さい紙とペンを配りますので、みなさんに書いてもらいたいです。
 
  みんな、書く。
 

 
蛙坂
結構大量に出ましたね。それじゃあ、これとこれ同じグループになるなってのみんなで話し合いながら形でグループ分けしていきましょうか。
 

 
・湿り気
・夜
・女性、髪、長い
・青白い、透明
・すみっこ
・話が通じない
・足ない
呪怨、リング
 
などなど。が出る、
 
蛙坂
整理してみて気づいたこととかありますか?
 
稲垣
呪怨、って僕、小学生ぐらいの時だったんですが、めっちゃ怖かったなって。
 
松丸
テレサ、マリオの、いたなあって。
 
稲垣
後ろ向いてる時に迫ってくるんですよね、それが幽霊ぽいなあって。
 
卯ちり
薄いテレサと実態のあるテレサと2種類いましたよね。
 
松丸
学校の怪談、懐かしい。
 
蛙坂
外見的に被っているのは、女性のイメージが圧倒的に多いですね、
女は出ているが男のイメージは出ていない。
 
卯ちり
髪の長い率高い。
 
みんな
リングだー。
 
丹澤
男の幽霊のイメージないですよね。
 
アキバ
男ってちょっと滑稽なのかな。
 
稲垣
足とか手、末端に注目する感ありますね。
 
卯ちり
部分にフォーカスしますよね。
 
宮尾
暗いって要素でかい。
 
卯ちり
湿り気面白い。びしょびしょとか、
 
蛙坂
カビ生えそうですね。
 
宮尾
日当たり良い家には出なさそう。幽霊、
 
蛙坂
はーい、今、みなさんにはこれだけの幽霊のイメージが蓄積されています、
ではこの後に、実話怪談の実例を示しつつ、最終的には僕たちが考える最強の幽霊をカスタマイズしよう、みたいな流れで行きたいと思います。少し休憩です。
 
  少し休憩。
  (アンビリーバボーの話とかする。)
  外は暗くなっていて、若干怖い。
 
 
●実話怪談の幽霊表現を実際にみんなで読む。
 
 
蛙坂
今度は実話怪談ってジャンルでどういうふうに幽霊が扱われているか、例をあげているレジュメ作ったので読みましょうか、みんなで。順番に声出して読んでいきましょうか。
 
 
死んだ祖母は生前、腰曲がっていて、着物をひきづっていたので、前に持って歩いていた。生きていた通りの歩き方、着物が全く同じ状態で、炭を入れてる家具に当たって、クルクル回った、つまり実態がある。
 
蛙坂
遠野物語のこの部分、よく言及されます。幽霊って透けてるものと思ってるが、結構ちゃんと存在してる。って例です。
遠野物語岩手県の遠野に住んでいた佐々木さんに聞いた話。昔話でなく、その時聞いた話を描いてる。僕らの感覚で言うと実話怪談。実名とか地名とか出てくる。
 
 
2、小野不由美「続き部屋」『鬼談百景』
 
蛙坂
厳密には小説だけど、怪談作家にも好きな人が多い。
みなさんが出した幽霊のイメージに影とか黒ってのがなかったですが、こういう風な幽霊表現もあります。大義そうでゆっくり。ですね、
逆に走ってる幽霊っていますか?
 
松丸
てけてけ、とか、
 
稲垣
ジェットババア、車飛ばしてたら、ずっとババアがミラーに映ってる。
 
宮尾
てけてけ、下半身なくてすごいスピードで這ってくる。
 
蛙坂
てけてけ、面白いのは足だけのパターンもあるんですよね。
 
 
3、小野不由美「シーツ幽霊」『鬼談百景』
 
松丸
足の爪の赤が生々しい。
 
南出
白と赤が印象。
 
蛙坂
シーツ被ってる、子供がやる怖いお化けの仕草、がそのままでてる。
マリオのテレサの外見もシーツとかに由来しているのでは。
 
 
 
4、川奈まり子「おにどの」『家怪』
 
稲垣
幽霊?ただのおじさんなような?
 
蛙坂
ってなりますよね。
この人が幽霊だってわかるものってありますか?
 
宮尾
目的がないってのが大きな要素としてあるのかもしれない。
 
蛙坂
いるはずのない人がいるってのはあるかもしれないですね。
 
アキバ
小さいおじさんって妖精みたいなのありますよね。
 
 
 
5、黒史郎なめこ汁」『実話蒐集録 漆黒怪談』
 
南出
ほっこりする話でもあるのかなと思った、
 
稲垣
どの問いかけに対しても那奈ちゃんってしか母が返してこないのが機械的で怖いなと、
 
蛙坂
母っていう自分の知ってる人だけど、こっちの問いかけに対して、那奈ちゃんしか言わない。僕にとってはかなり怖い。ほっこり感じる人もいるとも思う。
 
 
6、神沼三平太「妹」『実話怪談 寒気草』
 
蛙坂さん
家族が幽霊で出てくるって関係とかは5の「なめこ汁」と似ているが、どこが違うでしょうか。
 
アキバ
どっちも黒くなってる。
 
宮尾
お母さん冷静だなって、「せめて服着てくれ」って幽霊であること自体は普通に受け入れてる感が面白い。
 
蛙坂
怪談の中でもこう言うジャンルが得意ってあるんですが。神沼さんは「厭怪談」っての得意なんですよ。つまり読んだ人が厭だなあって思う怪談。
 
みんな
ひえーー。
 
 
7、我妻俊樹「無視できない」『奇談百物語 蠢記』
 
蛙坂
我妻さんはジャンルで言うと不思議な話を得意としている人。
前ならえの格好で手を上下している。それだけで、こっちにはなにもしてこない。
ただ、顔が子供の描いた絵みたい、結構怖いですよね、
 
アキバ
慣れたら可愛くなるのかなって。
 
蛙坂
そうなんですよ、この話、オチの部分、ここに住んでる人は慣れてる。
これもさっき出ましたが、機械的。動作を繰り返している。
 
 
8、小田イ輔「雑木林で立っていた」『実話怪談自選択集 魔穴』
 
蛙坂
みんなで出した幽霊の特徴に動きが遅いってのがありましたが、これに関してはただ立ってるだけ。人間と違うのはいつも同じ姿で、何年経っても同じ姿。
立ってるだけの幽霊って結構多いかなあと。
 
 
9、鈴木捧「蜃気楼」『実話怪談 蜃気楼』
 
蛙坂
外見だけでは普通の人と変わりない。
唯一違うのは後半に出てくる足元から蜃気楼のように消えていく。ってところ。
 
幽霊と幻、蜃気楼みたいなものがどう違うか、など、考えられるきっかけになるかなと。
 
 
10、稲川淳二「奥秩父の吊り橋」『稲川怪談 昭和・平成傑作選』
 
稲垣
ですよですよ、が多い!
 
松丸
しゃべり言葉ですよね、
 
蛙坂
出典読んでから読むと完全に稲川さんだってわかる。
読むだけで声が再生されるって本当すごいことだと思う。
幽霊表現も面白い、顔がない、横這い。
 
松丸
それなのに、こっち睨んでるのがわかるって圧が全体的にわかる感じがした。
 
卯ちり
横這いの情報が後出ししてるの憎い。
 
 
11、平山夢明「塩辛嫌い」『超怖い話H』
 
向田が部屋にいたら女子社員入ってきた。制服が他の人と違う。二十代半ば、化粧っけなし、青ざめていた。急に窓から飛び降りた。変な音、振り返ると鍋か大きな皿の壊れたやつに肉をめちゃくちゃにしたやつが盛ってあるみたいなもの。顔を寄せてきた、口の中に生臭く塩辛い物が充満した。
 
蛙坂
これ、何が怖いでしょうか。
 
南出
過剰。
 
宮尾
 
蛙坂
この人がさっきの「「超」怖い話」を変えた平山夢明さんです。
濃い、ケレン味の方の。過剰ですよね。
 
みんな
ああー、
 
卯ちり
五感使っていますね。
味覚、音、視覚。
 
松丸
シーンがワープしてる。
ジャンプホラー。
 
アキバ
唐突だなって。
 
蛙坂
書き方が劇的ですよね。
 
松丸
映像っぽい。
 
蛙坂
平山さんが発明したすごいことがいっぱいあるんですが、一つは映像的。
元々ゼット級ホラー映画のレビュアーをしていたんですよ。
人体破壊系の要素を実話怪談に持ち込んだんですよね。
 
丹澤
生々しい。
 
蛙坂
鍋か大きな皿に女の残骸、って書いてて、ここだけ見ると幽霊か死体かわからない。
「」で体験者自身が喋っている今現在の時間と、起こった時の想起している過去と二つある。
こう言う書き方を平山文体と言います。
取材している現在の中で、当の話者が言ってることを地の文に入れ込んでいる。
 
南出
改行が多い、
 
蛙坂
実話怪談本は小説とか他のジャンルより改行多いですね。
接続詞を使わず、改行でシーンを変えている。
これが映像的ってものにもつながっている。
 
12、朱雀門出「欠けた人」『第五脳釘怪談』
 
蛙坂
実話怪談作家の中で一番頭がおかしい人です。
山登ってて、頭部明らかにないひと、腕がない人、など五人。
 
卯ちり
最後、速さで裏切りましたね。
 
アキバ
男が出てくると滑稽な感じがする。
 
宮尾
幽霊のほうがびっくりして、ってのが滑稽に繋がるのかも。
幽霊がむしろ弱い立場として逃げていくイメージが従来と逆。
 
南出
出会ってる側の人もやばい。明らかに変な五人に、観光客かなあ?って話しかけてる。変。
 
蛙坂
怖く書くこともできるが、体験者側の変さを出すことで違う感覚を読者にいだかせるような書き方をしている。
 
 
 
13、黒木あるじ「解放」『無残百物語 ておくれ』
 
蛙坂
平山夢明さんの直径の弟子筋にあたる人です。
平山イズムを受け入れてるので、過剰。
出てくる幽霊が多すぎる。爪が弧を描いている。
 
松丸
量が大きすぎて、向き合いきれない。
 
うさん
 
 
 
14、鷲羽大介「子供たちの朝」『暗獄怪談 憑かれた話』
 
丹澤
妖怪っぽいなって。
 
稲垣
おかっぱとか坊主とか、少し古いイメージが妖怪っぽいのかな。
 
アキバ
キャラっぽい。
 
松丸
スッと消えてく感じも精霊系。
 
蛙坂
体験者から聞いたものに対してこれが幽霊かって判断は僕らは保留する。
書き方によって、幽霊的なものになったり、妖怪的なものになったりする、あと読み手によっても変わってきますね。
 
 
 
15、松村進吉「終の棲家」『未生仏百物語』
 
体験者の家の前に空き家がある。リビングが見える。
町内で死んだ人がその窓の向こうに見える。誰もが生前と同じ格好している。
最後に車で跳ねられた女の子。生前は元気だったが、ひどく猫背で、頭が今にも外れそうになっている、
 
稲垣
幽霊って、さっきから服着てたり裸だったり、死後の格好ってすごく気になるんだけど、生前のいつの時代の格好をしているのか、死ぬ直前のことなのか、若い時の姿なのか、気になっていて、この女の子の場合は死ぬ直前なんだなって。
 
蛙坂
幽霊が魂だとしたら着てるものってなんだ。って永遠のテーマですね。
あとは、生前の意識を保ってるかどうか、さっきから出てくる、機械的とか、話が通じないって人は生前の意識がない。
 
 
16、蛙坂須美「蝙蝠エリちゃん」「実話奇彩 怪談散華」
 
蛙坂
最後は私が書いたものです。
監視カメラにおそらく亡くなったエリちゃんてゴスロリ系のファッションの人が写っているんだけど逆さま。コピペしたみたいって体験者の方が実際話した言葉なんですが、立体感がないんですよね。
 
 
 
●写真を見ながら、幽霊について考える。
 

 
蛙坂
次に何枚か写真を見ながら幽霊について考えていきたいと思います。
 
写真1、黒沢清の「降霊」
映画監督の黒沢清が何人かの霊能者に幽霊が出てくる映画を何個か見せて、普段見ている幽霊の一番これが近いってなったものがありまして、
その写真なんですが、子役の子を撮るつもりが来れなくて、ポスターかなんかを窓の向こうに置いて撮った写真なんですよね。つまり奥行きがない、立体感がない。
 
 
写真2、こっちは同じ黒沢清の「回路」
写真で見ると普通に歩いている感じですが、このあと異常な動きをします。
 
 
写真3、「女優霊」
ピンぼけで笑ってる女。髪が長い、女。
日本のホラーにおける幽霊表現。貞子に繋がる。
 
 
次に日本のホラー表現はどうゆう表現を元にししているのか、見ていきます。
 
 
写真4、ジャッククレイトン「回転」
黒い服を着た女性が川辺に立ってる。
遠めにぼーっと立ってる人を眺める。
 
映像で表現される幽霊ってぼーっと立ってるパターンが多い。
それを変えたのが、呪怨
形としては女性だけど、アグレッシブで、実物感がある。
 
写真5、リングの呪いのビデオのワンカット。
こちらは男性、何かを指さしている。
映像で見た時、ただぼーっと立ってるだけ、だけど、これを映像で見ると怖いってのがある。
 
写真6、逆さまの幽霊。
 
幽霊に足がないってなったのは江戸時代後期。
それ以前は、人間でない異常性を立てるのに、腕がないとか、顔がないとか、そして結構あったのが逆立ちしてる幽霊、動きに異常性がある。
 
写真7、月岡芳年
産女、出産で亡くなった女性が化けて出る。妖怪として理解されてることが多い。
が、この貞子とかの幽霊に近いものがある。
 
南出
幽霊と妖怪の違いって実話怪談の中でキッパリ分かれてるんですか?
 
蛙坂
分けてないですねえ、
例えば子供を抱えた女性がいたんですよ、って本人が言うと、産女じゃんって思うけど、産女って言っちゃうと解釈が入ってしまう。それは避けたい。
 
ただ、京極夏彦が言ってるのは、産女ってのはキャラクター化している。
お産で死んだ女が産女になる。
Aさんが亡くなって、時に、個人の属性が残っているかどうかがでかい気がしますね。
 
 
蛙坂
みなさん他に、「これぞ幽霊」で持ってきた表現とかありますか?
 
 
稲垣
鴇田智也「エレメンツ」「いうれいは給水塔をみて育つ」って俳句なんですが、これ見た時結構衝撃で、なんとなく納得するんだけど、なんで納得するのか全然わかんなくて面白い。生えているみたいな句をつくりたいって鴇田さんがあとがきで書いていて、さっきの例の中でもただ立ってる幽霊とか、植物みたいにいるみたいなのと通じる感じがしました。
 
蛙坂
育つんですね、のびるイメージが給水塔と繋がってる感じしますね。
あと、給水塔って懐かしい感じがする。
 
卯ちり
ハマスホイ、の画集を持ってきました、
グレイがかったリアルな色彩で書いてる。
生活をしている人の床のシミとかは描いてるが、実際の家具は外している。
生活感がない。後ろ姿の女性も少し怖い。
この展覧会見た人たちは、何もない空間を構築してるのが、かっこいいって人と、怖いって人で二分されていた。
演劇にも関わりがある人で、イプセンのパンフレットの表紙を描いたりしている、
不在の美を描いてる。
幽霊って突き詰めるといないものがいる。
幽霊的空間ってこの人の絵を見ると感じる。
 
蛙坂
夜一人家で、自分の目の前にこの絵がずっとあると不安になりますね。
 
 
宮尾
通じる感じがするんですが、
ミヒャエルボレマンスの絵を見てもらいたくて、
写真家出身の作家。人すらもただのオブジェ、ものとして描いてる。
部屋の隅っこに立ってて、顔が出てなくて、目的意識が希薄ってのが不穏で寂しい感じがして幽霊を感じる。
 
稲垣
幽霊っぽくさせようとは描いていないのかな。
 
卯ちり
人間性を剥奪するみたいなアプローチが幽霊に近づく気がする。
 
蛙坂
人っぽい感じがしない。
普通の人間をちょっと抽象化したものってのが幽霊に近づくのかなと。
 
柿内
呪いのビデオを持ってきました。
 
  みんなでワーワー言いながら動画を見る。
  ナレーションが良い!
 
柿内
ありえなさが、足透けてる、後ろ向き、より、二つの方向から写してるのに、どっちからも後ろ向き、空間との整合性が取れていないってのに着目してるのが面白い。
 
松丸
お化けの原風景。水木しげる、持ってきました。
鬼太郎は常に成長と共にあったなあと。
水木しげるの絵の密度の違いが気になってる、
 
蛙坂
キャラクターは抽象的だけど、背景が異常に細かかったりするんですよね、水木しげる
ナマハゲ怖いですね、
 
松丸
怠けて火にあたってる者がなる。
 
蛙坂
別の地域では、なもみはぎ、って言われたりします。
囲炉裏に足当ててるとできるのが「なもみ」。それを取りに来る。
 
 
アキバ
ほん怖の導入音楽って怖かったねって。ティローリローリーってやつ、あと、世にも奇妙なとか。
 
蛙坂
鬼太郎、3期、「お化けがイクゾー」ってエンディング曲。最後にデフォルメされた鬼太郎と猫娘がはけていく、けど、最後に、わって、妖怪がアップされるの怖かった。その前にテレビ消してた。でもそこで消したら次回予告見れないっていう。
 
柿内
絢辻行人、昔クラスでバカ流行りした。口絵、磔になった死体の写真で、死後のぶくぶくになった顔の写真が載ってて、これマジの写真が載ってるって、クラスでバカ流行りした。
さっき思い出したんだけど、検索しても案外出てこない。ちょっと幽霊ぽさを感じる。
 
蛙坂
逆に、幽霊見たり体験した人ってこの中にいますか?
 
松丸
心霊写真になってしまったことがある。私、当時ショートカットだったんだけど、写真で撮ると、ロングになってて、
怖すぎて消しちゃった。
 
蛙坂
心霊写真で増えてるてパターンは珍しいですね。
なくなってるパターンは多い。手とか、最悪、首とか。
 
 
 
●最後にみんなで幽霊を描写する
 
 
蛙坂
さあ、幽霊らしいものがこれまでで色々共有できたので、最後にみんなで幽霊を描写してみましょうか。レジュメにある要素、みんなで共有した要素参考に、
 
1シチュエーション
2外見
3動作
 
を考えてみましょう。
 
蛙坂
意外性で勝負するか、これぞってもので勝負するか。シンキングタイムスタート。
 
 
宮尾
1真夏の夜中の商店街
2ウエットスーツに身を包んだ茶髪の長い髪の毛で顔の表情が見えない。
3プロレスでコーナーに登ってボディプレスするみたいな動きを繰り返している。
 
稲垣
1料理でコンロ3つ使ってあたふたしてる時
2耳がちぎれているが鼻から血が出てる、虚空を見つめてる。
3アゴヒゲを一本一本ビョーンと伸ばすってのを繰り返している。
 
柿内
1昼間に洗濯干している時
2全身ユニクロの概念みたいなのが隣にいて。
3めっちゃ頷いている。
 
南出
1正月、親戚の集まり、
2顎が長い、真っ黒い、顎が地面までついている。自分にしか見えていない。
3顎が長くて座れない、ザッザッって顎が擦れる音がする。
 
蛙坂
心霊スポットから帰った晩、家の玄関扉を開けたら暗がりに交通安全の人形が立ってる。
 
アキバ
夜中のトイレ、すりガラスのドア越しに髪の長い女が顔をくるくる回りながらうわってなって振り向いたら消えてる。
 
蛙坂
すりガラス怖い。
夜中のトイレは原始的
 
 
丹澤
1学校
2日常生活の中の中に混じっていて、普通に制服着てる。体育の時はジャージきてる。足が速い。
3会話成立してるが、一時的に機能が成立しなくなる。
 
蛙坂
急にスイッチが切れるの、機械みたいで面白い。
 
丹澤
みんな見えてるけど、人数数えたら数合わない。
例で出てきたジャージの幽霊面白いなって。
 
蛙坂
この時この服で、この時この服って幽霊で服が変わるのって聞いたことないですね。
 
松丸
信号の下、無風状態。大きく膨れた密度の低い、大きめの袋状の人がいるが、こっちを見ている。感じがする。ふわっとした幽霊。
 
蛙坂
リアルな感じがしますね、いそうな。見たやつですか?
 
松丸
いえ、これは想像です。
 
卯ちり
夜中遅くまで作業してて寝ようかとベッドに行く。
ベッドに膨らみがある。布団がパッと開けるとシーツが人の形に盛り上がっている。
シーツの中に160センチくらいの女の人かな、くらいの人が仰向きでいる。
顔の部分の目のところだけ、目がついている。
目あった瞬間にバッと部屋出る。翌日見るといなくなってる。
厭だから、シーツ洗おうとすると人型にカビがめっちゃ生えている
 
みんな
こえーーー。
 
蛙坂
割とやっちゃいがちなこと、幽霊出たら意識失って気づいたら朝だったとか、気づいたら裸足で外でブルブルしてるとかあるんですが、意識失わなかったってとこ評価したい。
 
 
蛙坂
今我々でしたワークショップ、ここで出たのは記号、幽霊についての話をしてるから幽霊っぽいと思うわけでは、幽霊って文脈をなくすと違ってくる。
 
例えば、
「家の窓から外見たら女の人が踊ってた」だけだと変な人を見た話になるんだけど、
「心霊スポットに行った帰り道」ってのをそこに付け加えることで、その現象が怪談っぽくなる。文脈も大事なんです。
 
この辺で終わりで時間がないですが、感想ありますか?
 
●タイムリミットが迫りつつな感想タイム。
 
柿内
黙読だとめっちゃ怖い、平山の鍋のくだり、朗読すると笑っちゃう。
来るまでは演劇と怪談、相性悪そうだなあと思っていたが、
割と参加者の皆さんの出してくる要素、具体に寄っていて、意外に物理的だなあ。って思うと演劇と怪談、意外にいけるかもと思った。
 
宮尾さん
最後の話面白かった。
文脈によって記号の役割が変わるって話頭になかった。
 
稲垣
ですよねえ、使えそうー、(じゅるり)
 
丹澤
あ、すみません、そろそろ、時間です。
 
稲垣
あ、じゃあ軽くご飯行ける方はそこで感想言い合いましょう。
 
蛙坂
ありがとうございましたー。
 
みんな
ありがとうございましたー。
 
 
 
そして、回転テーブルのある中華に行った。
黒酢豚美味しかった。
あと、店の人から謎のカニカマ味のえんどう豆を急にプレゼントされて戸惑ったりした。
甘かった。
 
 
楽しかったー。
蛙坂さん、参加してくれたみなさん、本当にありがとうございましたー。
 
 
完。